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その3

 それから4日後、美緖達は再び非番だった。


 兵力、東にシフト宣言から前日に至るまで、妖人の出現がなかった。

 

 なので、それが正しかったかどうか未だに分からなかった。


 ただ、この日は23区で妖人の出現が確認された後、3区でも妖人が確認されていた。


 いずれも地上であり、23区には桜隊所属の101中隊が、3区には春菜隊所属の109中隊が出動した。


 また、初音隊所属の104中隊は3区地下で妖人拠点の探索活動を行っていた。


 したがって、旅団で待機状態の特戦隊員達がいなくなったので、非番だった美緖達が急遽予備兵力として待機する事となった。


 その為に美緖達が自室から中隊オフィスへと向かっていたのだが、その途中で緊急出撃命令が下った。


「104A小隊が地下で妖人TK34と遭遇。

 117中隊は直ちに出撃準備をせよ。

 繰り返す、104A小隊が地下で妖人TK34と遭遇。

 117中隊は直ちに出撃準備をせよ」

 館内放送が響き渡っていた。


 美緖達はTK34と言う言葉に鋭く反応した。


 そして、不味いという認識が一致すると共に、行き先を車庫に変更して走り出した。


 美緖達が車庫に辿り着くと、中隊の隊員達が集まり出していた。


 集まり出してはいたが、まだ2割ほどと言った所だった。


 時間が惜しいと美緖達4人の誰もが思っていた。


 そこに和香が駆け付けてきた。


「中隊長殿、先行させて下さい」

 美緖は駆け込んできた和香にそう進言した。


 和香は美緖達の焦っている表情を見て、事態の深刻さを悟った。


 しかし、指揮車両の隊員はまだほとんど揃っていなかった。


「中隊長殿、私の分隊で特戦隊員達を先発させます」

 話を聞いていた佐々木裕美ささきひろみ少尉がそう進言してきた。

 裕美が率いているのはD小隊だったが、こちらもまだ隊員が揃っていなかった。


 その為、分隊編制で先行しようとしていた。


「了解しました。

 佐々木少尉、分隊編制で特戦隊員達を先行させて下さい」

 和香はすぐにそう決断を下した。


「了解しました」

 裕美はそう言って、敬礼すると、美緖達と共に走り出した。


「D小隊の残りは小林軍曹が指揮を執るように。

 兎に角、準備を急いで!」

 和香のテキパキとして指示を出している声を聞きながら美緖達は車に乗り込んだ。


 いつもの装甲車とは違って、小さな軽機動車だった。


 美緖が助手席、他の3人が後部座席に乗り込むと、裕美が乗っている車が先導して2台で直ちに出撃した。


 美緖は走行中の車中で自分の端末をジッと見ていた。


 どうやって戦おうかと思案していた。


 初音隊は一方向からTK34と対峙していた。


 襲うのなら、やはり背後からか……。


「117Aより104Aへ。

 まもなく現着します。

 現状をお知らせ下さい」

 美緖は現状を把握する為に通信した。


「こちら104A。

 琴音、鈴音が負傷。

 現在、2人でTK34と交戦中。

 状況はあまり芳しくないわね」

 初音が息を切らせながら返信してきた。


 状況は思った以上に悪かった。


 今すぐに助けに行かないと初音隊は全滅しかねない状況だった。


 後ろに回り込んでいる時間はないかもしれない。


 救援を優先して同じ方向から突っ込むしかないのか?


 ただ、その場合、初音隊と同じに徐々に撃ち減らされる可能性が高かった。


 前後から攻撃しない限り、TK34には対抗できないだろう。


 後ろに回り込むだけの余裕はあるのだろうか?


 初音隊が持たなかったら後ろに回り込んでも意味がない。


 そんな事を考えながら美緖はこの後の行動に迷っていた。


 そんなこんな考えている内に車は戦闘現場に最も近いマンホールに着いて停車した。


 停車と同時に美緖達4人は降車した。


「今、行くのだ!」

 美紅はそう叫ぶと、一気にマンホールの中に突入した。


 それを止められずに見ているしかなかった美緖は人の気も知らずにと頭を抱えた。


 だが、同時に閃いたものがあった。


 美紅に続き、美希がマンホールの中に入ろうとしていたが、

「美希、美佳、私に続いて!」

と言って、マンホールとは反対方向に走り出した。


 美佳と美希は一瞬戸惑ったが、言われたとおり、美緖の後を追った。


「美紅、聞こえる?」

 美緖は走りながら美紅に通信で呼び掛けた。


「何なのだ?」

 この状況下で美紅のすっとぼけた声が返ってきた。


「あなたはそのまま初音お姉様方の援護に向かって」


「え?どういう事なのだ?」

 美紅は走り出そうとしていたが、状況の変化を感じて立ち止まって後ろを振り返った。


 3人が付いてきてこないのを知って急に不安になっていた。


「私達3人はTK34の後ろに回り込むから、その間、お姉様方と協力してTK34を足止めして」


「美緖ちゃん、また騙しているのか?」

 美紅はらしくないぐらいとても不安になっていた。


「何を騙すのよ?」


「だって、あたし一人じゃあ、あれは無理だのだ」


「初音お姉様方がいるでしょ!」


「そうなのだけど……」

 いつになく美紅は歯切れが悪かった。


「後ろに回り込まないと、TK34とは戦えない。

 だから、頼りにしているのよ、美紅」


「分かったのだ。

 頑張るのだ!」

 美紅は美緖に言われて奮起して、一目散に駆け出していた。


 二人のやり取りを聞いていた美佳と美希は互いに顔を見合わせて力なく笑った。

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