その5
「ん?ちょっと待って」
美緖は地下に進入したマンホールが近くなった所で、立ち止まって後ろを振り返った。
美緖に言われて他の3人も立ち止まって振り返った。
4人が後ろを振り返ると、追ってきているはずのTK21の姿がどこにも無かった。
その状況は4人にはしばらく飲み込めず、沈黙してしまった。
「どういう事なのだ?」
沈黙を破ったのは美紅だった。
「どうもこうもないのです。
あれは追ってきていないのです」
「ええ、追ってきてはぁ、いないですねぇ」
美希と美佳は現状を説明しながらその状況が理解しがたいと言った感じだった。
そんな3人の会話を聞きながら、美緖は体の向きをゆっくりと変えながら逃げてきた方向に対峙した。
そして、その先の気配を感じ取ろうと、耳を澄ませたが何もいる気配は感じられなかった。
他の3人は美緖と逃げてきた方向を交互に見ながら、心配と理解できないといった複雑な感じでいた。
「117Aより117Hへ。
TK21が追って来ていない」
美緖はそう報告しながら再び逃げてきた方向の先を伺うようにして再確認した。
やはり、TK21の気配の欠片もなかった。
「これより、TK21と遭遇した地点に戻り、状況を確認する」
美緖は続けてそう通信した。
「117H、了解。
くれぐれも注意するように」
美緖の通信に返信したのは和香だった。
「117A、了解」
美緖はそう言って、通信を終わらせると、他の3人の方に振り向いた。
3人はやれやれと言った感じで、美緖の方に歩み寄ると、4人でTK21と遭遇した地点へと歩き出した。




