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初めてのボス戦

10


 どんなに気分が晴れていようが、落ち込んでいようが、朝は来る。

 窓からの日差しに目を覚ますと、支度をして1階の食堂へ向かう。

2日酔いは無いみたいだ。


 今日の朝食は、パンかな?

 それに何かのジャムを塗って食べる。イチゴジャムに近い味だ。

 それからこれは目玉焼き。ニワトリではないだろうな。少し黄身が濃い色をしている。

 こちらも一口。濃厚な味だ。

 やっぱり1日の活力は朝食からだな。

 俺は全てを綺麗に平らげた。


 食後のコーヒーを飲み干し、そのまま鍵を返してからクジラ亭を出た。

 今日も天気はいい。逆に雨とか降るんだろうか?


 今日も狩りに行こう。レベルは4だ。あと半分ぐらいだけど、上がりにくくなるだろう。

 やはり2階に行かないとそろそろダメだろうか。


 塔に着く。

 1階には相変わらずのスライムが居る。

 今日のノルマは20。出来れば2階に行く事だ。

 良し。

 俺は防具の着用状態をもう一度確認して、塔の奥に進んだ。


 スライムを切り裂く。今ので4匹。軽く汗が出る。

 初戦闘が懐かしくなる程に手際よく倒していける。

 これは1階は卒業だな。

 そう思い、ノルマを変更する。

 2階だ。


 1階の奥に一際大きな扉があった。

 大きな扉の割に軽い力でそれは開いた。

 広い部屋の真ん中にいつものスライムよりひとまわり大きなやつがいた。

 『鑑定』結果はボススライム

 どれぐらいの強さかはイマイチわからない。

 そう色々としていたら、ボスがこちらへ向けて動き出した。


 ボススライムは巨体にも関わらず大きく跳ねた。

 だが、その攻撃は読んでいる。

 必殺野球打ちだ!

 だが、剣が弾かれる。硬い。

 すぐさま間合いを取る。

 あまり近いと、ボディに良いのが来るはずだ。

 案の定ボススライムは左脇腹へ飛び込んでくる。

 だがその間合いはこちらが有利だ。

 もう1発野球打ちを叩き込む。

 さっきよりも深く刃が刺さる感覚がした。


 次で決める。俺は剣を握り直した。

 ボススライムは少し後ろに下がった。

 今だ。

 俺は思い切り飛び上がり、全体重を剣に乗せた。

 ボススライムは2つに分かれ、煙を残して消えた。

 後に残ったのは水の水晶とスライムオイルだった。


 ボス部屋の奥には階段があった。

 とりあえず俺は2階に上がった。


 2階に上がってすぐに座り込んだ。

 そうか、各階にボスがいるのかな……

 息を整えながらそう考えた。

 しかし、さっきはボス戦なのに1度もダメージを受けていない。呼吸は確かにあがったが。

 中々良い感じじゃないか?

 油断は命取りだが、少しぐらい自分で自分を褒めてあげたい。


 2階に入ってすぐのところに、転移装置があるのを確認していた。

 今日は戻ろうか。

 近づいて注意書きを見ると、1階へ戻るのはポイント消費がいらないことが書いてある。

 助かるな。

 俺は転移装置を起動させた。


 外は昨日と同じぐらいの昼過ぎ。

 またいつもの串を買って食べる。

 違う種類の串も売っているが、いまいち冒険出来ず手が出ない。

 多分美味いんだろうな。

 トリカワとかハツとかみたいなのかなあ?

 そんな事を考えながら3本の串を平らげ、いつものゴミ箱にゴミを捨てる。

 さて、どうしようか?


 俺はスライムオイルを持ってミラの所へ行く事にした。

 2本なら喜ぶだろうか?

 防具屋の扉をくぐる。

「いらっしゃい! ああ、シロウ!」

 何やら作業していたミラは手を止め、近くに寄ってくる。……近い近い。

「どうしたの? 今夜のお誘い?」

「俺はそんなに盛りのついた犬みたいじゃねえ! スライムオイル、要るだろ?」

 『収納』から2本のスライムオイルを取り出し、ミラに渡す。

「ありがとう! 1000ポイントで良いかな?」

「多くないか?」

 値段の高さに心配になる。

「大丈夫だよ、こう見えてお金持ちなんだ。ポイントは見せられないけどね」

 確かに1人で防具屋を経営しているぐらいだ。素材代ぐらいなんてことはないだろう。

「わかった、それでいい」

「じゃあ、オマケもつけて1100渡すね」

「こら、そういうのはいいのに」

 半ば無理矢理ポイントを渡してきた。

 確かに有難いんだけど。


「そういえば……まだ気にしてる?」

「いや、そこまでは……やっぱり気にしてる」

「正直だなあ」

 にしし、とミラは笑う。

「大丈夫、ここは死後の世界。子供なんて出来ないよ」

「そういう問題じゃなく、いや、それも問題なんだが」

 しどろもどろになってしまう。

 どうもミラには調子を崩されるな。

「あー、うん、なんだそのー……」

「どうしたの?」

 ミラが俺の顔を覗き込む。

「俺以外はそういうの、嫌だな……」

 ミラは大爆笑している。


 ひとしきり笑い終えた後に涙目で、

「シロウだけだよ、こんな事するの」

 そう言ってまた笑った。


 俺はただ、頭をかきながら、顔を赤くすることしか出来なかった。


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