その2
3人が診察室で待っていると、すぐに美少女達が入ってきた。
「失礼します」
8人の少女達は口々にそう言うと、整然と中に入ってきて、入り口の前で2列に並んだ。
彼女達は特戦隊員1期生となるべく訓練を受けていた。
歳は15歳で、訓練学校の3年生だった。
無論、8人は同じ容姿だった。
15歳とも思えぬ雰囲気があり、自分達が何の為に訓練を受けているかをよく分かっていると言った感じだった。
一人一人の見た目はあどけない少女であり、どこから見ても人間そのものだった。
妖人は1年程度で成人になるのに比べて、彼女達は人間に限りなく近かった。
と言うよりは、生物学上は人間である。
「皆さん、体調が優れない人はいませんか?」
藤田先生は入ってきた8人を見渡しながらそう聞いた。
だが、申告する者はいなかった。
「いないようでしたら、今日も通常の診察を行います。
ただし、今日は昨日お話ししたとおり、研修として、皆様の診察を手伝って頂く2人の先生がおります」
藤田先生はそう言うと、一歩下がって、洋子とゆりかの横に立った。
「まずは谷山洋子先生です」
藤田先生は洋子を少女達に紹介した。
洋子は一歩前に進み出ると、
「谷山洋子です、よろしくお願いします」
とにこやかに言って、お辞儀をした。
そして、洋子は一歩下がって元に戻った。
「続いて、佐藤ゆりか先生です」
藤田先生は次にゆりかを紹介した。
ゆりかも一歩前に進み出ると、
「佐藤ゆりかです、よろしくお願いします」
と言って、お辞儀をした。
そして、ゆりかも一歩下げって元に戻った。
「では、次に皆さんに自己紹介してもらいましょう」
藤田先生は今度は少女達に自己紹介を促した。
少女達は順に自分の名前を言うと、丁寧にお辞儀をしていった。
名前は長女から順に、桜、椿、葵、茜、菫、柊、菘、薺だった。
「では、自己紹介も終わりましたので、早速診察に入りましょう」
藤田先生はにこやかにそう言った。
「先生!その前に言いたことがあります」
桜が手を上げてそう言った。
「何でしょうか、桜さん」
藤田先生は桜の方を見ていった。
「変態がいるのですが、よろしいのでしょうか?」
桜は洋子を指差しながらズバリと言った。
桜がそう言うとのと同時に、他の7人も力強く頷いていた。
「な、なんと!」
洋子は動揺しているかのように言ったが、顔は何故か嬉しそうだった。
おそらく変態と言われた事に対してではなく、話し掛けられた事が嬉しかったのだと思う。
いや、もしかしたらどちらもかも知れなかった。
ゆりかは洋子の横で笑いを堪えていた。
と同時に、瞬時に判断ができる洞察力に感心していた。
「谷山先生は変態かもしれませんが、軍医学校を首席で卒業された英才です」
藤田先生は相変わらずにこやかにそう言った。
変態は否定しようのない事だったから否定しなかったようだ。
ゆりかは藤田先生の言葉を聞いて、頭を抱えた。
彼女は次席で卒業したのだが、学生時代、一度も成績で洋子に勝った事がなかった。
改めてこんな変態に勝てなかったというコンプレックスを思い出していた。
何だかのたうち回りたい気分になっていた。
「はい、先生」
桜の真後ろにいる菫が手を上げた。
「なんでしょうか、菫さん」
「変態でも軍医になれるのでしょうか?」
「そうですね、変態を排除する規定がありませんので、なれますね」
藤田先生はまたにこやかにそう答えた。
さっきから言っている事は辛辣なのだが……。
「しかし、谷山先生が何か仕出かしたら、変態排除規定ができるやもしれませんね」
藤田先生は洋子の方を見てにこやかにそう言い放った。
にこやかな分、どこか薄ら寒く、怖かった。
「さて、他に何かありますか?」
藤田先生は今度は周りを見渡しながらそう言った。
特に手を上げている人はいなかった。
「それでは診察に移りましょう。
皆さんは診察着に着替えて下さい」
藤田先生がそう言うと、8人の少女達は診察室の一角にある脱衣場に入っていった。
その様子を洋子は目を輝かせながら見ていた。
だが、しかし、着替えが始まる前にカーテンが閉められてしまい、ガッカリした。