私は何も知らない。
どうぞ。
目の前で女の子が泣いていました。
ぐずぐずと、およそ子供とは思えないほど苦しそうに、悲しそうに、まるで
救いがないかのように。
「・・・・・。」
どうしようか。
悲しめばいいのかな、僕も。
表情を「わざと」悲痛に歪ませて、僕は彼女に話しかけました。
「・・・・・、どうしたの?」
すると彼女は少し落ち着いたのか、こちらを見てくれました。
彼女は僕の顔を見たとたん、困ったような表情になって。
私に言いました。
「目。」
「目?何?目が痛いのかな。」
「・・・・、ううん。」
頭をぶんぶんと振って、彼女は言いました。
「あの・・。」
「うん?」
「わたしは、しあわせに見えますか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「いつまで続くんだろう?」
「ん?」
ラインの両親は、仕事で果物を売るために都市近辺まで来ていた。
「あの子、大丈夫なのかな。」
「ああ・・・・」
ラインの父親は少し遠い目をして。
「大丈夫さ。あの子のことだ、またすぐにでもうまく立ち直ってくれる。」
「でも、あの宿舎をやめて、何か様子が変じゃない?」
「変って?」
「ううん、うまく言えないんだけど・・・」
だけど。
「何か、取り返しがつかないものがパキって折れちゃってるんじゃないかなって。」
「・・・取り返せないものなんかないさ。まだまだあの子は若いんだ。
そう心配ばかりしてやるな。」
「うん・・・、そうね。」
大丈夫だよね。きっと。
心配だな。
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「優しい」ということの定義付けを行う場合、否応なしに浮上する問題は
「助ける相手が自分よりも明らかに弱いか」ということである。
弱者は強者には勝てない。
それが現実。
誰かを助けられることなんてそうそうなく、仮に助けられたとしても
それは果たして優しさといえるのか。
「自分よりも劣る対象がいる」場合でのみ可視できるそれは。
そんな小学生が教わるようなキャッチフレーズで表していいものなのか。
・・・ああ、強くなりたい。頭がよくなりたい。
だから今も思う。
僕は、君を助けてもいいのかい?
「雨漏り」ちゃん・・?
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雨が降る日。
私はいつも通り雨を浴びるために外に出た。
もちろん傘はない。
有ってもささない。
いつも通り、森まで歩いていく。
「泣きたいなあ。泣きたいなあ。泣きたいなあ。」
ライン・ガードナーは呟く。
いつものあの場所だったら、どんな無様でも誰もいない。
絶好の泣き場所。
そんな風に今日も「死んだ」目をしながら彼女は歩く。
「ねえ。」
あーあ。嫌なことばっかだなあ。
「・・・ねえ?」
つらいつらい。まったく
なんで生まれてきたんだろう。なんで生まれてきたんだろう
「おい。無視すんなよ。雨漏り女」
ん?と声に振り向くと同い年のショートボブの女の子が立っていた。
雨合羽を着ていて寒いせいか、息を若干荒げている。
「・・?何、誰キミ。」
「・・・!失礼なこと言うなよ。僕だよ僕。百瀬 准。元文芸部の。」
「ああ・・・デ?」
「デ?じゃない。ちょくちょくカタカナ混ぜて話すな気が散る。あのな、雨音。」
「・・・私はラインよ。その名で呼ばないで。」
「いい加減。」
「うん?」
「いい加減、物語を進めなよ。お前が中心なんだぜ?」
最後までありがとう。