組合
7
串を食いながら塔周辺に戻る。
串は甘ダレの効いた懐かしい味だ。美味い。また買おう。
串と紙袋を道端のゴミ箱に捨て、言われていた神殿のような組合に入る。
組合内の右手にはでかい掲示板に所狭しと紙が貼られ、それぞれクエストが書かれていた。
『求む! スラカトル蝶の触覚! 1本300ポイント!』
『15階ボス掃討! パーティメンバー募集!』
等である。
マジマジと眺めていると1つ気になるクエストを見つけた。
『スライムオイルを譲って! 1本500ポイントで』
結構レアアイテムなのか?
しばらくこれで稼げたらいいな。
そう思いながら、奥のカウンターへ進んだ。
カウンターには女性の受付がいた。
「ようこそ組合へ。あら、新人さんかしら?」
見ただけでわかるのはなんでだろう?
そういう能力があるのか、見たことの無い顔だからか。
「ああ、昨日来たばっかりなんだ。ここについて聞きたい」
「わかりました、簡単に説明いたしますね。あちらのテーブル席でお待ちください」
俺は掲示板の反対側に沢山あるテーブル席の1つへと向かう。
周りには沢山の人がわいわいと何かを飲んでいる。
酒か何かかな?
しばらくするとさっきの受付の女性がやってくる。
普通に美人だが、違和感。
耳が大きい。エルフか。
「珍しいですよね。そちらの世界から来た方は皆様そう言われます」
マジマジと見過ぎだ。
「済まない」
「慣れてますから」
ニッコリと笑顔でそう言った。
「さて、では御説明をさせていただきます。私はエミリ、組合のスタッフをさせていただいております」
「俺はシロウだ、よろしく。早速だけどクエストについて聞きたい」
「わかりました。クエストは基本、自由に発注、受注することが出来ます。発注の時はこちらに直接来てください。受注の時は紙を剥がしてこちらに持ってきてくださいね?」
「わかった」
「クエストは冒険者に不足するアイテムやパーティメンバーの募集、人探しなどにも使われますね。ただし、アイテムの売却相手を募集することは出来ません」
「何故だ?」
「それを発注した人が亡くなった場合、組合にアイテムがあると何かともめる原因になるためです。組合はポイントのみ預からせていただきます」
確かにそうだ。レアアイテムとかなら尚更だな。
「発注には10ポイントと依頼達成のポイント、受注には100ポイントがかかります。ただし、クエストが成功すれば、受注のポイントは返還されます。つまりは保険金みたいなものですね。無理なクエストは受けないようにお願いしますね?」
「なるほど、ありがとう。他にここで出来る事はあるのか?」
「こちらでは、不要なアイテムを回収しています。基本的にどのようなアイテムでも何かしらの役に立つ物ですが、やはり余って売れないものもあります。それらをこちらで回収し、微量ですがポイントへと還元いたします」
「やはり取引した方が得、って事か?」
「そうですね。もしくは自分で使うのがいいかと」
そう言われて、ふと水晶を思い出す。
必ず落としたコレは何かに役に立つのではないか?
俺は『収納』から水晶を取り出し、エミリに見せる。
「水の水晶ですね。こちらはアイテム合成や簡易的な武器への属性付与が出来ますね。合成については私は詳しくありません。錬金術師や調理師の職業の方が詳しいでしょう」
「なるほど、職業のスキル上げに必要そうだな」
「そうですね。属性付与の方はそのままの意味です。水の水晶なら剣に水属性を付与することが出来ます。ただし約10分程で効果は切れるので注意が必要です」
「わかった、ありがとう。他には何かあるか?」
「こちらは以上ですね。これからもよろしくお願いしますね」
「よろしくたのむ」
俺は立ち上がり、受付に頭を下げる。
そういえば、スライムオイルの依頼があったな。
一本からでも平気だろうか?
俺は掲示板に戻り、もう一度依頼を確認する。
特に条件は無いな。受けてみよう。
紙を剥がし、先程の受付が待つカウンターへ並ぶ。
「あら? 他にも何かありましたか?」
「ああ、いや、この依頼を受けたい」
「早速ですね、わかりました。少々お待ちください」
受付は何やら呟いて、誰もいない方へ向き、会話を始める。
何をしているんだ?
「おまたせしました。それでは少々あちらのテーブルでお待ちください、依頼主が来ましたらご連絡いたしますね? 次の方ー」
受付は忙しそうに次を呼んだ。
とりあえず後で聞こう。
言われたテーブルに着き、飲み物を注文しようとウェイターを呼んだ。
ここにもコーヒーがあるようだ。
あの時はブラックだったけど、砂糖やミルクも欲しいな。
ウェイターが持ってきたコーヒーには、今回は希望していた砂糖もミルクもある。軽くテンションが上がる。
俺は両方とも入れ、スプーンでかき混ぜ、口を付けた。
美味い。
コーヒーはブラックも良いが、少し甘いぐらいが俺は好きだ。
そんな一人コーヒー通を気取っていると、
「や。また会ったね!」
と、長い尻尾をユラユラとさせながら、ミラが同じテーブルに着いた。
ありがとうございました。