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世界の基本

相変わらず短くなってますが、さらっと読んで頂けたら幸いです。

 明るい。

 ざわざわと人の話し声が聞こえる。

 ここは……


 視界に飛び込んできたのは、沢山の人。家。街並み。

 あの暗い空間からどうやって飛ばされたかわからないが、どうやら俺は街の真ん中にいるようだ。


 どうすればいい?なにをすれば……

 そう考えていると1人の男が話しかけてきた。


「あんた、新入り、だな?」

 口ひげを生やした男だった。

「何故わかる?」

「そりゃその格好を見ればわかるさ」


 ふと自分の服を見る。

 生前のスーツか。

 それに比べて男は、薄汚れたシャツに何か皮で出来た鎧のようなものを着けている。


「色々教えてやろうか? 勿論対価はいただくが」

「対価?」

「そう、ポイント、だ。案内人から聞いただろう?」

 ポイント……そもそもそれがよくわからない。

 感覚的にではあるが、何もかもわからないのは、この世界では致命的である気がする。

 ここは話を聞いた方が良いのだろう。


「わかった、教えてくれ」

「オーケー。とりあえず立ち話もなんだから、そこの店にでも行こう。そこの払いは俺が出すよ」


 煉瓦造りの建物に入ると、沢山の机とそれに座り食事をとる人々がいた。

 1つの机に目をやると、何やらスープなようなものや、肉を焼いたもの、サラダのようなものが並んでいる。

 ここは定食屋のような所だろうか?

「まあ座りなよ。好き嫌いはあるかい?」

「特には」

「じゃあ任せてくれ」


 男は店員らしき人を呼ぶと、慣れたように注文していった。

 料理名は何一つ聞いたことのない名前だった。


「まず、話す前に決める事がある。これから教える事は全部で30ポイントだ。勿論質問にも知っている範囲で全て答えよう。知らない事は答えられない。あと嘘は無しだ。質問がなくなった時点でポイントの支払い。それ以降の質問は無し。これで良いかい?」

 違和感。何故そんなことを言い出すのか?

 それがルールなのだとしたら、ここは従うのがいいだろう。

「ああ、それで良い」

「よし、『約束』だ」


 瞬間、薄く青い光が目の前に映る。

「そのまま、『約束』と言うんだ」

「『約束』」

 更に光が一瞬強くなり、消えた。

「ようこそ地獄の一丁目へ。さて、何から話そうか?」

 男は笑顔で両腕を組み、前屈みで俺の顔を覗き込んだ。


「まずは、そうだな……この世界はRPG、ロールプレイングゲームのような世界だ。剣や魔法で敵と戦う様な、そんな感じだ。俺の名前はタクミ。お前と同じ日本出身だな。お前は?」

「俺は、シロウだ。なんで出身がわかった?」

「まてまてシロウ。まずは『約束』の呪文の仕組みを話そうか?」

「……頼む」


「『約束』は誰でも使える契約の呪文の一つだ。ルールを決め、互いに納得すればこれが成立し、お互いの利益になる。絶対に契約は破られない。何故なら破れば即地獄行きだからだ。やり方はさっきの通りだ。ルールを提示して呪文を唱える。相手も同じく呪文を唱えれば完成だ」

「……わかった」

「次、行ってもいいか?」

「ああ、なんでもいい、少しでもこの世界について知りたいんだ」

「そうだよな、俺もそうだった。では出身がわかったのは何故か、教えてやろう。『鑑定』の呪文だ」


「『鑑定』は文字通りだ。物や人などについて調べる事が出来る。ただし人の名前はわからない。出身と性別、職業ぐらいか。試しに俺を『鑑定』してみろ」

「わかった……『鑑定』」


 そう唱えると、タクミの胸のあたりに四角い、そう、窓のようなものが見えた。そこには出身日本、男、職業戦士レベル27、等のタクミのパラメータが見えた。


「どうだ?見えたか?」

「ああ、すごいなこれは……」

 何というか、これだけでもう世界が違う事を再認識させられた。

「物にかけると価値もわかる。ポイントが表示されるんだ。だが、通常店に並ぶものはこの表示より高く売っている。表示のポイントは売値だと思っていい。その値段で買い取ってくれるのが一般的だ」

「なるほど、これも商売、というわけか」


「基本的な呪文は、『閲覧』と唱えると見える、色々試してみるといい」

「一つ聞きたい。使用制限はあるのか?」

「日常的な呪文は、ない。戦闘用のはあるがな」

「戦闘……戦うのか?さっきも言っていたが敵とは?」

「もちろん、魔物と、さ」

 タクミは不敵に笑みを浮かべてそう言った。


「魔物……?」

「そう、魔物、モンスター等と呼ばれるものと戦う事になる」

「何故その必要が?」

「ポイントを稼ぐためさ」


「街の中心部に上も見えない程に大きな塔がある。その中で魔物と戦い、戦利品、ドロップアイテムを持ち帰り、換金するのが一般的なポイントの稼ぎ方なんだ」

「ポイントポイントって、なんなんだそれは?」

「つまりカネ、だよ」

「カネ……」

「そうさ、地獄の沙汰もカネ次第、さ」


「ポイントは日本円の約10分の1、10ポイントで100円程度の価値さ」

「つまり今回の対価は約300円程度?」

「そう、同郷のよしみだ。良心的だろ?」

「……すまない、ありがとう」

「気にするな。俺は話すのが好きなんだ」


「そしてここからが本題だ。この世界には、税金のようなものがある」

「税金?消費税のようなものか?」

「消費税?……ああ、聞いたことがある。支払いのたびに数%ではなく、1年で10万ポイント。自動的に支払わされる」

「払わなければ……地獄行き、か」

 タクミは真剣な顔で頷いた。


「つまりどんな手でも使って稼ぎ、税金を払うのが生きる術なんだな?」

「ああ。逆に貯めれば天国へ行ける。1億ポイント、だ」

「1億!?無理じゃないか!」

 思わず大きな声が出てしまった。

 そんな額、到底無理じゃないか!


「目標は遠い、だが、無理じゃない。実際何人も達成するのを見てきた。それに俺たちは歳をとらないんだ」

「なんだと?」

「そうさ、なんていっても、一度死んでいるんだからな。ついでに言えば、みんな、自分の肉体の最盛期なんだよ」


 言われて両手を見る。

 なんとなく生きていた時の、そして若い時の力強さのようなものを感じた。

 歳で言うなら20代前半か……

 更に時間は無限にある、のか。ならば行けるかもしれない。


「更に言えば、魔物に殺されても、生き返れるぞ」

「え?そうなら勝てるまで何度も特攻する手も?」

「残念だが、それはできない。ペナルティ

があるんだ。それはポイントがマイナスされる。一回死ぬと5万ポイント引かれるんだ」

「結構大きな額だな……」

「そうだ、税金の半分だ」

 軽くは死ねないんだな……


「あとは……」

「お待ちどうさま! 料理ドンドン置いていくよ!」

 会話を遮り、食堂のウェイトレスが頼んだ料理をガンガン置いていく。

 これにはまだまだ話足りなそうなタクミも、話の腰を折られたようだ。

「とりあえず食おう。まだまだ聞きたい事はあるだろう?たっぷり時間はあるさ」

「ああ、よろしく頼む」

 俺は目の前に並ぶ良くわからない料理を、口に運んでいった。


 あ、すごく美味いな、これ。


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