その3
検診が終わり、夕食を取りに食堂に入ると、美緖達は再び山吹達と出会った。
「ヤッホー、みんな、こっち空いているよ」
山吹は手を振りながら大声で美緖達を誘った。
美緖はやれやれと思いながら食事が載ったトレーを両手で運びながら山吹達の隣のテーブルへと歩いて行った。
それに同じくやれやれと思いながら美佳と美希が続いたが、例の如く、美紅だけは嬉しそうだった。
まあ、美緖、美佳、美希の3人は別に嫌という訳では無いのだが。
「何か、活躍しているみたいじゃ無いの!」
美緖達が席に着くと、山吹がニコニコしながらそう言った。
「え?ええっと……」
美緖は何を言われているのか分からなかったので答えに窮した。
「皆さん、ネットで話題になっているようですね」
蜜柑が山吹の言葉を補足した。
美緖はああ、その事かと思うと、溜息をつきたい思いに駆られた。
「そうなのだ!
褒められているのだ!」
美紅は空気を読まずに嬉しそうにそう答えた。
美緖はその言葉を聞いて、ここで大きな溜息をついた。
「そうそう、もの凄い反響よね」
柚葉はそう同調した。
「そう、凄いのだ!」
美紅は得意満面でそう言って、食事を始めた。
その反面、美緖、美佳、美希はどんよりとした気分になっていた。
「でもぉ、最近はぁ、結構叩かれていますよぉ」
美佳はいつものホアホア口調でそう言った。
だが、言っている事はホアホアしていなかった。
「そうなのです……」
美希も美佳に同調したが、こちらもいつもの冷静な口調だった。
美緖は二人に同調したが敢えて口にする事はしなかった。
ネットでは賛否両論で、妖人出現の頻発性が上がってからはどちらかというと非の方が勝っていた。
「とは言え、それはあなた方のせいでは無いでしょうに。
どちらかというと、作戦を立案する方に問題があるのでは?」
小豆はサラッと指摘した。
それに対して、美希は何度も頷いていた。
「でも、美緖達も色々大変ねぇ……」
山吹は性格に似合わないが、しみじみとそう言った。
それを聞いた美緖、美佳、美希はちょっと意外な表情をした。
美紅はリスみたいにほっぺたを膨らませながら口をモグモグさせていただけだった。
美緖、美佳、美希の3人とは対照的に美紅は楽しく食事を続けていた。
「まあ、でも、人の視線とかは気にしない事ね」
山吹はちょっと格好良くそう言い切った。
「あんたは気にしなさい!」
ただ、間髪入れずに、他の3姉妹が山吹に同時にツッコミを入れていた。
美緖、美佳、美希はそれを聞いていつものヤツだと思って苦笑いする他無かった。
美紅は相変わらず口をモグモグさせていただけだったが。
「え?どうして、そうなるの?
格好いいこと言った筈なのに!」
山吹は3人のいつもの反応に驚いていた。
「もうそう言っている時点で台無しです」
「そうそう、山吹の普段の行動を見ていれば、そんな事は言われたくない」
「まあ、全てがダメダメですものね」
蜜柑、柚葉、小豆は口々に山吹に苦言を呈していた。
「私の扱い、酷くない?」
山吹は厳重に抗議したが、他の3姉妹は同時に首を横に振っていた。
そんな状況下、美緖、美佳、美希はいつもの事だと思い、食事を始めた。
美紅の方はほどんど食べ終わっていた。




