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クジラ亭

 明るかった大通りも、すっかりと陽が落ち暗くなってきた。

 この世界には電気のようなものは無いようで、このままではすぐに真っ暗になるだろう。

 俺は足早にクジラ亭へと向かった。


 入口にかかる看板、文字は見たことがないが、それが何故かクジラ亭だとわかるのは、基本的な能力か何かだろうか?

 そう考えながら中に入ると、一人の男がカウンターで腕を組み立っていた。

「泊まりか? 夕食、朝食付きなら300、朝飯だけなら250だ」

「ミラの紹介で来た。夕食も頼む。この世界には風呂はあるのか?」

 愛想が悪そうな雰囲気を出していた店員だったが、ミラの名前を出した瞬間、表情が少し緩んだ。

「うちにあるぞ。共用だがな。風呂も込みの料金だ」

 俺はポイントを男に払い、代わりに部屋の鍵を受け取った。

「部屋は二階、食事と浴場は一階だ」


 二階の奥にある部屋に入り、防具をはずし、机にならべる。そのあとすぐにベッドに身体を預けた。

 病院のベッドと違い、とても気持ちいい。このまま寝てしまいたい。そんな気持ちと少し戦う。

 とりあえず食事を摂って、風呂に入る。今日はそれで終わろう。

 ……よし。

 俺は最後の気力でベッドから離れた。


 食事は相変わらずよくわからない材料だが、美味い。風呂も共用だから狭いのを覚悟していたが、とても広かった。

 おかげで1日の疲れが全て取れた感じだ。

 ……寝たい。だが、やっぱりこれだけは確認しなきゃダメだろう。


 俺は剣を構えてみた。

 剣の重さは意外と感じない。

 切れ味は試していないが、刃の感じから切るというより叩き潰すのが近い感じだろう。

 剣道は幼少期に少し。必死にその時の記憶を思い出しながら、色々構えを試してみる。

 どんな魔物が出るんだろうか?

 最初から強いのは出てこないだろうが、やはりそこが不安だ。

 明日、塔に行ってみよう。

 初戦闘だ。

 こうしているうちにも時間は過ぎる。1年経てば税金まで取られてしまう。

 ゆっくりはしてられないんだ。

 覚悟が決まった。今日は休もう。

 剣を鞘に納めると、ベッドに入った。

 その日は何も考えずに寝る事が出来た。


 翌日。

 朝食を済ませ、装備を整え、カウンターへ向かう。鍵を返すためだ。

 昨日の男が今日もそこに立っていた。

「ミラによろしくな。これを持っていけ」

 男は黒くて丸いものを3つ、俺にくれた。

「回復薬だ。必ず役に立つ」

「ありがとう、またくるよ」

 俺は軽く頭を下げてクジラ亭を出た。


 陽は少し上がったぐらい。地球時間なら9時前ぐらいか。

 さあ行こう。

 俺は塔に向かって歩いて行った。


 30分程歩いただろうか?

 塔の入り口に着いた。

 元々賑やかな街だが、一層ここは賑やかだ。

 出店なようなものも出ている。売っているのは戦闘時の消耗品か何かだろう。クジラ亭で貰った回復薬も山積みに置かれている。

 他にも取引をしている様子も見られるから、戦利品売却などはここでも出来そうだ。

 とりあえずここに用事は無い。

 俺は塔の中へと進んだ。


 塔の中は意外にも明るい。窓の類は一切無い筈なのに不思議なものだ。

 少し行くと右手に文字と、その下に四角くぼんやりと光を放つものが見えた。

 文字は、

「階層転移装置、10ポイント消費」

 とあった。

 ふむ、何となくわかるが、不親切な説明だなあ。そう考えながら見ていると、後ろから声をかけられる。


「行かないの? ならどいてくれない?」

「これは失礼した。どうぞ」

 俺は装置を譲る。

 ローブを纏い、大きな杖を持つ女は、装置の前に立ち、

「12階」

 と告げ、四角い光に手をかざした。

 瞬間、女の姿は消えた。


 なるほど、言った好きな階に行けるのかな?

 試してみよう。

 装置の前に立ち、

「5階」

 と告げ、同じように手をかざした。

 ……何も起こらない?

 何故だろう?


「どうした? 装置の故障か?」

 唐突に後ろから声をかけられ、軽く驚いた。

「ああ、使い方がわからないのか?」

「いや、それはなんとなくわかったんだが、転移出来ないんだ」

「ちなみに、行った事の無い階層には飛べないぞ?」

 なるほど、そういう訳か。

「そういう事か。初めてでわからなかった。ありがとう」

「良いよ。お互い頑張ろう」

 男は手を差し出してきた。

 俺はそれを握り返す。


 装置に今の所は用はない。

 なら先に進むしかないな。

 俺は更に先へと進んだ。


 道が開ける。

 部屋、になるのか?

 その割にすごく広いが。

 その部屋に、明らかに人型じゃないモノが……蠢いている、という表現が正しいのか、確かにそこにいる。


「とりあえず、『鑑定』」

 蠢くそれが何かわからないのは怖い。

 遠目に『鑑定』しておくのが正しいだろう。


 人型じゃないものは、スライム と表示された。

 間違いない。魔物だ。

ありがとうございました。

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