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タクミ

よろしくです。

 世界について沢山のことがわかってきた。

 魔法の存在する、剣で戦う世界。

 ポイントを稼ぐ目的、手段、そして使用法。


 「ポイントを確認するには、『残高』の呪文だ。それで左腕に表示されるはず」

 飯を食いながらタクミは教えてくれた。

 確認すると150000という数字が並んでいた。これが俺のポイントだろう。

「使用する時は『残高』のあとに『使用』の呪文だ。呪文のあと相手に左手をかざせ。そうすると相手が提示した額が自動的に引かれるって仕組みだ」

「詐欺は無いのか?」

 タクミはその問いにも笑顔で答える。


「一切の犯罪行為に当たることは、この世界では厳禁だ」

「まさか……」

「そう、犯罪を犯した瞬間に、地獄に直行、さ」


「てな訳で、新人でも安心して宿や食事にありつける。大体、安宿の概念もない。宿屋は一律の料金だぜ?」

 タクミは笑いながらそう言った。

「そうなのか……ちなみに他人へ危害を加えた場合は?」

「傷なら直ちに治る。死んでも痛みはなく生き返る。精神面の痛みは少し前の記憶に巻き戻されて、無くなる。何より自分を犠牲にして相手を刺したいか? 無いだろう? 何の心配もないさ」

 加害者だけそんな不利益を被る事を、わざわざする人間はいない、か。


「ところで、このポイントは自分以外に見る事は出来るのか?」

 俺はポイント表示を指差してタクミに尋ねた。

「出来ない。俺はその方法を知らないな」

 タクミの言葉に嘘は無い。つまり一般的に相手のポイントを知る方法は知られていないということか。


「あとはそうだな……職業とレベル、だな」

「いよいよゲームみたいだな」

 タクミは苦笑いを浮かべている。

「そうだな。『状態』って唱えてみな」

 言われて頷き、呟く。


 目の前に半透明のウィンドウが浮かび、タケザキシロウ 初級者 レベル1 状態異常無し と映し出された。

「初級者、になってるだろう。これが最初の職業だ。特に使えるスキルや魔法はない。レベル10で『手当て』が使える。手当ては体力を微量回復してくれる。なお、初級者はレベル10までしか上がらない」

「つまり、そこで職を変えることが出来る?」

「その通りだ。初級者レベル10になった時点で転職が可能になる。職業変更場に行けばどんな職業でも自由に変更できるんだ。一度選んだ職業でも合わないと思ったらすぐに違う職業に変更する事が出来る」

「ちなみにレベルはどうなる?」

「職業ごとに上げた分だけ据え置かれる。戦士で10上げた後、魔法使いを経験して、また戦士に戻しても、10からのスタートになるぞ」


「職業の違いは?」

「それは色々と試してみるといい。一言には言えないな。あえて言うならば……生前時の得意とする分野の職業が天職となるだろうな」

 生前時か……得意分野は野球を少しと、ジム通いかな……何に役立つだろう?

「まあ、迷うより慣れだよ」

 タクミは笑いながらスープを飲み干した。


 一通り食事を摂り終わる。

 食器を下げ終わったウェイトレスが、黒色の飲み物を置いていった。

 せっかくなので飲んでみた。

 美味い。コレは……

「コーヒーか」

「そうなんだ。他の食べ物の名前は違うけど、これだけはコーヒーなんだ」

「懐かしいな……」

 ふと、涙が溢れた。

 ああ、そうか。死んだのか。生前2年以上も味わえなかったコーヒーの味だ。それを今こうして飲めている。その事実が今、現実となって思い知らされた。

 情けなく泣いている俺を前に、あれだけおしゃべりだったタクミもこの時だけは静かだった。


「さて、これからどうする?」

 ウェイトレスに支払いを終えたタクミが聞いてきた。

「そうだな、まずは着替えと武器が欲しいな」

「そうか。ならば餞別だ。『収納』」

 タクミがそう呟き、空間から一本の剣を取り出した。

「ロングソード、だ。武器は戦いで壊れる事は無いが、持っていて損は無いだろ? あと『収納』の呪文だ。唱えた後空間が出来、そこにアイテムを入れることが出来る。容量は測った事は無いが、一杯になった事は無い。取り出す時はイメージするだけでそれを取り出せるぞ」

「何から何まですまない、ありがとう」

 俺はロングソードを受け取り、タクミに手を差し出した。

 力強く、タクミは握り返してきた。

「また、会おう」


 俺はタクミと別れ、防具屋を目指した。

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