チョットした思考実験(魔王と呼ばれた男β版)
問、主人公に自分の名前をつけたら自己投影できるか?
とある地方都市の高校の昼下がり、その男にとっては最悪の、不良達にとってはありふれた日常の時間がやって来た。
髪を金色に脱色させニワトリのトサカの様に逆立てた、いかにも頭の悪そうな奴が一人の少年に声を掛ける。
「おい、武臣遊ぼうぜ」
「えっ…… いや……」
「俺の言う事にはハイかイエスの選択肢しかねぇ!!」
武臣と呼ばれた男は、前蹴りを喰らい教室の後ろに引きずり出される。
それは、この学校ではありふれた日常であり、周りに居た生徒はとばっちりを受けるのはごめんだと言わんばかりに、まるで蜘蛛の子を散らす様に散っていき、あっと言う間に教室には特設ステージが作られた。
「ラウンド1 ファイトwww」
半笑いで不良の腰ぎんちゃくらしき男が宣言すると、強制的に戦闘が開始された。
「いくぜぇ、パーンナッコォ」
パーンナックルは大人気格闘ゲーム遅漏伝説の自由騎士パーンの使う技だ、見た目は派手だが痛くは無い。それは分かっちゃいるが俺の足はすくんで動かなかった。
「ひっ、ひぃ」
武臣の手は条件反射の様に動き、顔の前で腕を交差させる。
「うわっダセっ、こいつビビッてやんのwww」
「ああん、誰がガードして良って言ったよ!?」
「兄貴、俺達が押さえとくんで、アレやっちゃいましょう」
「おお、それは良いな」
「やっ……、やめ……」
「暫影拳!!」
アホは肘を突き出し教室の床を蹴る。あの技のモーションはパーンの弟エトの技だ。あれはマズい――その肘は武臣のみぞおちに下から突き上げる様に突き刺さり、武臣は数分前まで昼食だった物体を教室に吐き出した。
「うぇぇっ」
「ひゃひゃひゃ、きったね~ ゲロ吐いてやんの」
武臣は、すえた臭いを発しながら湯気を立てるゲル状の物体の前にうずくまり、嗚咽だけは漏らさない様に懸命に堪えた。それでも惨めで、悔しくて、でもやり返したくとも足がすくんで動かなくなる体を呪い、一筋の涙が頬を伝う。
どうしてっ、どうして体に力が入らないんだ。
何故、目から涙が止まらないんだ。
悔しい、動けよ俺の体、
立ち上がってアイツの顔面をなぐれよぉぉぉぉ。
そんな武臣の思いと裏腹に、体は動く事は無かった。
「うっ……、ううっ……」
「あ~ 面白かった、行こうぜ」
「おい、武臣、みんなの迷惑になるから、そのゲロ片付けとけよ。自分で出した物は自分で掃除するのは常識だよなっ!?」
「ひゃひゃひゃ、兄貴どんだけぇ~」
くそっ、殺してやる。そこで汚物を見る様な目で俺を見ながらヒソヒソ話をする女子も同罪だ。何故だ、これだけ人が居て誰も助けに来ないんだ。弱い者を助け強きを挫くと親から教えられなかったのか?
「おい、武臣大丈夫か?」
これが大丈夫に見えるのか? 見えるなら一度心療内科に行った方が良い。
貴様のそれは罪悪感だろ、悪いと思う位なら何故助けなかったんだ。
人間は困った時には助けてはくれない、どこまで行っても人は一人だ。そんなクソみたいな種族は滅んでしまえば良いんだ。敵・敵・敵、俺の目に映るヤツは俺を助けない。そんな奴は全て敵だ、みんな滅んでしまえば良い。
武臣は差し出された手を振り払い教室の外に駆け出した。
向かった先は誰も寄り付かない化学準備室、武臣は制服のポケットからよれよれのルーズリーフと護身用に常に携帯していたカッターナイフを取り出した。ルーズリーフには鉛筆で幾何学模様とルーン文字が刻まれていた。それはオカルト雑誌、月刊モーに載っていた悪魔召喚の魔法陣だった。
武臣はカッターナイフで指を切りつけ、うっすらと血の滲む指で幾何学模様の下書きをなぞった。
「来い、悪魔よ。この地球上の全ての命をくれてやる。だから俺に力をよこせ!!」
ルーズリーフに書かれた幾何学模様が光出し、風鈴の音の様な乾いた音と共に世界は暗転した。
「ふふふ、あなたですか私を呼び出した人は、対価が全ての生命とは豪気ですね。今の私は神でも倒せそうな位に力が充実しています。とても気分が良いので何でも願いを言って下さい。大体の事は叶えて差し上げますよ」
俺は悪魔を召喚したのだから、目の前に居るやたら顔の整った怪人は悪魔なんだろうな。そして奴の話では神が居るらしい。俺がこんなにも苦しんで居るのに神が居るなら何故助けない。まだ目の前の悪魔の方が現れただけでもマシじゃないか。憎い、神とやらも同罪だ。等しく滅びを与えてやる!!
「もし、俺が神を殺したいと言ったら協力してくれるか?」
「ふふふふ、実にイイ!! 実にマーベラスだ、こんなにも心が躍る事が今まで有っただろうか? いや無いかもしれない。私はあなたを気に入りました。その願いを叶えるための助力は惜しみませんよ」
ふむ、目の前の悪魔の力を持ってしても神を殺すのは難しいと解釈すればいいのか?
「さっき神を倒せるかもと言って居たが今のままじゃ無理なのか?」
「始めに複数の世界で神と悪魔で陣取り合戦をしているものだと考えてください。この世界の生命は私が全て平らげましたが、神が管理する世界は後5個ありますからね。今の所少し神の陣営の方が有利と言うところでしょうか? それに私たち悪魔に神を倒す事は出来ても殺すことはできません」
「神を殺せない理由は何だ?」
「悪魔とは神が自分に似せて作った生命体の内、神の意志に合わなかった者を言います。神に作られた者は神を殺せないと言う制約が掛かっています」
「つまり天使だった者が堕天したと言う事か? それで悪魔はとどめを刺せないと言う訳か」
「同じ世界に存在するので堕ちた訳では有りませんが、幾つかの勢力に分かれて争っていますね。神を殺せる可能性が有るのは、神に見放された人間界に居る人間だと言われています」
「ほお、俺達は神に見放されたか」
「神は今から100年位前に神の想像を超えて力を持ち始めた人間達を隔離しました。私はその時に逃げ遅れてこの世界に取り残された存在ですね」
100年前と言うと世界大戦が有った頃か? その悲惨な戦場を見て自分に刃が向かないように世界を閉じたのか。
「まるで飽きたおもちゃを捨てるようなものじゃないか。神とはなんと傲慢な物か、滅ぼすには何をすればいいんだ?」
「我々が強くなる事と、他の勢力をまとめ上げて神の勢力との均衡を崩す事です」
「じゃあ行こうか。俺の名前は星武臣だ、お前の名前は……」
「ルシファーです我が主よ」
「ん? 主になると言った覚えはないぞ」
「神を殺し成り代わるのなら新な主と言っても過言ではないでしょう?」
「ふむ、そう言う物か、まず俺たちは何をすべきか?」
「そうですね、知能を持たない畜生界のベルゼブブか天界の下層部に居るアスモデウスを配下に入れるか滅ぼして我々の血肉にするのがよろしいかと」
「それでは天界とやらを覗いてから畜生界に行くとしよう」
解、ペンネームじゃ無理だ。と言うか餓狼伝説を遅漏伝説ともじった時点で噴出してしまい、それどころでは無くなったな。
読んで居る奴が気持ち悪くなる位描写しないと小説としては駄作だな。ちょっと太宰治でも読んで勉強してくる。目標は「気持ち悪いけど何故か読んじゃう」だな。
もし、良いなと思ったらネタをパクっても良いからな。
それから、残影拳はマジで効くから良い子はマネしちゃダメだぞ。