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しあわせは、雨の降る日にやってくる。  作者: 恵比寿 ヒナタ
2/11

誰にも知られないこと

どうぞ。

雨が降ると、目の前の景色が4割はよくなって見えた。

眼前を覆う雨粒に、水を浴びてきらきらする草、花、家々のレンガ。

何よりも都合がいいのは、雨を嫌う人々が外にはいなかったこと。

独りの時間、きれいな雨音に様々な思いを馳せながら、引きこもりの少女ラインは傘も持たずに散歩する。

 町の上の丘のあたりまでのぼると、辞めた宿舎が見えた。

傘をさして家に帰る小さな人たちを眺めていると、なんだか自分がひどくみじめなものに思えてきた。

ずっとここにいるのが嫌になって、丘から近くの森まで歩いた。

森の入り口当たりにある木につくと、ふと、申し合わせたように泣き始めた。

「ああッ!!アーーーーーーーーー―ッ!」

少女の声は、誰にも聞かれず響く。

「なんでッ!?なんで私なのッ!!これじゃあ私は人形と同じじゃない!」

響く。

「役に立ちたいのにッ!なんで誰も助けてくれないの!?」

響く。

「私はただ、きれいなものが見たかっただけなのにッ!」

響く。

「わたしは、笑顔が見たくて、それだけ、だったのに」

響く。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

この世界には知らないことがたくさんある。

それは、学問に関しても、人の気持ちに関しても、もちろん一人の少女に関しても同じこと。

もちろん、とある地底についても明確に言えるものはいない。


ここ、とある地底にも一人の少女がいた。

ちなみに、その少女には翼がある。わっかもある。

その少女の正体に関して、何も隠す必要はないので告げておく。

     少女は天使である。主である神様から、とある任務を課せられた。

とある地底に妙な場所があるらしい。魂とは少し異なる「思念」のようなものが、ここに

 寄り集まっているそうだ。必要であれば対処せよとのことだったが・・・

「なにもないけど・・?」

周り一帯を見回すが、ただの洞窟にしか見えない。

神様の気まぐれかと思い、その天使は帰ろうと上を見た。

ポツポツ、ポツポツと水滴の滴る音が聞こえる。と、

  周りの雰囲気が一気に変わり、きずいた時には、天使は滂沱と押し寄せる雨水に体を流されていた。


「ここは?」天使は周りを見渡す。

気のせいか、視界が灰色っぽいものにあふれている。

先に進むと、天使は愕然とした。

「何?ここ・・・」

目の前に、灰色の町があった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ラインは泣き疲れて、木の下で眠っている。

 しあわせになりたい 

と、寝言で言っていたことも、きっと誰にも聞こえなかったのだろう。


 

  

最後までお読みいただきありがとうございます。

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