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その1

 美緖達は3回目の上申書を和香を通じて提出した。


 3度目となると流石に和香も呆れるかと思われた。


 だが、読んで修正すると、旅団司令部へと三度みたび提出してくれた。


 この指揮官はこう言う事に耐性があるのだろうか?


 また、司令部は司令部で3度目の上申書に呆れていたが、呆れながらもそれなりに検討してくれていた。


 こちらもこう言う事に耐性があるようだ。


 ただ、旅団参謀長の小森大佐が妖人の発見実績なしとして否定的な意見を述べた。


 これは2度の上申書で尽く予想を外している事に依るもので、ごく普通の反応と言えた。


 それに対して、風間中佐と峰岸少佐は美緖達の功績を高く評価していていたので、提出してきた本人達に偵察をやらせたらいいのではないかという意見を出した。


 証明する機会を与えようとした形だが、美緖達にとってこれはいい事がどうかは現時点では分からなかった。


 現在の所、手詰まり感を感じていた旅団長である山南准将は、やらせてみても害はないだろうと言う事で、美希の案を採用し、命令が下った。


 この命令に美希はいきり立ったが、美緖は暗澹なる思いに駆られた。


 美佳と美紅は特に反応がなかった。


 この辺は4人の性格を如実に表しているのかも知れない。


 上申書の提出から4日後、美緖達は美希が予想した11区の地下探索に当たっていた。


「この辺は私達を含めて、他の隊も散々通っている所だけど、新たな発見があるとは思えないんだけど」

 美緖は探索の前から否定的だった。


「つべこべ言わずに周りを丹念に調べ上げるのです。

 石頭連中の鼻を明かしてやるのです」

 美希は美希でこの4日間ずっといきりぱなしだった。


 そんな2人のやり取りを美佳と美紅は遠巻きに見詰めていた。


 明らかに巻き込まれないようにする為だった。


「美佳、美紅、何をしているのです。

 ちゃんと調べるのです」

 美希は遠巻きにしている美佳と美紅を叱り付けた。


 巻き込まれないようにしていた美佳と美紅はその努力も虚しく、直撃弾を受けてしまった。


 美佳と美紅は戸惑いの表情を浮かべながらお互いの顔を見合わせた。


 すると、すぐに、

「美佳!美紅!ちゃんとやるのです!」

と美希は再び2人を叱り付けた。


 先程の叱り付けから10秒も経っていなかった。


 美佳と美紅はこれ以上怒られたら堪らないと考え、慌てて作業に取り掛かった。


 美希が予想した地点はちょっと広すぎたかも知れない。


 拠点の予想位置は、現在探索を始めた地点を中心に、半径100m以内が80%の確率で存在し、半径200m以内で確率50%というものだった。


 半径100mと言えば、通り過ぎるだけならすぐに済んでしまうが、床から壁から天井まで確認するとなると、かなり手間が掛かる作業だった。


 しかも地下空間は薄暗く、光をしっかり当てて目や手でしっかりと確認する事を美希は要求していた。


 ちょっと一息つこうとしただけで、何故か美希にすぐに見つかっていまい、3人は容赦なく怒られていた。


 朝から探索を始めてから何も見つからずに昼になろうとしている時、和香から一時帰投命令が出された。


「美希ちゃん、アレ何なのだ?」

 命令が出されると同時に美紅が天井を指差した。


 美希は美紅の元に音もなく突然やってきた。


「え、あ、美希ちゃん!」

 天井から視線を戻すと、いつの間にかに自分の前に立っていた美希に美紅は驚いた。


「恐らく間違いがないのです」

 美希は自分で天井を照らしながらそう言った。


 照らしている部分は右壁の方にずれており、そこに一筆書きで書いたような円状のひび割れがあった。


 ひび割れ幅はとても狭く、光を照らして見ないとよく分からないものだった。


 そして、その周りが妙に綺麗だった。


「すぐにあそこを調べるのです」

 美希は指を差しながらそう言った。


 何やらソワソワしているような我慢しきれないと言った感じだった。


「美希、一時帰投命令が出ているからその後ね」

 美緖は美希を諭すようにそう言った。


「そうなのだ。

 お腹が空いたのだ!」

 美紅はお腹を押さえながら美緖の意見に賛成した。


「ダメなのです!

 すぐに調べるのです!」

 美希が頑なに主張した。


 それを見て美緖は困惑した。


「ご飯の後に言えば良かったのだ」

 美紅はぼそっと余計な一言を言った。


「空腹が何なのです。

 すぐ調べなくてはならない事は調べるのです」

 美希は美紅を睨み付けた。


 あまりの剣幕に美紅はビクッとして黙ってしまった。


 美緖は困ったもんだと思いながら美佳を見た。


 美佳の方はただ首を横に振り、仕方がないと言った感じだった。


「117Aより117Hへ。

 妖人の痕跡を発見、今後の指示を乞う」

 美緖はとりあえず中隊本部に連絡した。


「こちら、117H。

 周辺に異変はあるのか?」

 答えたのは和香だった。


「こちら、117A。

 今のところ、ありません」


「そう、それじゃあ、今すぐ帰投なさい。

 空腹のまま、敵と遭遇するのはあまり有利とは言えないわよ。

 探索はご飯の後にしなさい」


「117A、了解。

 直ちに帰投します」


 美緖は通信を終了してちょっと安心した。


 美紅は満面の笑みを浮かべていた。


 美希がもの凄い不満そうだった。


 美佳はそんな3人をやれやれ、しかたがないですねぇといった感じで見ていた。

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