その1
TK34との遭遇戦の翌日、旅団本部から3区地下の探索を強化するようにとの通達があった。
ただし、全特戦隊を投入すると言う訳ではなく、今まで通り1隊のみの投入となっていた。
これは昨日負傷した琴音と鈴音の影響もあったのだが、頻発している街中の妖人出現に対応しなければならないのでそれ以上戦力を割けないという側面もあった。
負傷した二人の怪我の具合はそれほど深刻ではなく、1週間ぐらいで復帰できるのとの事だった。
この事は美緖を初め、他の特戦隊員達は安堵した。
しかし、戦闘可能な部隊が4から3に減る事による負担増は免れなかった。
その影響で、この日は美緖達は予備兵力として、中隊オフィスに待機していた。
今は昨日の戦闘報告書も提出し終わり、ちょうど昼食を取り終わったばかりだった。
特にやる事がなく、ソファに座っていた4人はお喋りをする訳でもなく、銘々がバラバラな事をやっていた。
美紅は食事を摂って眠くなったのか、間抜け面で眠りこけていた。
美佳はホワホワした感じでボーッとしていた。
美緖は他の3人を観察していたのだが、美希が何やらぶつくさ言っているのが気になっていた。
連隊本部の通達を聞いてからずっとこんな調子だった。
正に四者四様だった。
ただ、美希に関しては美緖はある種の危機感を意識せざるを得なかった。
そして、それを防ぐ手立てもないように思われたので、今は触らぬ神に祟りなしとばかりに距離を置こうとしていた。
そんな美緖の気持ちを感じ取ったのか、美希は何かを思い付いたかのように目をカッと見開いて、美緖を見た。
美緖は嫌な予感がした瞬間、そして、美希が何かを言おうと息を吸い込んだ時に、非常警報が鳴った。
「7区で妖人が出現。
数は1、ランクはC。
待機中の117中隊は至急現地へ向かえ。
繰り返す、7区で妖人が出現。
待機中の117中隊は至急現地へ向かえ」
緊急指令と共に、中隊オフィスにいた全員が一斉に立ち上がって、車両に向かって走り出した。
美緖は走りながら美希からの攻撃を回避できた事にホッとしていた。