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エンカウント

 スライム。

 イメージしてるゲームのかわいい奴なんかじゃない。

 丸いのは丸いが、色が紺色で濁っている。

 敵だとはわかるので、腰につけた剣を抜き、構える。

 これでこいつが人間です、ってなれば即地獄行きなんだよな。など、つまらない事を考えてると、目標としたスライムがこちらへ寄ってきた。

 ゆっくりとしたスピードだと思った次の瞬間、視界から消える。

 上から来る!

 反応が遅れ、スライムの体当たりを顔面に受けてしまう。

 俺は仰け反り、それでも剣を適当に振った。

 軽く一撃当たった感覚があったが、浅い。

 態勢を立て直すために三歩下がり、いつのまにか止めていた息を吐いた。

 スライムはダメージを感じさせない動きをしている。

 まあ、弱った動きがどういうものかもわからないが。


 エンカウントしてからどれぐらい経ったのだろう。数分か、数時間か。

 俺の上段からの斬りかかりをスライムは左に避ける。

 これで何度斬りかかったかなんて覚えていない。

 逆に体当たりは4回食らった。

 最初の顔面、腹に3発だ。

 ダメージは大したことは無いが、そろそろ呼吸がやばい。

 剣を振るたびに力が入る。その時に息を止めているため、かなり呼吸が苦しい。

 深く息を2回吐く。

 呼吸は吐くのを意識した方が楽だというのを聞いた事があったが、本当のようだ。

 いい加減に決めないとまずいな。


 一か八か、剣を中段の構えから、バットを持つように半身に構える。

 スライムは俺の左脇腹を狙い体当たりしてきた。狙い通り。

「それを待ってたんだよ!」

 俺は、半歩左斜め前に進み、剣を振る。

 内角低めのストレート、フルスイングだ!

 スライムはスイングの威力で2つに分かれ、消えた。


 高校3年間、野球に費やした時間は無駄じゃなかったな。

 もちろん強豪校でも何でもない、名も知られていない弱小校だったけど。


 息を整えて、スライムの居た場所を見る。魔物は倒すと綺麗に消えるんだな。

 更によく見ると、何かが落ちていた。綺麗な水色の……ガラス玉?

 気になるので『鑑定』を使い調べてみた。

 俺は水の水晶、を手に入れたようだ。


「何に使うんだこれ?」

 後で誰かに聞けばわかるか……

 俺は『収納』を唱え、そこに水晶を放り込んだ。


 次を連続で相手にするのは少しやばめか。

 床に座り込み、少し休憩する事にした。


 塔内に走る風が気持ちいい。

 久々に運動したな。

 2年はベッドに縛り付けられていたから、運動したという事実だけで充実感が凄い。


 ふと上を見上げる。 

 天井は見えない程に高い。

 今、外はどれぐらいの時間が経っているんだろうか?

 昼までまだ時間はありそうだ。

 もう1戦行ってみるか。

 そう思って立ち上がる。

 幾分か体力が戻っている感じがした。

 行けそうだな。

 手のひらを握ったり広げたりしながら、握力の落ちていない事を確かめた。


 2匹目はすぐに見つかった。

 『鑑定』結果も同じ、スライムだ。

 ならばさっきの手を使おうか。

 ……しかし今度はこちらにまだ気がついてない様子だ。こちらに近寄る気配がない。

 チャンスだ。

 ゆっくりと近付きながら、剣を構え、思いっきり振り下ろした。

 縦に真っ二つになり、スライムは消えた。

 後に残るのは水の水晶。

 それと液体入りの小瓶だった。


 さっきは落とさなかったけど、何だろう?

 早速、『鑑定』を使う。

 スライムオイル、らしい。

 アイテム鑑定には名前だけで詳しい効果等は出ないんだろうか?

 これも、水晶と一緒に『収納』した。


 それから3回程スライムと戦い、入口へと戻る。戦利品は水晶5個と、オイルは1個だ。

 そろそろ昼メシの時間だろう。

 何を食べようか?そもそも料理の名前と実物が一致しないし、味がわからないんだよなあ……


 入口は相変わらず人が多かった。

 そこにフワッとなにか美味そうな匂いが漂ってきた。

 これは、焼き鳥か?

 釣られるように匂いの方へ引き寄せられた。


 匂いの先には、屋台のような、屋台にしてはもっとしっかりとした店があった。

 そこには、犬型の獣人が丁寧にうちわで串焼きを扇いでいた。

「ララニー鳥の串焼き、15ポイントだよ」

 近寄ると獣人はそう言った。

 150円ぐらいか。高くはないな。

 ララニー鳥がよくわからないが、ニワトリと大差ないだろう。

「3本くれないか?」

「わかった、45ポイントだ」

 支払いを済ませると、焼いていた串をもう一度タレに付けて焼く。ニンニクのような匂いがたまらない。

 焼き終えた串を、小さな紙袋に入れて渡してくれた。

「お待ちどう様。お客さん、新人かい?」

「ああ、そうなんだ。何か教えてくれないか?」

「そうだな……組合には行ったかい?」

「組合?」

「そう。塔の近くにある神殿みたいな建物さ。そこにはクエストなんかも受注できるから、塔で稼ぐのがより効率的になるぞ」

「そうか、ありがとう」

 これ以上聞くと商売の邪魔になると思い、その場を退散する。


 何より串が美味そうで早く食いたいんだ。


 

いつもありがとうございます。

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