三話
俺がこの世界に来てから3ヶ月が経った。
その間に警備部の活躍もあり、今では人口は300人を超えている。国民はそれぞれ部門ごとに別れ、日々活動している。
この3ヶ月で変わったことといえば、まず国の名前をつけたことだ。名前はテノール王国。もちろん国王は俺だ。そして俺の下に各部の部門長。さらにその下は各国民ということだ。ちなみに各部門長は
内政部 マーク
警備部 ガント
生産部 ラーカス
調理部 カルラ
この部門長はその部で一番優れている者を指名している。
「テノン様。食料の備蓄が少なくなってきました。」
早速内政部の部門長 マークが来る。3ヶ月前に出会ったばかりだが、今では全幅の信頼を置ける男だ。
「あとで倉庫に追加しておくわ。他はなんかある?」
「いえ、これ以外問題ありません。」
内政部の仕事でもある資源管理はしっかりとできているようだ。
ちなみに小麦などの食料、衣服用の麻等、その他色々なものの生産については、人海戦術だ。切実に人が欲しいと生産部の部門長 マーカスは嘆いていた。また加工品についてはこの世界のレベルが低いこともあって俺が創造することが多い。いずれはそういうものも作れるようになって欲しい。
調理部では女性が多く、その中心がカルラだ。彼女が指揮をとって朝昼晩の食事を使っている。ちなみに料理の味は絶品だ。この三度の食事を楽しみにしてる国民も多いだろう。
そして警備部。部門長のガントが指揮を取り、まだ残っているコミュニティの保護、治安維持、防衛やゾンビの掃討を行なっている。武器と防具を俺特製のものにしたおかげで怪我人はゼロだ。また武器については連射タイプ以外にもいくつか用途に合わせて、散弾、麻痺弾も創造してある。よってそれらの装備を保管するために警備部には警備部棟を建てたんだが、そうなると他の部の人たちも羨ましそうにしていたので、それぞれ内政部棟、生産部棟、調理部棟を建ててあげた。おかげでより一体感が生まれたような感じがしたのでよしとする。
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「おや、どこ行くんですかい?」
「おう、ちょっと身体動かしに行ってくるわ。」
「そうですかい。それじゃあお気をつけください。まぁテノン様には心配は無用ですかね!」
この大きな声で話すのが警備部の部門長のガントだ。こんなんだが、部下は大事にするし、みんなにも慕われている男だ。
「お前は相変わらず声がでかいな………。ほれ、早く開けてくれ。」
ガントは近くにあるボタンを押す。そうすると壁に穴が開いて、人1人が充分通れるようになる。
俺はガントに手を振りつつ。遠くに見えるゾンビに向かって走っていく。
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さてまずこの3ヶ月で俺は自分自身がどこまで戦えるのか試してみた。まぁ結果としては地球にいた頃より多少動けるかなっていうくらいだ。ただしそれは何もしなければだ。
創造の力に付与という形がある。俺はそれが物だけではなく人にも出来るのではないかという事に気付いた。そもそもこの力の本質は創造だ。つまり想像さえ出来ればそれは実現する。もちろん神力の持つ範囲でだが。ともかく俺は自分に付与を試してみた。イメージとしては細胞一つ一つを神力で覆う感じだ。すると俺の各身体能力は人外レベルに達した。走ろうと踏み込めば地面は大きく窪み、走ると強風が吹く。こんだけ力があればノロマなゾンビ相手なら戦闘なんぞしたことのない俺でも倒せる。ちなみに銃は使っていない。いちいち銃弾を創造するのも面倒だし、近接で戦った方が神力の消費も少なくて済む。更にこの付与『身体能力向上』はとんでもなく優秀だった。速すぎて、銃弾なんかより速いのだ。これなら多少の接近のリスクがあっても近接の方が継戦能力があるし、このスタイルでいくべきだと思い至ったわけだ。
ちなみに俺の獲物は刀だ。まぁ理由はかっこいいからだ。もちろん刀は俺の全力を注いだ。まず材料がこの世界にないものだ。神力を圧縮して固体にするようイメージして何日もかけてインゴットを創造。そしてそれを変形させて刀の形に整え、『硬質化』、『自己修復』を付与している。もちろん他にもその場に合わせて様々なものを付与できる。ちなみにこいつの切れ味は鉄をバターのように切り裂く。俺の頼れる相棒だ。
「アガァァァァ」
「ウゥゥゥゥ」
「まーた増えてきたな。早いとこ発生源見つけないとなー。」
シュン。サクッ。シュッ。
喋りながらゾンビをどんどん切り倒していく。ちなみに我流だが3ヶ月間鍛錬は怠らず、ガントには多少剣の心得をあるそうなので指導を受けたので多少はマシなはずである。
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「やっと終わった……。」
100体以上居たのではないだろか?周りは倒されたゾンビの山が出来ている。
「よし、今日はもう帰るか。えーと帰ってからマガジンと水と生活必需品の補給か。なんとかして少しでも生産体制整えたいな。」
どうやら俺の忙しはもうしばらく続くらしい。




