冒険の書、始まり
大好きなあなたのために。
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描きたいものがあるなら、勝手に描いたらいいんだ。
今のところあたしはそう思うな。
まあ、いろいろ説明が足りていないし、こんな文章誰も
好き好んで読みはしないだろうけど。
けど。二、三年、前までの中二的なあの空気感を脱却できたことだけは、
報告できるな。うん。
さてと、「10年前」のあんた。私はもう大人になれたよ。
ん?仕事は何やってるかって・・まあ、あとでな?
今までってか今もなんだけど、
めちゃくちゃしんどかったぞ。
まあ、そこでお得意の「自信のないポーズ」で寝てるだろうあんたには
あたしの辛さは一ミリも理解できないだろうけどな。
・・
これまで、私は数えきれないほどの「死」を見てきた。
名前も知らない相手も、家族も、好きな人も。
運よく生きてこれたから、例のやつを書こうと思ってな。
・・まあ、今の私の立場からしたら、大人の私からしたら。
「手記」っていうのが正しいのかもしれないけどな。
でもまあ、聞いてくれや。
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人為的な災害。人々は皆「それ」をそう呼んだ。
最初はただの雨だった。
それが時々台風へと変貌し、局地的に災害を引き起こす。
それがこの世界の仕組み・・のはずだった。
「幸せになりたい」少女ががらにもなく
森まで走った台風の日のことだった。
雷が鳴り響き、大地が震えていた。
「・・・え?」
いつもとなく周りの世界の「空気」が違う。
困惑して、ラインは空を、、
「それ」を見た。
濃い紫色の雲に漆黒の空。
そこにうっすらと「人」がいた。
「・・・・・!」
えええええええええ、いやいやいやいやいやいやいやいやいや、
なんだ、あれは。
ラインがうろたえていると、
「人」は広がって、
横に、縦に、前に、後ろに。
体が大きく。
そこからのことはあまり覚えていない。
ただ、ずっと「雨」が降っていたことだけしか思い出せない。
町が飲まれるほどの、雨が。
そこで、私は。
孤独になった。
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少女は唖然としていた。
少女は茫然としていた。
少女は漠然としていた。
少女は、叫んでいた。
彼女がいた場所は丘の上で唯一「雨」の被害を受けなかったのだ。
ケルト先生も、あの嫌な同級生も、
おとーさんもおかーさんも、死んだ。
絶望。
涙が出まくって、目が両方真っ赤になった。
だから、この思いがせきあがってきたんだ。
なんで。
「私をころさなかったんだよ・・・!?」
こんな、うじむし生かして、神様は何を望んでるんだ。
少女に安らぎを与えていた雨は、
いずれ全世界に「不幸」を象徴するものとして認識されるようになった。
あの毎日にまた戻りたいとは、誰も言わないだろう。
ただ、あの時間を除いて私が成り立つことはありえない。
だから、ここに書いておこう。
苦痛と混沌と不幸に彩られた、
「冒険の書」を。