その5
初音隊が復帰したので、美緖達はようやく休暇を取ることが出来た。
そして、その休暇の翌日、再び3区地下での探索任務に就いた。
美希は大いに不満そうだったが、その任に就いていた。
任務中は特に感情を爆発させる訳ではなかった。
だが、完全に心ここにあらずと言った感じで、ブツクサと何か言い続けていた。
そのブツクサ加減は凄まじいものがあり、美紅でさえ不審がっていた。
お経のように響き渡っていた美希のブツクサの中、丸一日探索に費やしたが、この日も何ら成果がなく、引き上げる事となった。
引き上げる最中の車内、検診中、食事中とも美希のブツクサは続いていた。
それを見せられ続けた美緖は流石に腹を括るしかなかった。
美希のブツクサを聞いている方が精神的に堪えたからだ。
「上申書を再び作成するとしますか……」
自室に戻って、美緖は諦めたように美希にそう言った。
「今、作り直しても意味ないのです」
美希は美緖にそう返した。
それを聞いた他の3人はびっくりしてしまった。
「前の上申書には具体的にどこを探せばいいか示せなかったのです。
それは今も状況は変わらないのです。
データが足りないのか、予測モデルが根本的におかしいのか、分からないのですが、拠点の予想地点が全く絞り込めないのです」
美希は冷静にそう言った。
文句は言っていても客観的な事実を積み上げていく所は流石だなと美緖は感心した。
「でもぉ、3区じゃないことは確かなんですよねぇ」
美佳は素直にそう指摘してきた。
「データでは示せていないのが問題なのです。
客観的に説明が出来なければ、説得力を持たないのです」
美希は珍しく溜息混じりにそう言った。
そんなやり取りを美紅は発言者の方をキョロキョロと視線を移しながら黙って聞いていた。
言っていることがよく分からないと言うことから黙っていたという側面があった。
ただ、美希には打開策がなかったので、沈黙が訪れてしまった。
「聞いていて全然分からないのだ。
仕方がないから、無駄なことをし続けると言うことなのか?」
沈黙に耐え切れずに美紅はそう聞いた。
美希は美紅の「無駄」という言葉に鋭く反応した。
「無駄なことをするのはとっても不味いことなのです。
やっぱり、上申書は作成するべきなのです」
美希はそう言うと、スタスタと部屋を出て行った。
あまりにも変わり身の早さに他の3人はびっくりして見送るだけだった。
ただ、1人で出て行った美希はしばらくすると戻ってきた。
「美緖、何をしているのです!
手伝うのです」
美希は戻ってくるなりそう言った。
「あ、はいはい……」
美緖は作成を提案した手前、手伝うざるを得なかった。




