その3
「どうかな?一躍アイドルになった気分は?」
安全が確認された後、調査団の先頭を切って乗り込んできた小森大佐がいきなりそう言ってきた。
美緖達4人は一列に並んでいて敬礼をしていたのだが、ただでさえ戸惑っている所に、追い打ちを掛けられたようでかなり居心地が悪かった。
それは車の中では得意気だった美紅も同じだった。
「まあ、あんな感じの群衆を見れば、それは居心地も悪くなるな」
小森大佐は些か意地の悪い笑みを浮かべながらそう言った。
とは言え、大佐の言葉は美緖達の今の心情を完璧に表していた。
美緖達4人はどうしていいのか分からないという表情で敬礼したままだった。
「さて、無駄話はこれぐらいにして置いて、諸君、早速調査に取り掛かろうか」
小森大佐が後ろを振り向いてそう言うと、調査団は大佐と美緖達の横を通り過ぎて、作業に取り掛かった。
それを美緖達は敬礼をしたままぼんやりと見ていた。
「117A小隊の諸君、周りがどう変化しようが、諸君はいつも通り振る舞えばいい」
小森大佐はそう言い残すと、調査団の方へと歩いて行った。
美緖達は敬礼から直ると、お互い顔を見合わせてから頷き合った。
そして、まずは調査団の護衛の役目を果たそうと考えた。




