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しあわせは、雨の降る日にやってくる。  作者: 恵比寿 ヒナタ
10/11

かわいそうね?

名もなき天使は気づいていた。

たくさんの醜悪な思念を眺める毎日の中で、

この暗い「グレーケイブリッジ」の中で。

なぜ自分はずっとここにいて、ずっと出られないのか。

いやそもそも、出ようともしないのか。

神様がくださったこの体・・

何一つ汚れていないはずの、きれいな体。

その背中についているはずの大きな翼は、

真っ黒になっていたのだから。


「堕天、しちゃってたんだ。」

神様から見放された。見放されていた。

他人のことばかりみていたから、後ろを振り返らなかったから、

背中を見ようともしていなかった。

,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,

天乃川高等養成施設。通称テンコ―。

幸坂ツバメはそこで育った。

そこは一応の進学校で、他校からの呼び名は「ブルジョア」。

つまり、金持ちが多いんだ。

そんな中、僕の家は決して裕福ではなく、あくまで一般家庭で。

周りから馬鹿にされたかと言えば、そうではない。

クラスメイトは僕にやさしかった。

何分僕も、あの「雨好き」の変人と同じように生きるのが苦手だったから

かなりしどろもどろになってしまったかもしれないが。

そこで僕は「なんとなくの3年」を過ごした。

今過去を振り返れば、なんと意味もない時間だったろう。


何故僕が自分の出身と境遇を示したのかというと、

「あくまで」僕は恵まれていたことを書いておくためだ。

というのも「誰かのために」こんなものを書くなんてこと

やっと最近覚えたことなんだもの。


「君は他人に『かわいそう』って言っちゃうことに、なんの

ためらいもないヒトかい?それとも、大多数から、

それを言われる人間かい?」

「・・・・‥?」

昔のことだ。僕が中学生の時。

冬の雪が積もった日。

夜中の真っ白な道路に突っ伏して泣いていた女の子に言ったことだ。

その子が「自分が幸せに見えるか」と聞いたことへの返事。

「君がもし前者なら、僕は君の助けにはなってやらない。

後者なら、君は僕の大っ嫌いな人種だから、

助けてやるよ。」

「・・・。わ、わたた、しっしは・・・・」

「ん?お前どもるのか。なんだよ?どっちだ?」

「あぅ、、わ、たし、、は・・・・・

どっち、でも、ない、で、す・・。」

「は?」

震える口元を見るに、どうやらかじかんでいただけらしい。

「はぁ、ふう・・。私は、かわいそうって言葉が嫌いなので、

いうのはためらいます。けど、言うべき人も、いるのでしょう。」

「・・・・」

「あと、私は、自分がかわいそうだと言われる、人だと思ってません。」

敬語を使ってくるとは思ってなかったな。

「ですから、あなたの質問には『答えられる回答』がありません。」

ふうん。

「・・・お前、俺が何に見える?」

「・・・?あなたは意地悪で変な男性です。」

「・・ッは・・そっかー。えーと質問の答えがまだだったな、

お前は、幸せなんだと思うよ。」

「どうして、」

「笑ってるから。今。」

少女はぽーっとした顔で、何か考えながら自分の手で

自分の顔をさわさわと触っていた。

「笑ってましたか。この私が。」

なんとなく、な。

ハハハ。

「ニヤってしてたぜ。」

面白い奴だ。

「‥俺は幸坂ツバメ。武器が好きなだけの中学生だ。

そうさな、あらゆる逆を考えるのが好きだ。」

「はあ。・・私は、あまね、、すずか。いえ。」

少女は少し黙って「名前で呼ばれるのはちょっと・・」とか細い声で言って

「ライン・ガードナー」

「は。」

「私のことは、ラインと呼んでください。雨が好きなので

rainをローマ字読みしてライン。自分を守りたいからそれっぽくガードナー。」

「・・ああ、別にいいが。」

「・・はい。」


過去の一幕。一旦閉じる。





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