その2
ただ、美緖達が気を取り直したからと言って、事態が好転する訳ではなかった。
美緖達は穴の出入り口まで探索を行い、更に隣の駅まで探索を行った。
特に異常はなく、妖人も見つけられなかった。
その後、終着駅と穴の出入り口の中間地点で警戒するように命令を受けた。
美緖達はその命令通り、中間地点に達したのた。
しかし、日がそろそろ落ち掛けているというのに、妖人に拉致された人達を外に搬出する作業は一向に始まらなかった。
先程気を取り直した美緖達のメンタルは再び落ち込んでいた。
線路には明かりが灯されており、地下空間はもう暗くはなかった。
作業自体はゆっくりだが進んでいるようだった。
そんな中、117中隊の衛生兵である悦子が携帯食を持ってきた。
美緖達はそれを戸惑いながら受け取った。
夕食時とは言え、とても食欲が湧いてくると言った感じではなかったからだ。
「少しでも食べておきなさい」
悦子は戸惑っている美緖達に笑顔でそう言った。
美緖達はそう言われても受け取った携帯食をただただ見詰めるだけだった。
「確認された生存者は198名。
これから外に出す作業が始まるけど、もしかしたら、徹夜になるかも知れない。
その為にも食べなさい」
食べようとしない美緖達に悦子は尚も話し掛けた。
だが、美緖達はやはりうつむいたまま食べようとしなかった。
そんな美緖達に悦子は更に言葉を掛けようとしたが、
「うん、食べるのだ!」
と言って美紅が携帯食の袋をビリビリ破くと、むしゃむしゃと食べ始めた。
無理矢理感ありありで、何だか必死に食べているようだった。
そんな美紅を見て、美緖が続き、美佳と美希もそれに続いた。
そんな4人を見て、悦子はニッコリ笑った。
「それじゃあ、私は医療班の応援に行ってくるわね」
悦子はそう言うと、手を振って終着駅の方へと歩き出した。




