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決意

17


 全然揃えていなかった日用品を揃えていく。歯ブラシ、コップ、スプーンやフォーク等だ。

「これから一緒に暮らすのに必要なものは買っとかないとね!」

「え? いいのか?」

 ミラの提案に、戸惑う。

「当たり前じゃん! 僕も毎日一緒に居たいし……」

 そう言って上目遣いでこっちを見る。

 これはズルい。

「ああ、宿代が節約になるな」

 精一杯の強がりに、ミラは笑顔で俺の腕に絡みつく。

「洋服系は僕が作るから、他の日用品と、今日の晩御飯も買いに行こう!」

 そう言って俺の手を引いて、また歩き出した。


 一軒、寄り道をした。武器屋だ。

 ミラに案内された武器屋は、色々な種類の武器が壁一面に吊るされていた。

 中でもカウンター後ろの壁の中心には、素人でもわかるぐらいの、破壊力のありそうな大剣が飾られていた。

「すごいな……」

 その剣の迫力に圧倒される。

「いらっしゃい。おや、ミラじゃないか。デートかい?」

「そう見えるー? 実はそうなんだー」

ミラは少しいやらしい顔になり、武器屋の店主にそう返す。

「おや、珍しい。『大槌のミラ』が彼氏を連れてくるとはね」

 ミラはその言葉に真っ赤になり、必死に否定する。

「知らない! 何それ! シロウ、聞いたらダメだよ!」

「ミラは防具屋の職業だから、武器は大槌なんだよ。戦場で振り回される大槌を見て魔物も逃げ出すって噂だったがな」

 ミラは顔を抑えてしゃがみこむ。隙間から見える顔は真っ赤だ。

「そんなミラにも春が来たか。なかなかやるな、シロウ、って言ったかい?」

「ああ。まだ駆け出しだよ。よろしく」

 俺は店主に手を差し出し、握手をした。


「それで、どんな武器が欲しいんだ? 駆け出しならロングソード辺りだが」

「棍棒のようなものが欲しい。地球でいうバットのようなものが」

「なら棍棒が一番だな。威力は下がるが、軽いから扱いやすい」

「それをくれ。出来れば一番いい奴を」

「わかった、丈夫なケヤキ製が良いだろう」

 店主は奥から棍棒を持ってくる。

 80センチぐらいの丁度いい長さの棍棒だ。

「ミラの知り合いだ、まけてやるよ」

「ありがとう」

 そう言って代金を支払い、棍棒を『収納』にしまった。

「おーい、ミラー。帰るぞー」

 ミラはまだしゃがみ込んだままだった。


 夕方、ミラの店に着く。

 料理の下ごしらえをした後、一緒に風呂に入り、本格的に料理を作る。

 今日はチキン南蛮だ。

 ミラがララニー鳥を丁寧にあげている横で、俺はタルタルソースを作る。

 この世界にもマヨネーズがあるのは嬉しい。ゆで卵、玉ねぎとキュウリを刻んで混ぜ合わせ塩コショウで味を整えたら完成だ。

 余った時間でサラダを作り、ミラがあげた鳥にタルタルソースをかけて盛り付ける。

 今日も美味そうに出来た。

「いただきます」

「ふふふ、召し上がれ」

 最初の一口は必ずと言っていいほど俺から食べる。反応が見たいらしい。

「どう? ちゃんとあがってる?」

「しっかりと。美味いよ」

 ミラは笑顔で自分の分を食べ始めた。


 食後、後片付けをして、何気なく2人でテーブルにつく。

 そういえば今日は酒を飲んでないな、と思った。

「少し話したい。シロウの生きていた世界はどんな感じだったの?」

 ミラは興味津々にそう聞いてくる。

「そうだなあ……争いの少ない、平和な所だった。沢山の人が幸せに過ごしていたよ。建物は凄く高く、そこに沢山の人が住んでいた。そういえば、電気っていう、ある意味魔法のようなものがあって、何もかもが動いていたよ。移動するのも、明かりを灯すのにも使われていた。とにかく、いい所だった」

「ふーん、そうかあ。行きたいね、また」

「そうだな、また行きたいな」

 ふと故郷が懐かしくなる。

 頑張れば行ける。けれど先は果てしなく遠い。

「シロウ、一緒に連れて行ってくれない?」

「え? そんな事、出来るのか?」

 ミラの提案に疑問で返す。

「転生先を選べる、って噂だよ。決めた、僕はシロウに着いて行く」

「そうか。なら俺も頑張らないとな」

 思わず苦笑いが出る。頑張らないと。

「明日も頑張ろう! さて、そろそろ寝ないとかな」

「うん……でもさ、寝る前に……」

 ミラは目をつぶり、こちらに顔を寄せる。

 俺はそのまま唇を合わせ、ミラを抱きしめた。


 寝れば必ず、朝が来る。

 また隣にいないミラを探して台所へ行く。

 ミラは朝食を作っているようだ。

 後ろからそっと抱きしめる。

「おはよう、ミラ」

「おはよう、シロウ。もうすぐ出来るから待ってて」

 何も言わずにキスをして、テーブルに着き、朝食を待った。


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