選択の場
目を覚ますと、椅子があった。
暗いが何故かそこに椅子があると分かった。
何故だ?
というより、何処だ?
俺はタケザキシロウ。確か35歳、になったはず。33の時に心臓病を患い……病院のベッドの上に居たはずでは?
あの痛みと息苦しさの中、医療機器の電子音だけが聞こえる世界にいたはずだったが。
今の俺は痛みも息苦しさもない。何より二本の足で立てているじゃないか。
夢か?ついに痛みで幻覚でも見えたか。
笑えるな。ついに俺も終わりか……
「あなたは死にました。ここは選択の場です」
突然の声に驚きながら、声のした方へ目をやる。
椅子のあった場所に女性が座っていた。
「死んだ? 選択の場? まて、理解が追いつかない」
ここは地獄か何かか?
「半分、その通りです」
え?
「地獄が? それより俺の考えたことがわかった?」
目の前の人物は笑顔で、何も答えない。全てその通りということだろうか。
何者なんだろうか?
「ここは選択の場。地獄に行くか天国を目指すか選ぶ場所。私はそうですね、案内人でしょうか」
また、考えを読まれた。
それより行くか、目指すか?……選択肢2つとも行くではない?
「その通りです。地獄にはすぐ行く事が出来ます。天国には少しの努力が必要なのです」
「地獄と天国の違いは?」
「地獄はそのまま永遠に眠ることに。夢も見ない素敵な場所ですよ。天国は……もう一度生まれ変わる事が出来ます」
「天国に行くための努力とは?」
「稼ぐ事」
「稼ぐ?」
「天国に行くには、ある世界でポイントを稼がなければいけません」
ポイント……ある世界……
「さあ、選びなさい。時間はありません。地獄行きか、天国への道か」
「ま、待ってくれ、まだ良くわからない!もっと教えてくれ!」
「これ以上は与えられません」
案内人は笑顔のまま、厳しく言い放った。
「参考までにですが、現世で疲れた人はよく地獄を選びますね。まだやり残したことがある人は天国を目指します」
俺は……いや、決まっているんじゃないのか?
死んだ。つまり、あの重い病気から逃れられたんだ。天国に行くためのポイントが何かわからないが、自由になったんだ。身体を動かしたい。何かを試してみたい。俺は良くわからないまま終わりたくない!幻覚なら最後まで見てやってもいいじゃないか!俺にはまだやり残したことがある!
「わかりました」
案内人はずっと変わらない表情のまま、パチンと、指を鳴らした。
その瞬間、目の前が真っ暗になった。
はじめまして。
思いついて携帯で緩やかに書きなぐっております。
1話は短めですし、更新頻度は高くありませんが、よろしくお願い申し上げます。