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その4

「どうやら、このまま戦闘続行みたいね」

 美緖は肩で息をしながらそう言った。

 キツそうにしながらも、安心したと言った表情をしていた。


「援護に戻ってこいと言われても無理なのです。

 ただ、もうちょっと早く敵の意図を察するべきだったのです」

 美希も肩で息をしながらそう言った。


 美緖が中隊本部に警告したのは美希のアドバイスによるものだった。

 気付くより早く、敵が現れてしまったので無駄になってしまったのだが。


 ただ、美緖達の方の戦況はTK21に対してやはり苦戦を強いられていた。

 今回は他の小隊からの援護があったので、これまで何とか戦えていた。


 今も三方から間断のない援護射撃のお陰で一息付けていた。

 援護がなくなるとかなり厳しい状況になるところだった。


「隊長さん達ぃ、大丈夫かしらぁ?」

 美佳は疲れている筈なのにいつものおっとりしたほあほあ口調だった。


「114Aが援護に向かっているみたいだから大丈夫よ、きっと」

 美緖は美佳の問いにそう答えた。


「美亜ちゃん達の部隊ですかぁ。

 それなら大丈夫ですねぇ」

 美佳はニッコリしてそう言った。


「ええ、私もそう思うわ」

 美緖はちょっと不機嫌だった。


 美亜達と美緖達とは、姉妹なのは先程述べたとおりだった。

 だが、片や歴代最高の成績、片や歴代最低の成績で卒業していた。

 したがって、美緖には美亜達に対して大きなコンプレックスを感じていた。


 そんな中、マイペースの美紅はTK21に隙ができると透かさず切り込んでいった。


「やぁ!なのだ!」

 美紅は叫び声と共に妖人の心臓目掛けて剣を突いた。


 しかし、妖人はそれをひらりと簡単にかわした。

 隙だと感じたのは、隙ではなかった。


 美紅は勢い余って妖人の横を通り過ぎてしまった。

 それを狙って妖人が攻撃を仕掛けようとしたが、他の3人はそれを止めるために一斉に妖人に突撃していった。


 激しく響き渡る金属音が戦闘の激しさを印象付けた。


 ただ、美緖達の全力攻撃はいずれも妖人に受け止められていた。


 打開できないと思いながらも美緖達は攻撃を続行する他なかった。

 気を抜けば、たちまち殲滅の危機に陥るからだ。

 それは先の戦闘で思い知らされていた。


 だが、隙のない筈の状況から力量差により、一気に美緖達4人は跳ね返されてしまった。


 再び劣勢に追い込まれる美緖達だったが、何とか必死に耐えていた。


 しかし、劣勢を何とか耐え抜いていたが、流石に限界も近くなってきた。

 このままではやられるのも時間の問題だと4人が覚悟した瞬間、TK21が美緖達から離れた。


「ヒトリ、ヤラレタナ」

 TK21は片言でそう呟いた。


 再び聞いたTK21の気味悪い声に美緖達は一瞬固まった。


 だが、攻撃してこないのですぐに気を取り直して一斉に襲い掛かった。


「ナンドモ、ツウジナイナ……」

 TK21はそう呟くと、美緖達を薙ぎ倒すように包囲網を突破した。


 美緖達4人は跳ね飛ばされ、そのまま地面に叩き付けられた。

 そして、TK21が走り去っていくのを止める事さえできずにいた。


 また、負けてしまった……。

 美緖達4人は敗北感と痛みですぐには立ち上がる事ができなかった。


「大丈夫!?」

 薙ぎ倒された美緖達を見て、里奈達B小隊が慌てて駆けつけてきた。


 B小隊は美緖達の傍に車で来ると、一斉に車から降りて美緖達の救助に当たった。


 C,D小隊も駆け付け、美緖達を庇うように前後に位置取った。


 しかし、TK21の姿はもう既にどこにも無かった。


 そんな状況下、

「117Hより各隊へ。

 114Aの活躍により、妖人1体を殺害、2体の撃退に成功」

と千香からの入電が入った。


 その報を聞いてTK21に対応していた隊員達に安堵の声が漏れた。

 取りあえずとは言え、危機が去ったからだった。


「117Bより117H。

 TK21の逃亡を確認。

 現在、警戒態勢のまま、待機中」

 里奈は和香にそう報告した。


「117Hより各隊へ。

 各隊は現状のまま、警戒態勢を続行。

 117Hは114中隊と共にそちらに合流する」

 千香からそう命令が伝えられた。

 どうやら戦闘は終わったようだった。


 美緖達は疲労困憊の中、再び敗北感にまみれていた。

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