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ララニー鳥

13


 俺が走ってくるのを見て、流石に向こうも気がついた様だ。

 1つ鳴きこちらを威嚇してくる。

 俺は走る勢いを落とさず一気に間合いを詰め、上段から剣を振り下ろす。

 ララニー鳥はそれを右にかわし、空いた胸へ嘴を向けて飛んでくる。

 俺は剣から右腕を離し、それを叩き落とす。

 床に叩きつけられた鳥は頭を振り、こちらを睨む。大きなダメージにはなっていないようだ。


 次だ。

 さて、先に行くか、待つか。

 そう考えていたら、ララニー鳥は大きく間合いを開ける。

 約3メートル程か。目測だから正確とまではいかないが。

 嫌な予感を感じた次の瞬間に、小さくララニー鳥が光る。

 するとさっきのスピードよりも速くこちらへと飛んでくる。

 咄嗟に盾を構えてかわす。

 ララニー鳥は盾に当たりながら反対側へと飛んでいく。

「ニワトリは飛ばないんじゃないのかよ!」

 そう愚痴をこぼしながらララニー鳥の方へ向きなおした。


 長期戦は色々まずい。

 今までの経験上それはわかっている。

 だが比較的、呼吸は上がっていない。

 まだ全然やれるぞ。

 だがどうする?

 ……アレをまたやるか。

 俺はまた、半身に構えてララニー鳥を待った。


 離れた位置でまた、ララニー鳥が光る。

 来るぞ!

 俺はまた剣をバットのように構える。

 ララニー鳥が飛んでくる。

 見えた、高めの落ちるスライダーだ!

 俺はそれをフルスイングした。

 ……同級生のアイツの方が球速は上だったな。


 ララニー鳥が居たところに戦利品が落ちている。木の板に乗った生肉と水晶だ。

 木の板に乗ってるのが不思議すぎてツッコミをいれたくなるが、疲れているのでスルーしよう。

 『鑑定』結果はララニー鳥の肉と、風の水晶、だった。

 この肉は売るべきか食うべきか。

 まあ食うにしても生肉は無理だ、鳥だし。

 とりあえず『収納』して、とりあえず休憩だ。

 俺はいつものように座り込んだ。


 これ、毎回やるのか……少しうんざりするが、今のところ打つ手がない。

 ララニー鳥のあの光る瞬間から速く飛ぶから、何かの呪文を唱えているのか?

 詳しくミラに聞いてみよう。

 そう考えて俺は、深く息を吐いた。


 2匹目は高めのストレート、3匹目は外角からのカーブだった。

 もはや戦闘というよりバッティング練習になっている。

 ……何か戦闘の根本的なものが間違えている気がするが、考えるのを辞めた。

 倒せりゃいい。戦闘スタイルはあとだ、あと。

 そう考えながら4匹目とエンカウントした。


 コイツでとりあえず帰る。

 何となく、戦闘前にそう思っていたので、三振り目で屠った後に入口方向へ向かって歩き出した。

 途中ついでのスライムが3匹いたので、軽く狩っていく。

 ……数日前の苦労はなんだったんだ。まあ、今日のはいずれも不意打ちに近い倒し方だったけども。

 色々反省点はあるが、生きて帰れた所は評価しよう、自分で。

 俺は入口の装置の光に包まれた。


 1階に戻ってきた。

 まずはレベルの確認をする。

 7に上がっていた。

 目標の10までもうすぐだ、頑張ろう。

 さらに戦利品。

 水の水晶5個に、風の水晶4個。

 ララニー鳥の肉は2つ出た。

 鳥肉は2つあるので1つ売ってしまおうか。

 そう考えていつもの屋台へ向かった。


「いらっしゃい! いつもありがとうございます! 今日も3本ですか?」

 いつもの犬型の元気な獣人がうちわを動かし続けながら聞いてくる。

「今日は要らない……後でもらう。ところで、ララニー鳥の肉は要らないか?」

 俺は取引を持ちかけた。

「お、2階に行きましたか。いいでしょう、見せてもらえますか?」

 俺は『収納』から肉を取り出し、獣人に見せる。

「そうですね、これなら100かな?いつも買ってもらってるから、150でどうでしょう?」

 はっきり言って価値がわからない。

 俺は少しでもポイントになれば良いかと思い、

「じゃあそれで」

 と、肉を渡した。


 少し早いが今日はここまでにしよう。

 もう一つの肉はミラにやるか。

 俺は防具屋へと歩き出す。


 防具屋から丁度客が出て行った。

 外国人顔の男女1組だ。

 入れ替わりで俺は店に入った。

「いらっしゃい! ……なんだ、シロウかー」

「なんだとはなんだ。失礼な」

 俺は半笑いでそう言った。

「いやー、愛想笑いも疲れるんだよ? 今だってカップルが入ってきて、あれが似合うこれが似合うって、長い間装備を選んでたんだ」

「繁盛してていいじゃないか」

「売れたらねー」

 機嫌が悪そうにミラがそう言う。

「結局買わずに出て行くんだもん。何しに来たんだか」

「客商売なんてそんなもんだろう?」

「そうなんだけどさ」

 まだミラの機嫌は治らないみたいだ。

「まあまあ。そうだミラ、コイツは料理出来るか?」

 俺は『収納』からララニー鳥の肉を取り出しミラに見せる。

「やった! 今日はお肉だ!」

「お前にやるとは言ってないが?」

「じゃあ作ってあげない」

 そう言ってミラはそっぽを向いた。

「冗談だよ。夕飯を頼めないか?」

 ミラは態勢を変えずににししと笑うと、

「朝飯よりも豪華にするよ」

 そう言って閉店準備を始めた。


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