その2
3区での大規模戦闘に比べると、現在の少数の妖人出現は被害が少ないように思えた。
だが、一般市民の累計被害を鑑みると、その差はどんどん縮まっていた。
むしろ妖人の方の被害が少ない分、人類にとっては厄介だった。
これまでの人類だったら、妖人の出現に対してただ対処療法的に対応するのが精一杯で、美緖達が遂行している拠点捜索には打って出ることは出来なかった。
その点では、状況が好転してきていた。
その美緖達は7区担当の大隊本部の近くのマンホールから地下に進入し、南下していた。
そして、すぐにその下に旧地下鉄が走っていた場所の真上に到達した。
前回の拠点も旧地下鉄の駅を利用していたので、美緖達は付近を念入りに調べることとした。
「何もないのだ」
30分後、美紅はもう飽きたとばかりに探索作業を投げ出した。
狭い範囲だったのですぐに一通りの確認作業は終わったのだが、それにしてもその態度は無いだろうと美緖は思った。
ただ、美佳と美希、そして、自分も何も見付けられなかったので、美紅に対して何も言わなかった。
最近、探索ばかりでしかも何も見付けていない分、作業自体がおざなりになっているかも知れないので、再度確認することとした。
この辺の指示を出せる美緖はやはり苦労性なのだろう。
そして、更に10分経過した。
「美緖ちゃん、何もないのだ。
次はどうするのだ?」
美紅は美緖に詰め寄るように言った。
美佳と美希も美緖の方を見ていて、次の指示待ちのようだった。
美緖はそんな3人の様子を見て、理不尽さを感じた。
さっきは勝手な行動を取って、今度は自分に指示を求めてきたからだ。
ただ、リーダーとしては指示を出さなくてはならないとも思った。
「また、南下、しましょう」
美緖はモヤモヤする気持ちを抑えながら冷静さを保とうとしていた。
「分かったのだ。
さっさと行くのだ」
美紅はそう言うと、南へ向かって歩き出した。
美佳と美希も美紅の後に続いた。
何気ない3人の行動だったが、何故か美緖は気に障り、益々ストレスを溜め込んでいた。




