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しあわせは、雨の降る日にやってくる。  作者: 恵比寿 ヒナタ
9/11

冒険の書、始まり

大好きなあなたのために。


ーーーーーーーーーーーーー

描きたいものがあるなら、勝手に描いたらいいんだ。

今のところあたしはそう思うな。

まあ、いろいろ説明が足りていないし、こんな文章誰も

好き好んで読みはしないだろうけど。

けど。二、三年、前までの中二的なあの空気感を脱却できたことだけは、

報告できるな。うん。


さてと、「10年前」のあんた。私はもう大人になれたよ。

ん?仕事は何やってるかって・・まあ、あとでな?

今までってか今もなんだけど、

めちゃくちゃしんどかったぞ。

まあ、そこでお得意の「自信のないポーズ」で寝てるだろうあんたには

あたしの辛さは一ミリも理解できないだろうけどな。

・・

これまで、私は数えきれないほどの「死」を見てきた。

名前も知らない相手も、家族も、好きな人も。

運よく生きてこれたから、例のやつを書こうと思ってな。

・・まあ、今の私の立場からしたら、大人の私からしたら。

「手記」っていうのが正しいのかもしれないけどな。

でもまあ、聞いてくれや。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

人為的な災害。人々は皆「それ」をそう呼んだ。

最初はただの雨だった。

それが時々台風へと変貌し、局地的に災害を引き起こす。

それがこの世界の仕組み・・のはずだった。

「幸せになりたい」少女ががらにもなく

森まで走った台風の日のことだった。

雷が鳴り響き、大地が震えていた。

「・・・え?」

いつもとなく周りの世界の「空気」が違う。

困惑して、ラインは空を、、

「それ」を見た。

濃い紫色の雲に漆黒の空。

そこにうっすらと「人」がいた。

「・・・・・!」

えええええええええ、いやいやいやいやいやいやいやいやいや、

なんだ、あれは。

ラインがうろたえていると、

「人」は広がって、

横に、縦に、前に、後ろに。

体が大きく。

そこからのことはあまり覚えていない。

ただ、ずっと「雨」が降っていたことだけしか思い出せない。

町が飲まれるほどの、雨が。

そこで、私は。

孤独になった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


少女は唖然としていた。

少女は茫然としていた。

少女は漠然としていた。

少女は、叫んでいた。

彼女がいた場所は丘の上で唯一「雨」の被害を受けなかったのだ。

ケルト先生も、あの嫌な同級生も、

おとーさんもおかーさんも、死んだ。

絶望。

涙が出まくって、目が両方真っ赤になった。

だから、この思いがせきあがってきたんだ。

なんで。

「私をころさなかったんだよ・・・!?」

こんな、うじむし生かして、神様は何を望んでるんだ。


少女に安らぎを与えていた雨は、

いずれ全世界に「不幸」を象徴するものとして認識されるようになった。

あの毎日にまた戻りたいとは、誰も言わないだろう。

ただ、あの時間を除いて私が成り立つことはありえない。

だから、ここに書いておこう。

苦痛と混沌と不幸に彩られた、

「冒険の書」を。



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