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その4

 妖人の戦力が援軍によって強化されてしまった為、3区奪還戦は失敗に終わった。


 あのまま、ゴリ押しで通すのも選択肢の一つだったが、連隊司令部はこれ以上妖人側の戦力が増強させない作戦を採用すべきと考えて、これまでの作戦の中止を選んだ。


 3個中隊で3区本部を取り囲み、残りの1個中隊が地下に潜って援軍の経路の探索と可能ならば撃滅を担う事になった。


「なんか、またトトホな状況なのだ」

 美紅は地下空間を進みながらそう言った。


 やはり、地下に潜るように命じられたのは一番下っ端の美緖達だった。


 地下は薄暗く、閉鎖空間で空気も淀んでおり、命令がなかったら絶対に近付かないような場所だった。


 美緖達は嫌がりながら任務を遂行しており、それが美紅の言葉として表れていた。


 今回は、ツーマンセルで2組に分かれ、1組は前進探索し、もう1組はマンホール下で待機して退路を確保していた。


 前回の失敗を学習した格好だ。


 また、地上には117中隊の残りの部隊が美緖達と同じ位置に移動していた。


 これは前回と同じであった。


 ツーマンセルの組み合わせは、美緖と美紅、美佳と美希となっていた。


「美緖ちゃん、この道でいいの?

 何も見つからないのだ」

 もう1時間以上、探索を続けていたので、美紅は不満を漏らしていた。


 私の方が聞きたいという言葉を美緖は飲み込んだ。


「分からないから、こうやって探しているんでしょ」

 美緖の方もうんざりしていたが、美紅のように言葉には出さなかった。


「まあ、それはそれで分かっているのだ……」

 美紅は不満たらたらといった感じだったが、それ以上は言葉を続けなかった。


「次のマンホールの下に出たら探索を一旦止めましょ」

 美緖は不満たらたらの美紅を宥めるように言った。


 ただ、美紅の方は急に立ち止まった。


「美紅?」

 思わぬ行動をした美紅に美緖は驚いた。


 美紅は美紅の方で、そんな美緖に構わなかった。


 美紅は慌ててライトを付けて、地下空間の側面を照らし出していた。


「美紅?」

 美緖は美紅が何をやっているのか分からなかったのでそう声を掛けた。


「美緖ちゃん、あれ、なんなのだ?」

 美紅が照らしているライトの位置を固定すると、指を差しながら言った。


「あ!」

 美緖はライトで照らし出されている場所を見て、驚いた。


 地下空間の側面に穴が開いていたからだ。

 どう見ても、妖人の仕業に違いない穴だった。


「117Aより連隊Hへ。

 妖人が開けたと思われる穴を発見。

 これより穴の探索に向かう」

 美緖はインカムで連隊司令部にそう報告した。


「連隊H、了解。

 慎重に探索するように」


 連隊司令部からそう返信があると、美緖と美紅はゆっくりと穴に近付いていった。


 美緖と美紅は穴の前に着くと、2人同時にゆっくりと中を見た。


 ただ、中は真っ暗で何も見えなかった。


 美緖達がいる地下空間は曲がりなりにも明かりがあり、薄暗いながらも地下空間を移動できた。


 しかし、こちらの穴にはそう言った物が一切なく、この先どうなっているのかが見当が付かなかった。


 美緖と美紅は真っ暗な暗闇をライトで照らしたが、穴が奥にずっと続いていると言う事が分かっただけだった。


 何だか不気味で緊張感が走った。


「美緖ちゃん、私達ぃ、そっちに行った方がいいですかぁ?」

 緊迫感が増す中、美佳がいつもの口調で聞いてきた。


「いいえ、そこにいて」

 美緖は美佳達の方を振り返ってそう言った。


「分っかりましたぁ」

 美佳はそう答えて、美希共にその場に留まった。


「美緖ちゃん、この中に入ることになるの?」

 美紅は露骨に嫌そうな顔をした。


「いえ……」

 美緖も入る事は躊躇した。


 穴は妖人が通るにしては明らかに小さかった。


 また、美緖達が中に入った場合でも、立って歩けるほどの空間はなかった。


 さて、どうしたものかと美緖は次の行動を決めかねていた。


「美緖隊員、こちらで映像を確認した。

 その穴から妖人の援軍が来ていると確証が持てる?」

 インカムを通じて和香が美緖に聞いてきた。


「位置からしてそうだと思われますが……」

 美緖はそう聞かれると断言はできないと思っていた。


「美緖、よく見ると、床に所々土で汚れた跡があるのです。

 ほぼ間違いなく、援軍の通り道なのです」

 美希の方でも映像を確認したらしく、遠くから美緖に叫ぶように言った。


「了解したわ。

 暗視スコープと12.7mmを下に降ろすわ。

 そして、周辺地帯の明かりを消すように手配します。

 そこで待ち伏せしていた」

 インカム越しに美希の意見を入れた和香がそう命令してきた。


 手配が早いのはありがたい事だが、暗闇の中、ここで待ち伏せすることになったので、美緖は自然とため息が漏れ出てきた。

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