その3
美緖達が地上でしばらく待っていると、117中隊の他の部隊がぞろぞろとやってきた。
何か仰々しいなと思いながら美緖は集まってくる様子を眺めていた。
指揮車が美緖達の前に止まると、美緖達は車に乗り込んでいった。
「お疲れ様」
乗り込んできた美緖達に和香がそう声を掛けてきた。
「ありがとうございます……」
何もしていないと感じている美緖は戸惑いながらそう答えた。
「中隊の全部隊が出撃する意味あるのでしょうかね?」
運転手である鈴木兵長がぼやくような感じでそう言った。
恐らく鈴木兵長も美緖と同じ事を感じていたのだろう。
「兵長、我々一介の人間が判断する事ではないわよ」
隣にいた麻衣が咎めるような口調でそう言った。
「しかし、働いているのは特戦隊員達だけで、我々はタクシーをしているだけですけど」
鈴木兵長は尚も続けた。
「鈴木兵長、気持ちは分かるけど、万が一に備えて出せる兵力は最大限に出した方がいいのよ」
和香は鈴木兵長にそう説明した。
「それは分かりますけどね」
鈴木兵長はそう言うと、口を噤んだ。
だが、まだ不満そうだった。
そんなやり取りを美緖達は後部座席に腰を掛けながら微妙な表情で聞いていた。
鈴木兵長は働いていると言っていたが、自分達は2時間ほど地下空間を歩いただけで何もやっていないという自覚があったからだ。
そんな中、美希が美緖の方を見て何かを訴え掛けていた。
美緖はそれに気が付くと、
「中隊長殿、今はどうなっていますか?」
と美希のしたい現状に関する質問をした。
「予定通り、109A小隊が地下に入って南に向かっているわ」
和香はそう答えた。
「春菜お姉様達の部隊ですねぇ。
何か、見つかるでしょうかぁ?」
美佳はいつものホアホアした口調でそう言った。
ただ、お姉様達という言葉に反応した人物がいた。
山本兵長はその言葉を聞いて、癒やされたような気がすると共に、百合世界を想像してしまった。
訓練学校では上級生は下級生の面倒をよく見る事が伝統であり、実際、姉妹以上に強い絆が生まれていた。
残念ながら特戦隊員達の世界は百合世界ではなく、どちらかというと体育会系の世界だった。
「どうでしょうね……。
また何も見つからないかもしれないわね」
和香はあまり期待していないようだった。




