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妖人 ~ ゲノム編集された私達が戦う相手  作者: 妄子《もうす》
16.歓迎

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その4

 調査はその日の内に終了した。


 理由は特戦隊員達に負担を掛けないようにする為だった。


 美緖達は最後に引き上げると、そのまま旅団本部へと戻り、検診へと向かった。


「流石の私の可愛い恋人達。

 たちまち世間の人気者ね」

 4人を出迎えた洋子先生はいきなりラブラブ光線を浴びせてきた。


 ネットでの噂を知っているようだった。


 ただ、4人の方はそんな洋子先生を見てうんざりした顔になった。


 ただでさえ、暑苦しいのに今日はいつも以上だった。


「でもね、人気者になってアイドルでビューなんかされたら遠い存在になってしまうわね。

 それはそれで見てみたいけど、寂しいわね」

 洋子先生は冗談で言っているのか本気で言っているのか分からなかった。


 ただ、4人を見る目は慈愛に満ちていた。


「うるさいのです!

 さっさと仕事をしやがれなのです、この変態!」

 美希がそんな洋子先生に罵声を浴びせた。


 それと同時に隣の検診室のドアが開き、桜・椿・葵・茜の4人が出てくる所だった。


 当然、この4人に美希の罵声はバッチリ聞かれた。


 一瞬の沈黙の後、葵と茜はお腹を抱えながら笑い出し、桜と椿はお互いの肩に手を乗せながら笑いを堪えようとしていたのだが、無駄だった。


「美希って、普段喋らないのに洋子先生にはストレートに物を言うんだね」

 茜は笑いながらそう言った。


「でも、でも、そう言わないと、上手く、伝わらないんじゃ……」

 葵も笑いながら話したが、笑いすぎて上手く言葉が出てこないようだった。


「ふ、二人ともそんな風に言ったら先生に失礼じゃないの……」

 椿は口ではそう言ったが、洋子先生の顔を見たら堪えていた笑いが一気に吹き出してしまったように、茜と葵以上に笑い出してしまった。


 そんなお姉様方4人を見て、美希は赤くなっていた。


「凄いのだ、美希ちゃん!

 お姉様方をあんなに爆笑の渦に巻き込んだのだ!」

 美紅は尊敬したような眼差しを美希に向けた。


 何を尊敬しているのかはよく分からなかったのだが。


 ただ美紅の言葉を聞いたお姉様方4人は更に大爆笑していた。


 もう、何を言われても爆笑するぐらいな感じだった。


 そんなお姉様方を見て、美希は益々赤くなり、美紅は益々美希を尊敬した眼差しで見ていた。


 その光景を見て、美緖と美佳はただただ呆れたような困ったような笑顔をする他なかった。


 一方、罵倒された方の洋子先生は、8人の姿を見て微笑ましく思っていて、顔がにやけていた。


「まあ、そんな事より、どうしてこんな事になっているのかしら?」

 一番大笑いしていた椿が急に真面目な顔で聞いてきた。


 一通り、大笑いしたから満足したのだろう。


「そんな事って、お前が一番笑っていたじゃないか!」

 隣にいた桜が鋭いツッコミを入れてきた。


「あ、でも、気になりません?

 美希が洋子先生に罵声を浴びせた理由を」

 椿はちょっと誤魔化すようにそう言った。


 誤魔化された気分だが、他のお姉様方3人は罵声の理由の方が重要と思ったのか、お互い頷いてから、4人で美希の方に視線を向けた。


 4人に一斉に視線を向けられた美希は強ばった表情になった。


 いつもの人見知りの美希に戻っていた。


 4人はちょっと可愛いと思っていた。


「ああ、それはね、4人がアイドルデビューするって事で、私、心配になっているのよ」

 洋子先生はそう口を挟んだ。


「そんな事になっていないのです。

 妄想も大概にしやがれなのです、このぼんくら頭!」

 何を言っているか分からない洋子先生の言葉に美希が再び罵声を浴びせた。


 止めとけばいいのに、あまりの素っ頓狂な言葉に思わず反応してしまった。


 この罵声に再び4人のお姉様達は大爆笑してしまい、しばらくそれが収まりそうになかった。


 この反応を見て、美希は心底後悔した。


 ようやく収まった後、椿がまた真面目な表情に戻って、

「ああ、私達がネットに話題になっている事ですね」

と何事もなかったように言った。


「そうなのだ!

 私達、褒められたのだ!」

 美紅はエッヘンとばかりにそう言った。


「確かに美緖達は一番人気だったよね」

 茜がそう言った。


「対して、私達は一番ビリだったね……。

 おばさんには興味がないって意見もあったし……」

 葵がそう言うと、お姉様方4人は一斉にうな垂れてしまった。


 それを見た美緖は不味いと思った。


「私達、凄いのだのだ!

 また褒められたのだ!」

 美紅は鼻高々だった。


「あのぉ、美紅ちゃん、別に褒められてはいないと思いますぅ。

 お姉様方、落ち込んでいますしぃ……」

 美佳はいつものホワホワした口調で美紅に続いて更に余計な事を言った。


 そのやり取りに、お姉様方4人は急に顔を上げた。


 その表情を見た途端、美緖は臨界点間近を感じた。


「まあまあ、それはどれも洋子先生の妄想ですから」

 美緖はお姉様方4人に気を遣うような言い方をしたが、洋子先生には全く気を遣わなかった。


「それは勝者の余裕って事かね、美緖くん」

 そう絡んできたのは桜だった。


 美緖も余計な事を言って非難を一身に浴びる事になってしまった。


 ただ、えっ!?私?と言う顔をしている洋子先生は放ってかれていた。


「そんな事ないですよ、桜お姉様」

 美緖は面倒くさいと思いながら和やかにそう答えた。


そして、

「ほら、洋子先生、検診、検診」

と言って、洋子先生を診察室の方向へ無理矢理向けると、背中を押して診察室へと無理矢理捻じ込んだ。


「では、私達は検診がありますので、これにして失礼させて頂きます」

 美緖はそう言うと、残りの3人も診察室へと押し込んだ。


 微妙な空気のままお姉様方4人を残していくと、美緖は一礼してドアが閉めた。


 これで、この話は終わりになったと美緖は思いたかったが、思い出す度に桜達にこの事で絡まれていくのだった。


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