その8
ライトを頼りに美緖達は駅へと向かった。
妖人の気配は全くなかったのだが、慎重に進んだ為、思ったより時間が掛かった。
駅のプラットホームが見えてきたので、美緖達に緊張が走ったが、プラットホームのすぐ下まで来たが、妖人の襲撃は無かった。
美緖達はプラットホームによじ登った。
プラットホームにはゴミが散乱していた。
そのゴミは何のゴミかというと、表現しがたい物だった。
妖人特有のゴミと言った感じだった。
ここはやはり妖人の拠点だった。
ここも前に発見した拠点同様に嫌な臭いが漂っていた。
ただ、前の拠点よりはかなりましだった。
また、妖人も人の気配も全くなかった。
「117Aより連隊Hへ。
駅に到着。
やはり、駅は妖人の拠点だった模様。
なお、妖人の姿は全く見えず」
美緖は辺りを注意深く見ながらそう報告した。
「連隊H、了解。
さらわれた人達はそこにはいないのか?」
「現在の所、発見できず。
引き続き、駅構内の探索へ向かう」
「連隊H、了解。
気を付けて」
連隊本部との通信が終わると、美緖達は再び駅の探索に取り掛かった。
プラットホームを隅々まで調べてから止まったエスカレーターを上り、改札口を抜けた。
美緖達は先の拠点で受けた精神的なショックを思い出しながら重い足取りで慎重に進んだ。
この時も4人ともやはり無口だった。
駅構内を探索し続け、地上に出る4箇所の出口がいずれも完全に塞がれるのを確認しつつ妖人や生存者を探索した。
だが、妖人や生存者は全く見つからなかった。
「117Aより連隊Hへ。
駅構内の探索、終了。
妖人並びに生存者は発見できず。
妖人はこの拠点を放棄した模様」
美緖は努めて冷静にそう報告した。
「連隊H、了解。
101A、104Aは地下鉄線路内へ進入せよ。
進入後、101Aは進入口の確保、104Aは117Aの援護に向かえ。
115Aは101Aが到着した後に逆の駅を探索せよ。
117Aは104Aが到着し次第、その先の駅を探索せよ。
108Aは予備兵力としてそのまま地上に待機せよ」
連隊本部から命令が次々出された。
それを聞いた美緖は力が抜けたようにその場に座り込んでしまった。
他の3人も美緖と同様に次々とその場に座り込んだ。
ただ、それは決して安堵感から来るものではなく、緊張が少し緩んだ事による物だった。
その後、美緖達がいる駅の逆の駅と、その先の駅が探索されたが、いずれも妖人の痕跡は発見されなかった。
危機感を持ったTK21が速やかに撤退した物だと結論が出された。




