その4
救出作業は結局、夜明けまで続いた。
美緖達は現地で妖人を警戒し続けたが、幸い遭遇する事はなかった。
美緖達は一番最初にこの場所に突入して、一番最後に引き上げる事となった。
マンホールから地下空間から出ると、和香達が出迎えてくれた。
「お疲れ様、大変な一日だったわね」
和香は美緖達4人を労った。
「はい……」
美緖は虚ろな目でそう答えただけだった。
何て言っていいか分からなかったのだった。
「すぐに戻りましょうか」
和香の方は美緖達の気持ちを察すると、ただそう言った。
そして、立ち止まっている美緖達の背中を押して、車両に乗り込ませた。
その後に、外に出ていた隊員達も続いた。
全員が乗り終わると、すぐに中隊指揮車両は他の中隊の車両と共に発進して、旅団本部への帰途に就いた。
すでに東からは太陽が昇り始め、辺りは明るくなっていた。
徹夜明けなので疲れて眠いはずだった。
だが、美緖達4人だけではなく、車両内にいる隊員達は誰一人寝ていなかった。
だからと言って、何か喋る訳でもなかった。
指揮車両にいるいつも陽気な男性陣でさえ、口を難く閉ざしていた。
それが更に空気を重くしていたが、こんな状況で空気を明るくしたいと思っている人間はいなかった。