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その3

「ああ、もうやってられないのです!」

 地下探索中に美希がついに爆発した。


 爆発したとは言え、口調はいつもの冷静そのものだった。


 TK34との戦闘から1週間、3回の街中に出現した妖人への対応、そして、今日は2回目の地下探索だった。


 美希にとってはありもしない妖人拠点の手掛かり探しであり、無駄な事だと思っていた。


 それに加え、3区地下はほぼ探索し終わった後で、今は更に詳細に丁寧に探索せよという命令が出されていた。


 美緖はそんな美希を見てさてどうしたものかと思った。


 美希の言う事はある程度理解できるのだが、だからと言って、今の任務を放棄する理由にはならないと考えていた。


「美希ちゃん、サボっちゃダメなのだ」

 珍しく美紅が美希を注意した。


 と同時に、美緖はこの後の展開を容易に想像できてしまった。


 美紅、それは不味いよと。


「ありもしない物を見付けようとするなんて、間抜けすぎるのです」

 美希は美紅に対して吐き捨てるようにそう言った。


 そして、続けて、

「大体、美紅、あなたは考えて行動しているのですか?

 何も考えないでいるなんて、とんだ盆暗なのです」

と美紅を攻撃した。


 美紅は美希の攻撃にシュンとなってしまった。


 美緖はそんな美紅の姿を見てかわいそうになった。


「美希ちゃん、それは言い過ぎですよぉ」

 かわいそうに思ったのは美緖だけではなく、美佳はいつものホワホワ口調で美希を窘めた。


 ただ、目が笑ってはなかったので、笑顔が怖かった。


 美希は美佳に言われて、ハッとした。


そして、

「悪口を言って、悪かったのです」

と美希は美紅に謝った。


「いいのだ」

 謝ってもらった美紅は笑顔でそう言った。


 もう気にしていない様子だった。


 この辺の立ち直りの早さは尊敬に当たるかも知れないと美緖は思った。


 そんな3人のやり取りを見詰めていた美緖だったが、逆に3人から視線を向けられているのに気が付いた。


「ま、取りあえず、任務を続けましょう。

 その後の事は追々考えると言う事で」

 美緖は慌ててそう言った。


 その為、取り繕ったような感じになってしまった。


 そんな美緖を見て、美佳と美希だけではなく、美紅までもやれやれという失望の表情になった。


 そんな3人の表情を見て、美緖は何だか自分が追い詰められているような感覚に陥った。


「追々考えると言ったのですが、具体的には何を考えるのです?美緖」

 美希は美緖にそう聞いてきた。


 美緖の追い詰められていると言う感覚は錯覚ではなかった。


「ええっと、今後の事かな……」

 美緖は敢えて曖昧な答えを言った。


 頭の中にある事を言ったら大変な事になるという確実性があったからだ。


「具体性に乏しいですねぇ……」

「うん、ガッカリなのだ」

 美佳と美紅はあからさまにガッカリしていた。


 そんな2人に美緖はあんた達がそれを言うのと思いっ切り突っ込もうとしたが、

「やはり、今後の事を考えると、上申書を作成するのです。

 そして、とんちんかんの上層部の考え方を正すのです」

と美希がきっぱりと言った。


 美希は美緖が触れたくない上申書という言葉を口にしていたので、脱力感に見舞われた。


 作成するのはあなたでしょうが、説明するのは私なのでしょ?と美緖は思っていた。


「美希ちゃんの得意技なのだ」

「そうですねぇ、この前もそれで成功しましたしねぇ」

 美紅と美佳は口々に賛成するかのように言ったが、美緖は成功率低かったからと突っ込みたかった。


「しかしなのです」

 美希はいつも以上に冷静な口調でそう呟いた。


 その様子に他の3人は少々驚いた。


「敵の拠点がどこにあるのか、まだ皆目見当が付かないのです」

 美希は今度は告白するようにそう言った。


「だったら、ここも念入りに調査する必要があるのでは?」

 美緖は面倒事を避ける為の質問をした。


 その質問に対して、美希はすぐに首を横にぶんぶんと振った。


「ここにないことは確かなのです。

 ここにあるとしたら、3区の大隊本部を襲う必要はないのです」

ときっぱりと美緖の言うことを否定した。


「ええっと……」

 美緖は困り果ててしまった。


 美希の言うとおり、近い場所に地上と地下に拠点を作る必要はないのかもしれないと思った。


 妖人がどう考えるかは別だが……。


「だから、ここにはないのです。

 拠点はもっと東にあるのです」

 美希は再び断言した。


 細かい点はともかく、大まかな点で美希が断言したことは外れることはなかった。


 少なくても美緖はそう思っていた。


「で、上申書はどう書くの?」

 美緖は諦めたように美希に聞いてみた。


「どうしたいいのか、分からないのです」

 今度は美希が困った顔をした。


 それじゃあ、どうしようもないじゃないと美緖は苦笑いする他なかった。


「もう、素直に書く他ぁ、ないんじゃないでしょうかぁ?」

 美佳は自分の性格を表すかのように、そう提案してきた。


 それに対して、美緖はそれではどうしようもないと思いながら再び苦笑いする他なかった。


「そうなのかも知れないのです」

 美希の方は腕組みをしながら考え込むようにそう言った。


「まずは素直に意見表明をするのが大事なのかも知れないのです」

と続けて、美希は前向きの姿勢を見せた。


 それを見ていた美緖は問題が解決したかのように振る舞う他の3人とは打って変わって、暗澹たる思いに駆られるのだった。

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