七話
「テント様お帰りなさいませ!」
警備にあたっていたものが声をかけてくる。
「どう?監視所は?思いつきだったんだけど。」
「はいもう最高です!外にいるのとなんら変わらないですし、奇襲も防ぐことができるのですからとっても安心です!それに伝令を出す必要もないだなんて流石テノン様です!」
どうやらウケは良かったらしい。操作についても出来るだけ簡素なものにしておいたのは正解だったな。
「そかそか、なら今日みたいなこともあるから頑張ってくれ。」
「任せてください!ゾンビでも人間でもこいつさえあれば恐れる必要はありません!」
銃を叩いて眩しい笑顔で笑っている。本当に国民たちはいい笑顔で笑うよ。日本にいた頃でこんな光景は見たことないんじゃないか?まぁそもそもこの世界はゾンビが徘徊していて。そんな中で安全が約束されてるとなるとここまで笑顔になれるのも当然かもしれない。
「ほらよっと、これでも食べて残りも頑張れ。」
俺は丸型のチョコレートを創造してそいつに投げる。
「これはなんですか?食べ物と言う割には随分と黒いのですが……。」
「まぁ食べてみれば分かるって、んじゃ開けてくれ。」
「あっはい、お疲れ様です!」
そのあと俺の去ったあとでチョコを食べて感動した男が警備部内でチョコの話を話したことで俺が帰ってくる時間帯の警備のシフトは大人気になったらしい。これ俺が毎回チョコ作らないといけないやつ??
まぁいいやとっと寝よう。明日は俺の家も建てないといけないからな。
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「ではテノン様はここに立ててくださいませ。もちろんそれなりの規模でお願いしますよ?」
「わかったって。どんな感じがいいかな?」
「やはり私としては宗教施設に準じたものをお勧めしますね。これからのことを考えると宗教国家にすべきだと思いますよ。」
「また俺を神として崇めるのかよ。なんかムズムズするんだよそれ。」
「やはりダメですか……。私としてはテノン様がおっしゃる外敵というものに対抗するためにも宗教国家はとても都合がいいと思うのですが。」
実は部門長たちには全て話してある。さすがに俺のせいで戦争になるかもしれないということにを打ち明けるのは勇気がいるものだったが、いざ話してみると彼らは『これで恩返しが出来る』だそうだ。別に大したことはしてないんだけどここまで言われると少しくるものがあった。
マークは少し考えたのち、顔を上げて提案してくる。
「ではテノン様はテノン様であって神ではないということにしましょう。テノン様という我々の救世主がいて、信者たちはそれを敬い、テノン様の目指す目標の力になろうとする。」
「いやでもそれ結局は宗教だろ?なんとなくなぁ。」
日本にいたからなんとなく宗教については退避感を抱いているのもあってなかなか承諾できない。もちろん宗教国家の利点も分かる。ある程度の無茶ならできるし、基本的に国民は全員支持者だ。それに戦争時もさせたくはないが喜んで死兵にもなるかもしれない。でもやはり……。
「テノン様は多分私たちよりも確実に生きるでしょう。もしかしたら不老かもしれません。ですが我々はいずれ死ぬでしょう。そうなると私たちの子孫がその跡を継ぎますが万が一そこで恩を忘れた者がいたらどうするんですか?この世界で内部に敵を作ることはすなわち死です。壁に穴を開けられてゾンビに殺されてしまう。私は、いえ私たちはそれを望みません。もしもテノン様が絶対的存在として敬われ続けるようであればそのような輩もいなくなるでしょう。」
まさかここまで考えてるとは思わなかった。まぁ確かにこれからのことを考えるとそっちの方が楽だろう。
「わかったよ。じゃあその方針で行くよ。ならまずは俺の家からだな。」
よし。宗教施設で見る者の目を奪うようなそんな建物を………。イメージは地球にいた頃に仕事で行った時にたまたま見たハットルグリムス教会を創造する。ここではいっそのことふんだんに鉄を使う。もちろん建材用の資源など皆無なので、一から創造する。もちろん『硬質化』の付与も忘れない。よし…………これだ!!
「なっ!?なんて大きさなんですか!!」
「俺が以前いたところにあった建物を真似たものだよ。ちなみに実物よりもでかくしてあるからいざという時には避難所にもなるぞ。」
「こんな建物が世にあるなんて…………」
この世界では常にゾンビの脅威に脅かされているため娯楽は乏しい。ましてや建築にのここまでリソースを割くこともまずないのだろう。
「一階が礼拝室、地下が緊急時用の備蓄庫、、最上階の15階が俺の部屋だな。謁見室とかどうする?」
「それでしたら14階がよろしいかと。いやそれにしてもここまでとは……」
「あとの部屋割については任せるよ。ちなみに昇降機もつけてある。ボタン押すだけだから簡単なはずだ。」
まぁいわゆるエレベーターというやつだ。歯車に
『回転』を付与してあとはボタンで調整するだけだ。
俺は昇降機の説明をカールにする。
「それはまた随分と便利なものですね!これなら老人でも登れますね!」
「あぁそれに俺としても毎回15階まで上り下りはめんどくさいわ。じゃあ早速上ってみるか。」
まずは中に入る。
「美しい…………。」
カールが泣きだした。
「えぇ…。いきなりかよ………………。」
「これを見て感動しない者はいませんよ!あの色のついたガラスから入ってくる光。ガラス自体が絵になっているし、そして白で統一されたこの空間。もうここは夢ですか?」
「残念ながら夢じゃないんだなぁ。ちなみにあの絵は俺がお前らと出会うまでを絵で表してる。いずれ神話となるかもな。」
そう考えるともうちょいかっこいい感じに描けばよかったな。でも今からまた一からやり直すのは面倒だしとりあえずこのままでいいか。
「ほら次はあれが昇降機だ。最上階まで行くぞ。」
「あっちょっと待ってくださいー。」
見惚れていたマークは俺の言葉でハッとして急いで乗り込んできた。
「はい閉めるのボタンを押して。次は行く階のボタン。もう一回押すと……ほれ、着いたぞ。」
「あっという間ですね……。」
「まだなんも置いてないがここが俺の部屋だ。ここから外を見れるぞ。」
俺は窓を開けて外を見るよう促す。
「おわったっ高いです!」
「あら?マークは高い所は苦手なタイプか?」
どうやら高所恐怖症のようだ。
「テノン様!」「テノン様!!」
外が騒がしいので顔を出してみる。
「テノン様だ!」「テノン様ー!これが新しい家ですか?」「なんて美しいんだ!」
大勢の国民たちがいた。どうやら急に出来た建物に驚いて集まってきたようだ。
この際だ宣言する機会かもしれない。
「みんな聞いてくれ!俺はこれからもこの国の民が俺を信用してくれる限りこの地で安寧を送れることを約束しよう!」
「勿論だ!」「一生ついていきます!」
「この国はいずれゾンビ以外にも敵が現れる可能性があるんだ!俺はこれに抗う為にみんなの力を借りたい!いつになるかわからない。もしかしたら明日、いや100年先かもしれない。でもいつかその時が訪れる!」
「なっテノン様がそこまでいう敵なのか…。」
「でもテノン様以上のものはいないだろ!なんも恐れることはないな!」
「そうよ!それに私たちも恩返ししたいわ!」
どうやら国民たちには受け入れてもらってらしい。
「これからも頼むぞ!!」
「「「テノン様万歳ー!!!」」」
俺は窓から離れる。
「見事な演説でした。宗教の件については私が根回ししときます。」
「あぁ任せるわ。そのうち国教に指定すればいいな。」
「えぇそのような形でよろしいかと。」
「.じゃあ降りるか。別に何かあるわけじゃないしな。」
「私も高い所は苦手なようなので早く降りたいです。」
「今から内装考えるから手伝ってくれないか?」
「ご冗談はよしてください。」
二人で笑いながら昇降機を下りた。まだ数ヶ月だがいい関係を築けてるなと俺は思い、おもわずにやけてしまった。




