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防具屋ミラ

 大通りを歩く。

 沢山の人が行き交っている。

 よく見たら、人間だけでは無いな。

 不思議とそれを当たり前に眺めた。

 だが、いきなり話しかけるのも、失礼だし、ジロジロ見るのも、な。

 あまり気にせずに、とりあえず塔を目指しながら進んでいった。


 ふと、右手の方に防具屋が見つかった。

 鎧がディスプレイしてあるので、すぐにわかった。

 俺は迷わず防具屋へ入っていった。


「いらっしゃい! お、新人さんだね? とりあえず服を選んでくれよ。どんなのがいい?」

 店に入るなり、ショートカットのツリ目の女の子がそう言った。

 今着ているのはスーツだからなあ……そうだな、言う通りにしようか。

「そうだな、動きやすいのを頼んでいいか?」

「了解! ちょっと待ってくれよ!」

 そう言って彼女はクルリと服の方へ向かった。

 ……ん?尻尾?

 よく見れば長い猫のような尻尾が彼女には生えている。更によく見れば、頭にも猫のような耳が。

 さっきも通りでみたな……ついでに聞いてみようかな。


 視線に気がついた店員は、笑顔でふりむく。

「なんだい? やっぱお客さんの世界だと獣人は珍しいかい?」

「ああ、初めて見たよ。俺はシロウ。よく見ても良いかな?」

「僕はミラだよ。良いよ。ただ尻尾は触らないでくれよ?」

 マジマジと耳や尻尾を見た。本当に生えてるんだ……

「あんまり見られると照れるなあ」

 おっと……そう言われて半歩下がる。


 ……ん?

「ミラさんは……」

「ミラで良いよ、シロウ」

「そっか。ミラは女なのか?」

 ミラは大袈裟に態勢を崩した。

「どう見たって僕は女だろ!」

 尻尾をピンと立ててミラは怒ったふりをしている。……可愛いな。

「すまなかった。お詫びと言っては何だが、この世界の情報を売ってくれないか? そうだな、防具代に50ポイント上乗せでどうだい?」

 タクミに聞いてない事も聞けるかもしれないし、詫びにもなる。一石二鳥だ。

「いいよ。まあ『プロミス』も要らないよねー?」


 ……ん?

 今、『プロミス』って言ったな。

 聞き間違いか?


「今、『プロミス』って言ったか? 『約束』では無いのか?」

「ああ、簡単な事は教えてもらってるんだね。そうだよ、呪文は種族によって違うんだ。でも僕が『約束』って言っても発動するし、シロウが『プロミス』って言っても大丈夫だからね。大きな違いは無いよ、言いやすい方を使うといいよ」

 そうなのか。咄嗟の時にどちらが出ても大丈夫なのは助かるな。


「あ、これとかどうかな、ちょっと着てみてよ」

「あ、ああ」

 渡してきた服を持ち、試着室らしきものの中へ入る。

 服の素材は生前のものと変わらない感じ、少し柔らかいか。

 色合いは薄い茶色か。問題ないな。

 着ていたスーツを脱いでいく。

「着ていたスーツは下取りするよ。現世の物は価値が高いんだよ。どうする?」

「ああ、もう着ないし頼むよ」

「了解だよ。着心地はどうだい? サイズは大きめにしといたけど」

 新しい服に着替えた。

 不思議と体が軽い。

「一応その服は筋力アップの効果があるんだ。体が軽いだろ?」

「服にはそんな効果があるのか?」

「そうだよ。他にも知力アップとか、スキル効果アップとかもあるよ。『鑑定』でわかるからね」


 着替え終わって試着室を出る。

「うん、似合ってるよ!」

 ミラが笑顔で迎えてくれた。

「これにするよ。あと、身体を守るものはあるかい?」

「そうだね……まあ、皮鎧と盾かな。ちょっと待ってね」

 ミラは店の奥に行った。

 飾ってある鉄鎧はダメなのかな?


 しばらくすると両手に防具を抱えてミラが出てきた。

「付け方は簡単だからすぐに慣れるよ。こことここを留めて……」

 ごそごそと鎧を着せてくれるミラ。

 ちょっと恥ずかしいな。

「これでよし。うん、かっこいいよ!」

 思ったよりも動きやすい。

 これも装備の効果なのかな。

「これにも筋力アップが付いてる。あと敏捷アップもね」

 少し素早く動けるのは助かるな。

「あとは軽い盾を一つ。気休めだけどね」

 ミラは笑顔でそう言った。


「で、他に聞きたい事は何だい?」

「何だろう?」

 また大袈裟にミラは態勢を崩した。

「そうか、新人だもんね。わからないことがわからない、か。なら、さっきの情報代はいらないよ。また買いに来てくれたらそれで良いや!」

「色々すまないな。じゃあこれのお代は幾らになるんだ?」

「スーツが2000買取の、防具代3000、しめて1000ポイントでいいよ」

 俺はタクミに教えてもらった方法で、ミラにポイントを支払った。


「ところでシロウ、今日泊まる場所は決まっているのかい?」

 そういえば考えてなかった。

「まだ考えてないな」

「ならこの先のクジラ亭に泊まるといいよ。僕の名前を出せば一品ぐらい食事が良くなるんじゃないかな?」

 にしし、と聞こえるような顔でミラはそう言った。


「ありがとう、行ってみるよ」

 俺はミラに手を振り、クジラ亭へ向けて歩き出した。

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