その1
探索場所が変更されたのは、山吹達115中隊が復帰してから1週間後の事だった。
何度も3区を探索させられ、何も出てこない事に美緖達は些かどころで無いくらいうんざりしていた。
それが昨夜急に呼び出されて、探索場所を変更する旨を告げられた。
その時、意見を求められたのだが、美希にもこれと言った案がある訳では無かった。
だが、このまま参謀連中の言いなりになる訳には行かないと考え、当てずっぽうに7区の探索を提案した。
横で聞いていた美緖は美希が発言した事に驚いていた。
ただ、当てずっぽうで言っている事を察し、内心では採用されないだろうと考えていた。
だが、美緖の予想に反して、小森大佐は自分達にも案が無かったので、結構すんなりと美希の案を受け入れてしまった。
そう言った背景があり、美緖達は今7区の地下探索を始めていた。
「美紅、ちょっと、どこに行くの?」
美緖は地下に降りてすぐに歩き出した美紅を呼び止めた。
「こっちじゃ無いの?」
美紅は不思議そうな表情で振り返って立ち止まった。
「こっちって、あんたねぇ……」
美緖は美紅を叱ろうとしたが、自分もどっちに行くかが分かっていなかったので、叱るのを止めた、
そして、振り返って、
「えっと、美希、どっち?」
とバツの悪そうな表情で美希に尋ねた。
「どっちもこっちもないのです」
美希はあっさりといつもの冷静な口調で無責任にそう言った。
その言葉を聞いて美緖は頭を抱えた。
やっぱり、ここの探索は当てずっぽうだったと。
「美希、この先の事は……?」
美緖は無駄かと思いながら美希に尋ねた。
「何にも考えていないのです」
美希は再び無責任にあっさりと言い切った。
美緖はその言葉を聞いて、大きな溜息をついた。
さて、どうしたものか……。
「まぁ、隅から探索しなくてはならないのでぇ、美紅ちゃんが言った方向で良いのではぁ?」
苦悩に固まっている美緖に対して美佳が助け船を出した。
「そうするのです」
美希がまたもや無責任に美佳の意見に賛同した。
「何だ、やっぱりこっちでいいのだ。
全く、美緖ちゃんはいつも心配性なのだ」
美紅は迷惑そうにそう言うと、踵を返して再び歩き出した。
それに、美佳と美希が続いた。
そんな3人の態度に憤り、美緖は地団駄を踏みたい衝動に駆られた。
だが、そんな事をしても意味が無いので、黙って3人の後を追った。
このような態度が心配性だの苦労性だのと言われる所以なのだろう。