その2
参謀連中に呼び出された5日後、美緖達は妖人拠点探索の専従部隊として初の任務が終わり、3区の地下から引き上げてきた。
例の如く、何の成果も無いまま引き上げてきた。
その為、やぱり例の如く、美希は何やらブツクサ言いながらとても不満そうだった。
その不満そうな美希を取りあえずそのままにしておきながら、美緖達4人は診察室の前の待合室に入った。
すると、同時に診察室から出てくる4人に出会った。
「ヤッホー、みんな、久しぶり」
4人の中の1人がお気楽そうな笑顔を浮かべて、美緖達に手を振った。
「お姉様方……」
美緖は4人を見てびっくりした。
4人は今日から復帰した115A小隊のメンバーだった。
手を振った人物がリーダーの山吹だった。
その後ろに、蜜柑、柚葉、小豆がいた。
「聞いてよ、美緖、復帰したその日から早速戦場に駆り出されたのよ」
山吹は少し甘えた声で美緖に言ってきた。
「はぁ……」
美緖は困った表情をして何と答えていいか分からなかった。
美緖達も着任した途端に訳も分からずに戦場に放り込まれた口だった。
だから、それが当たり前に感じていた。
「山吹、あなた、妖人とは一戦もしていないでは無いですか!」
後ろにいた蜜柑が鋭いツッコミを入れてきた。
「それは妖人がすぐに逃げちゃったから、仕方が無いじゃ無いの」
山吹は後ろを振り返ってそう言い訳した。
「いや、私達3人は妖人とちゃんと一戦交えたよ」
柚葉は真顔で追い打ちを掛けた。
この言葉に山吹はうっと絶句した。
「そうそう、一番先に飛び出してコケていたわよね。
どうしていつもこうなんだか……」
小豆は戦いの情景を思い浮かべながら呆れていた。
山吹は3人からの集中攻撃にたじろいでいた。
しかし、すぐに反撃に転じようとして、
「それで思い出したけど、どうして、助けて起こしてくれないの?
みんな、薄情!」
と抗議するように言った。
「そんなの当たり前です」
蜜柑がピシャッと言い切った後、
「そうそう」
と柚葉は腕組みをしながらしみじみ頷いていた。
そして、その後に続いて、
「どうせ、またコケるのだからほっといた方がましでしょ」
と小豆は更に呆れて果てていた。
そんな4人のやり取りを美佳と美希は一歩離れて見ていて、美紅はニコニコと見ていた。
「この扱いは酷いと思わない?
仮にもこの隊のリーダーなのよ、私。
ねぇ、美緖」
山吹は美緖に泣きついてきた。
「はぁ……」
美緖はなんと言って返していいのか分からなかった。
まあ、結局は心配性で面倒見のいい美緖がここでも頼られる事になってしまった。
「美緖、甘やかしてはいけません」
「そうそう」
「どうせ仮にもではなくて、仮のリーダーなんだから」
蜜柑、柚葉、小豆は口々にそう言った。
相変わらずだなと美緖は思いながら山吹が少し気の毒に思えてきた。
「そんな事無いもんねぇ。
美緖はとっても優しいもんねぇ」
山吹は美緖に甘えるようにすがってきた。
「はぁ……」
美緖は益々何て言っていいか分からなくなっていた。
「美緖、後の面倒は私達が見ますので」
蜜柑はそう言うと、山吹の左脇の下から手を回して、がっちりと掴んだ。
「そうそう」
柚葉はその逆の右から手を回して、山吹をがっちりと掴んだ。
「それじゃあ、積もる話はあるけど、またね」
小豆が美緖達にそう言うと、蜜柑と柚葉が山吹を引きずるようにすると、4人はその場から去っていった。
美緖は自分はリーダーに向いていないと感じていたが、山吹を見ていつも勇気づけられていた。
「何か、相変わらず楽しそうなのだ」
美紅は4人を見送りながら羨ましそうに言った。
それを聞いた3人は更にどっと疲れが出たのであった。