その5
1時間ほど、じっとそこで待っていたところ、美緖は穴の中に何やら動く物を暗視スコープで捕らえた。
間違いなく妖人だった。
美緖は美紅に無言で合図を送ると、狙いを付けて12.7mm重機関銃のトリガーに指を掛けた。
美緖達特戦隊員は普段は刀を使って戦闘していたが、一応銃器類の訓練も受けていた。
ただ、実戦ではこれが初めてだったので、緊張していた。
妖人はこちらに気付いている様子はなく、予想外の早さでこちらに近付いてきていた。
美緖は緊張しながらも敵を引きつけると、トリガーを引いて銃撃を開始した。
狭い地下空間に銃撃音が響き渡りながら銃は振動して弾を発射し続けた。
妖人は思わぬ攻撃に戸惑いながら銃撃を防いでいた。
だが、狭い空間で進む事以上に退く事や避ける事が困難な以上、銃弾を全て防ぎきる事はできなかった。
やがて、妖人は12.7mm弾をかなり喰らって動かなくなった。
美緖は妖人が動かなくなったのを確認すると銃撃を止めた。
そして、妖人側のその後の動きを注意深く観察した。
狭い穴の中、後続の妖人が撃たれた妖人を避けてこちらに向かってくるスペースはなかった。
また、仮に避けられたとしてもまた為す術もなく銃撃を浴びるだけなので、こちらに向かってくる様子はなかった。
撃つ前に微かに見えた後続の妖人も銃撃の後は見当たらなかった。
どうやら撤退したみたいだった。
「117Aより連隊Hへ。
妖人への攻撃成功。
援軍の通り道の一つを潰せた模様」
美緖は連隊司令部にそう報告した。
「連隊H、了解。
その場は支援隊に引き継ぎ、更なる援軍の経路の探索を続けよ」
連隊司令部から新たな命令が来た。
「117A、了解」
美緖はそう答えると、再び溜息が出てきた。