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その2

 翌朝、美緖は自分のベットで目を覚ました。


「美緖、分かったのです」

 美緖が目を開けた途端、美希は声を掛けてきた。


「ええっ?」

 美緖はびっくりして飛び起きた。


 どうやら、美希は美緖が起きるのをベットの隣で待っていたらしい。


「うん、もう、うるさいのだ」

「どうしたのですぅ?美緖ちゃん」

 美緖の大声で美紅と美佳も目をこすりながら起き出してきた。


「TK34の行方が気のなるのです」

 美希のマイペースはまだ続いていた。


「はい?」

 美緖は美希が何を言っているのか分からなかった。


「だから、TK34の行方が気になるのです」

 美希はまどろっこしそうに同じ言葉を繰り返した。


 同じ言葉を言われた美緖はポカーンとなる他無かった。


「聞いているのですか?美緖」

 しばらく待っても何の反応がない美緖に詰め寄るように美希は顔を近付けてきた。


 口調はいつもの冷静なものだった。


「ええっと、それは分かったけど、どういう事?」

 美緖は話が見えなかった。


「言った言葉の通りなのです。

 TK34の行方が気になるのです」

 美希は尚も繰り返した。


 美緖は美希がようやく結論を先に行っている事に気が付いた。


「どうして、行方が気になるの?」

 美緖は順序立てて説明するように促した。


「どうしても、こうしてもないのです。

 美緖は気にならないのですか?」

 今度は美希の方が美緖の言っている意味が分からなかった。


 うーん、どうしても話が進まないなぁと美緖は唸ってしまった。


「えっと、TK21の話では無いんだよね?」

 美緖は美希の真意を掴みかねていた。


「何を言っているのです?

 TK34とTK21は別物だという事が分からないのですか?」

 美希はいつもの冷静な口調だが、明らかに呆れていた。


「それぐらい、分かっているよ。

 だから、この前遭遇したTK21じゃなくて、何で……」

 美緖は語気を強めながら早口でそう言い始めたが、途中で口を噤んだ。


 あれ?と思ったからだった。


「もしかして、TK21とTK34は別行動していると考えている?」

 美緖はあれと思った瞬間から急に冷静になった。


「そんなの自明の事なのです」

 美希はきっぱりと言った。


 それを聞いて、美緖はそんな話してなかったじゃないのと思った。


「と言う事は、TK21はいなくなったけど、TK34はまだどこかに潜んでいるという事?」

 美緖はそう聞いた。


「だから、さっきからそう言っているのです」

 美希は再びそうきっぱりと断言した。


 って、おい、そんな事言ってないよと言いたかったが、美緖はぐっと我慢した。


 話がややこしくなるからだ。


 美緖はこうした我慢できるので美希とちゃんとコミュニケーションが取れている訳だが、やはりこの点から苦労性とか言われてしまうのだろう。


 これは美佳や美紅と話す時も同様だ。


「で、どうしてそう思うの?」

 美緖は努めて冷静に聞いた。


「そんなの自明の事なのです」

 美希は再び同じフレーズを繰り返した。


「だから、どうしてそうなのかを説明なさい」

 美緖は怒りたい気持ちを抑えていた。


 美希は美緖から離れた。


 何だか驚いている様子だった。


 そして、表情には出ていなかったが、何やら考え込んでいた。


 美緖はそんな美希を見て、何を思い悩む必要があるのさと思いながらイライラが募りつつあった。


 しばらく考え込んだ後、美希は表情にこそ出さないがあ、そうかと感じた。


「TK21とTK34が一緒に作戦行動したことがないのです。

 だから、今回も別行動しているのです」

 美希からようやく説明が聞けた美緖はハッと思った。


 美緖達が初めてTK34に遭遇した時、TK21はどこかにいなくなってしまった。


 また、3区攻防戦の時もTK34はいても、TK21はいなかった。


 先月、TK21と遭遇した時は、確証が持てない。

 

 だが、美希が言っているとおり別行動をしているとしたら……。


 美緖は今までの事を色々と思い出していた。


 そして、嫌な感じがした。


「分かった。

 中隊長殿と相談して、旅団司令部に上申書を提出しましょう」

 美緖はそう決断した。

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