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その1

 TK21との遭遇から1ヶ月以上、過ぎてしまった。


 その間、美緖達は無為な時間を過ごしていた。


 美緖達だけでは無く、南東京旅団全体がそうだった。


 あの遭遇時からTK21の姿はおろか、妖人の姿すら南東京旅団の担当地区では見ていなかった。


 無為な時間を過ごしていたとは言え、何の被害がない事は良い事だった。


 ただし、南東京旅団の担当地区だけだったが。


 そんな状況の中、美緖達はこの1ヶ月で予定通り、休暇も取れるようになっていた。

 

 その日の休暇は、秋も深まった今日は久しぶりに8姉妹の休暇日が重なった日だった。


 8姉妹は実戦部隊に配属された後に初めて待ち合わせをした喫茶店で、半年ぶりぐらいに待ち合わせをした。


 そして、その後、ショッピングをする為に街に出た。


 美緖達4人も大分街歩きには慣れてきたが、やはりジロジロ見られるのには慣れなかった。


 大概は遠巻きにされているのだが、たまに話し掛けられると心臓のドキドキが止まらなかった。


 ただ今日は美亜達がいたので、話し掛けられても美亜達が上手くやってくれていた。


 この辺の手際を見ていると、美緖は美亜に益々コンプレックスを感じるのだった。


「ん?どうしたの?美緖?」

 自分を見てる美緖に気が付いた美亜が話し掛けてきた。


「別に何でも無い」

 美緖はバツの悪そうにそう答えた。


「そう」

 ただ美亜の方は美緖の様子を全く気にする素振りを見せずにいた。


 そして、美緖の手を取ると、

「美緖に似合いそうな服があるのよ」

と店の方へ引っ張っていった。


 ただ美緖も美亜も外見も背格好もほぼというより全く一緒なので、変な言い方である。


 まあ、他の6姉妹も同じなのだが。


 問答無用で店に引っ張り込まれた美緖は美亜、そして、美佳に試着室に連れ込まれると着せ替え人形のように扱われた。


 そして、美亜と美佳は明らかにそれを楽しんでいた。


 抵抗する間もなく美緖は2人に下着姿にされると、次々に服を着せられていった。


「こういったシックな物も似合うね」

「でもぉ、かわいい系でも似合いますねぇ」

「次はセクシー系、行っちゃう?」

「いいですねぇ」


 同じ姿形なので自分で着ればいいじゃ無いと美緖は思ったが、2人はどうやら美緖の反応を楽しんでいるようだった。


 美緖は最初の内は着せられた服に対して、否定的なリアクションを取っていたが、もみくちゃにされ続けている内に無抵抗になっていった。


 ただ、無抵抗になっていく美緖に対しても2人は容赦なく、着せ替えを行っていた。


 そんな中、試着室の扉が急に開いた。


 びっくりして美緖は扉の方を見た。


 すると、美希が立っていた。


 美緖は美希が助けに来てくれたと思い、感激した。

 

 だが、ブツブツ言っている美希を見て、直ぐさまその考えを正した。


 開けっぱなしの扉でも、美亜と美佳は尚も美緖を着替えさせようとしたので、美緖は頑強に抵抗した。


「ちょっと、待ちなさい!」

 美緖は焦っていたが、

「あれぇ?美緖ちゃん、どうしたのですかぁ?

 怖くないですよぉ」

と美佳は不思議そうな顔をして服を脱がそうとしていた。


「そうそう、大丈夫よ。

 美緖をもっと綺麗にしてあげるから」

 美亜も美佳と同じように抵抗する美緖に対して不思議そうな顔をしていた。


 美緖はそんな2人に対して、尚も抵抗した。


「やっぱり、次の手を考えなくてはならないのです」

 美希は美希で3人の事情などお構いなしに自分の言いたい事を言おうとしていた。


 だが、美緖は美希の話を聞く余裕など無かった。


「美緖ちゃん、次ぃ、次ぃ、ですよぉ」

「そうそう、次ね、次」

「このままではいけないと思うのです」


 3人は美緖の事情は一切お構いなしだったので、美緖はついに切れた。


 まずは、美亜と美佳の頭をポカリとやり、動きを止めた。


「美希、ちょっと待ってなさい」

 美緖は美希にそう言うと、頭を抑えて蹲っている美亜と美佳と共に試着室から追い出した。


 それから、美緖は着せられていた服から着替えると、試着室を出た。


「美緖ちゃん……」

「美緖……」

 美佳と美亜がすがるような眼差しで美緖を見たが、美緖は仁王立ちのまま睨み付けた。


 もうこれ以上は好き勝手させないという意思表示だった。


 美佳と美亜は残念そうにスゴスゴと小さくなっていた。


「やはり、きちんと考えないといけないと思うのです」

 美希は美希で尚も自分の主張を続けようとしていた。


「休暇中なのに、仕事の話?」

 少し離れた所にいた美羽が呆れたような感じで言ってきた。


「この娘、そういう切り替えが出来ないから」

 美恵はちょっと皮肉交じりにそう言った。


「確かにそうなんだけど……」

 美緖はある意味美恵に同意したが、聞かない訳にも行かなかったので、

「で、具体的な提案はあるの?」

と美希に視線を戻して聞いた。


「ないのです。

 だから、一緒に考えるのです」

 美希は無責任にそう言い放ったが、眼差しは真剣そのものだった。


「美希、あんたねぇ……」

 美緖は重大な事を言われると思って待ち構えていた事と、美亜と美佳の件もあったので爆発寸前だった。


 そこに、美紅がどや顔で、

「どうなのだ?

 似合うと思うのだ!」

と美緖と美希の間に割り込んできた。


 美紅は全身モコモコしており、どうしてそんなに自信満々なのか、分からなかった。


 沈黙の後、周りが一斉に笑い出したので、美緖も釣られて笑い出し、怒りがどこかにすっ飛んでしまった。


「ごめんなさい、止められなかったわ」

 美衣が美紅の後ろで済まなそうにもじもじしていた。

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