その2
緊急呼び出しを受けて、ブリーフィングルームには美緖達特戦隊員と和香、麻衣が待機していた。
そこに、各小隊長と小隊の副長達が遅れてやってきた。
「各小隊長、隊員は全員、揃った?」
和香は入ってきた各小隊長にそう聞いた。
「B小隊、全員揃いました」
「C小隊、全員揃いました」
「D小隊も全員揃っています」
各小隊長から順にそう報告があった。
「了解しました」
和香はそう返答すると、各小隊長は自分の席へと散っていった。
「久乃木少尉、現状の説明を」
和香は大スクリーンの前で待機している麻衣にそう言った。
「了解しました」
麻衣はそう言ってから、スクリーンをオンにした。
「現在、11地区中心部で多くの妖人が出現。
Cランクが9体がバラバラに出現したとの事です。
それを迎撃するため、101,104,109の各中隊が出撃。
我が117中隊には予備兵力として、旅団本部で待機せよと言う事です」
麻衣はスクリーンを使いながらそう説明した。
「また、11区ですか」
D小隊隊長の裕美は前の作戦を思い出して嫌な感じを覚えた。
無論、美緖達も同様に初戦の事を思い出していた。
あの時も美緖達以外の南東京旅団所属の特戦隊中隊が全部出払って、戦闘経験のない美緖達が予備兵力として待機を命ぜられていた。
美緖達は前回と同じシチュエーションなので嫌な感じを覚えてはいた。
しかし、今回はまともな組織になっていたので取りあえずは余計な心配はしないで済んでいた。
「ただ今回は予備兵力として、我々だけではなく、北と西にも援軍要請をする事になっています」
麻衣はそう説明を追加した。
北とは北東京旅団で、西とは西東京旅団だった。
それぞれ23区の北側、西側の市町村を担当する旅団だ。
「現状、我々は待機のみ、命じられているわ。
11区の戦況状況の変化による参戦、もしくは担当地区で他の妖人が現れた時の出動など、色々考えられるが、今のところは、各隊のオフィスで命令あるまで待機と言う事ね」
和香からはそう付け加えた。
現状が現状だけに今は仕方がないなと言う空気になった。
「何か、質問がある?」
和香は一同に聞いてみた。
「TK21は確認されていないのでしょうか?」
美緖は和香にそう質問した。
自発的に質問した訳ではなく、美希に突っつかれて質問していた。
和香は麻衣に目で確認してから、
「確認は取れていないようね」
と言った。
そして、続けて、
「やはり、気になる?」
と逆に聞いてきた。
「はい、これまで酷い目に遭わされてきていますので」
美緖はそう言って、苦笑いしようとした。
しかし、これまでの事を思うと、それすら出来ずに笑顔が引きつっていた。
そんな美緖の微妙な表情を見て、和香は意外に思った。
新兵が2回もランクAの妖人を抑えたのだからもう少し自信を持ってもいいのと思った。
だが、逆にこれくらい慎重な方がいいのかもしれないとも思い、安心した。
「TK21が出てきた場合、これまで以上に慎重に対応しましょう」
和香は美緖の態度から、自分も、そして、隊も引き締めるためにそう言った。
「了解しました」
和香の意図を察して、その場にいる一同がハモるようにそう答えた。
その光景を見た和香は一層安心して、力強く頷いた。
「他に質問がある?」
和香は再び一同に質問した。
しかし、更に質問する者はいなかった。
「無いようだったら、とりあえず、オフィスで待機」
和香がそう言うと、各自が席を立った。
そして、雑談をしながらブリーフィングルームを出て行き、各自の待機場所へと散っていった。
ただ、そんな中、美緖達は嫌な予感を覚えながら無言でブリーフィングルームを出た。