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異世界鳥獣人物戯画  作者: エンペツ
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C-7「一泊」

 森の中を道を作りながら進んでいく


「そういえば金太郎、お前なんであんなところで腹を抉られてたんだ?」


 眷属化したためか、金太郎の伝えたいことが何となく伝わってくる。


「なるほど、力試しにドラゴンに挑んだのか・・・・・お前って結構武闘派だったんだな。え?そういう試練だったの?どこの業界も大変だな・・・・・ってこの辺にドラゴン居るのかよ!ドラゴンってあのドラゴンだよな?」


 キョロキョロ辺りを見回す。が、そんな様子がない事にホッとする。


 金太郎から、何か大きな力を持つ者がこちらへ来る気配がしたので、ドラゴンは瀕死の金太郎にとどめを刺さずに逃げ出し、その間にあの場所へ逃げたという事が伝わってきた。囮にしたんだろうと


「そうなのか、ドラゴンちょっと見て見たかったけど、てかドラゴンが逃げ出す様な、そんな力を持つモンスターがいるのかよ」


 ドラゴンってやっぱり強いんだよな?なんて思いながら話していると。暗くなってきた木々の隙間から覗く空が、眩しくオレンジ色に包まれている。


「あーもう夕方か、この辺のどこかでキャンプでもするか」


 と、金太郎を止め。どうしようかと考える。ドラゴンの様な強力なモンスターもいるそうだから、何か隠れられるような場所はないかと、しばらく周りを探すと洞穴の様な場所があった。


「そういえば日にちも時間も何にもわからないままだったな~・・・・・まあ、いいか。分からないなら分からないで」


 オレンジ色からだんだんと濃い紺色へと変わりつつ、いくつか星が輝きだした空を見上げながら呟くと、金太郎からピッと降りて、その洞穴のような場所の前までピッピッピッピッと金太郎のリードを引きながら歩いていく。金太郎が何も警戒してないから多分大丈夫だろうと、意味があるのか一応声をかける。


「ごめんくださ~い。すみませ~ん。誰もいませんよね~」


 残念ながら洞穴には何もおらず、5メートルほどの奥行き、横幅は3メートルほど、高さも2メートル位ある。子供の身と犬には十分な広さだ。とりあえず<デザイン>スキルを使って天井壁床とコンクリートで何の凹凸もない様に綺麗に囲い、木を床に敷き詰める。土足のままでいいかと、続けて<デザイン>スキルで壁にランプをかけ点灯させる。洞穴が一気に明るくなった。金太郎は不思議な顔でそれを見ていた。

山田は未だに何故そう言う現象がおこるのか分かっていなかったが、マナだか謎力だかが働いているんだろうと、簡単で楽チンでいいやと納得する。洞穴の入り口の大きさに合わせて両開きのドアを付け、開けたり閉じたりして確かめる。閉じ込められる危険を回避するために勿論内開き。ベットと布団、枕を作り奥へ設置するとそこにボフッと飛び込む。一通り布団の感触を楽しむと、ベットのヘリに座り、部屋へと変身をした洞穴を、何という事でしょう~と見回す。


「まあ、今回だけだし、十分でしょ」


 金太郎は部屋を確認するかの様に鼻をクンクンして一回りしている。ひと通り確認して満足したのか山田の方を向く


「よし。金太郎。来い」


 ベットをポンポンと叩く、金太郎はポーンとベットの上へ乗り自分の伏せやすい体勢を確認した後に伏せて、山田の方を向く。その頭を撫でながら山田は気がつく。


「そういえば、お前飯とか水とかとってなかったな。腹減ったし喉渇いたよな。ごめんごめん」


 そう言うとベットから降り、<デザイン>スキルで水を無限に作り出す設定にした水袋を作る。ペット用の水入れをつくり床へ置き、山田が確認の為に水袋から一口飲んだ後、そこへ水を入れていく。金太郎はベットから降りて、喉が渇いていたのかバシャバシャと勢い良く水を舌で掬う。こぼれる水が床を濡らす。そんな様子を見ながら水袋をいったんベットへ置く


「飯ってどうすればいいんだ?ドッグフードで良いのかな」


 栄養満点美味しいと設定してドッグフードを<デザイン>スキルで作る。光が収まると、どでかい頑丈な袋に入った、大型犬用のドッグフードが目の前へ鎮座する。バリバリと乱暴に・・・子供の力では開けられず、<作画>スキルで開けて行く。中に入っていた計量カップで色んな形や色の違うドッグフードを掬い、これまた作った餌入れへ、ジャラジャラと山盛りに入れる。

水入れにも餌入れにも漢字で金太郎と書いてあった。


「おすわり!待て!」


 山田は左手を腰に当て、右の手のひらを金太郎に突き出し声をかける。首輪のお陰で人語の分かる金太郎には必要ないのかもしれないが、一応躾として待たせる。金太郎は山田をじっと見つめる


「良し!」


 そう言って腕を降ろすと、金太郎は一目散に餌を食べだした。とても美味しそうに食べる金太郎を見て、そうとう腹が減ってたんだなと、申し訳無い気持ちになった。

 ベットのヘリへと座り、犬って餌を食べてる時は撫でたらダメなんだったっけ?なんて金太郎を眺めていると


「あ、そうか。この水袋やドッグフードとかどうしよっか、ベットと布団も作ったは良いけど運べないしな~消すのも勿体ない気がするし・・・・・あ!ああ、そっか漫画やラノベ、アニメやゲームでよくある道具袋作れば良いのか、良し」


 少しどういった物にするか考えた山田は、勢い良くベットから降りて、<デザイン>スキルを発動する。光が収まると手の平に、円を半分に切った様な、どこかの未来型ロボットがお腹あたりにつけている様な、そんな白い袋を持っていた。山田はそれをピタッとお腹につけて、水袋とドッグフードを入れる。明らかにドッグフードは袋より大きいが吸い込まれる様に入って行く。


「テレレテッテレ〜み〜ず〜ぶ〜ぐ〜ろ〜」


 そう言って一度しまったものをまた取り出す。金太郎はそんな主人の様子をチラリとも見ずドッグフードを一心不乱にに食べている。


「ふふふふ〜金太郎くんは、いっちゅもいっちゅも、そうやって、僕を頼るんだから」


 と水が少なくなった水入れに水を足してあげる。何か他に入れたり出したりできるものはないかと、周りを探すが、ベットと布団、枕くらいしか無いので諦める。そうこうしていると金太郎が食べ終わり、こちらを見ている。


「満足したか?」


 美味しかった、お腹いっぱいと言うことが伝わってきた。


「風呂入りたいけど、ここに作るのもな〜・・・・・まあ今日は良いか」


 あっちの世界ではスタジオに何日も止まり、風呂に入れないこともザラだった山田にとって、1日位風呂に入れない状況はそこまで気にならなかった。


「歯磨きは・・・まあいいか。良し!寝るか!」


 山田はそう言うと金太郎からリードを外し道具袋へと仕舞うと、ベットに乗り布団に入る。金太郎はベットに飛び乗り山田の足元へと陣取る。自分の寝やすい体勢を探しポスっと丸まった。色んな事があったなーと思いつつ、そういえば大賢者が寝なくても大丈夫って言ってたな〜なんて思った瞬間夢の世界の住人になった。



◆◆◆



『ああ〜上手くなりて〜上手くなりて〜』


レジェンドアニメーターが、酔うと必ず口癖の様に呟いていた言葉で眼が覚める。あの人元気かな〜なんて思うが


「ふあああああああ」


 大きな欠伸と伸びでそんな記憶は搔き消えた。洞穴にいる為に朝なのか昼なのか夜なのか分からない。主人が起きたことに金太郎も足元で顔を上げる。昨日より毛並みが良い気がする。体調も良さそうだ。


「おはよう金太郎」


 声をかけて布団をめくり、ベットから降りて、また一つ伸びをする。水入れを見ると水は残っているので、ドッグフードだけ入れようと思っていたら。金太郎がドアの前へ移動し、ワン!と吠える。寝ぼけている山田は初め理解できなかったが


「ああ、トイレか」


 そう思い至り、ドアを開けてあげる。するとバッと飛び出し1度全身をブルブルと震わせると、その辺を嗅ぎまわる。山田は金太郎の後から外へと出る。


「ん〜朝か」


 また伸びをして、早朝の新鮮な森の空気を肺に取り込み吐き出す。

金太郎は具合の良い木を見つけたのか、後ろ足を上げてそこにションベンを引っ掛ける。その後、その辺をぐるぐる回り良いポイントがあったのか座ってうんこをしだした


「なんだっけ犬って、どっかの方角を向くんだっけ?」


そんなうろ覚えの知識を思い出しながら


「まあ、うんことか拾わなくても良いよな、森だし」


 と変なラジオ体操をしながら、見るともなく見ていた。満足したのか金太郎は、変な踊りを踊る山田の元へやってきてお座りする。

山田は歯磨きする為に、歯ブラシと歯磨き粉、うがい用のコップを出す。


「金太郎、ちょっと頭下げて」


 金太郎は言われたように頭を下げる。その頭へコップを置き道具袋から水袋を出し水を入れる。金太郎は落とさない様にと神妙な顔をしてじっとしている。水袋をしまい、歯ブラシに歯磨き粉を出し歯磨き粉を道具袋へ仕舞う。ありがとうとコップを受け取り、歯磨きを始める。ゴシゴシと一通り磨きコップの水を一口口に含みグチュグチュとし、水をどうしようかと思うが、吐き出すと同時に<修正>スキルで消して行く。


「あ、そうか歯磨きしなくても、スキルで綺麗にすれば良かったのか」


 と今更気がつく。まあ多少の苦労は必要かと道具をしまい、金太郎と一緒に部屋へと戻ると、餌入れにドッグフードを山盛りに入れてやる。


「お座り。待て・・・・・良し!」


 金太郎は食べ始める。ベットのヘリに座って自分は何を食べようかと考えるが、お腹は全く減ってない。が、コーヒーが飲みたくなり<デザイン>スキルを発動する。光が収まり、手にコーヒーカップとソーサーが出てくる、コーヒーカップには熱々のコーヒーが入っていた。鼻の下まで持ってきて目を閉じてその匂いを楽しむ。


「ん〜、これはキリマンジャロブルーマウンテンゴールデンだな。良い香りだ」


 1つインスタント的な響きが混じっているが、適当に知っている名前を並べただけで、本人は何か満足した様子で、一口飲む。


「うん、コーヒーだ」


 しばらくコーヒーを飲みながら金太郎が食べる様子を見て、歯磨きした後のコーヒーって何か変な味だよな~とまったりしていると。金太郎は食べ終わり水を飲み、満足した様子で山田を見る。


「さてと、そろそろまた、我々は探索に出かける。準備は良いか?」


 ワン!と返事をする金太郎。山田はうむと頷き、飲み干したコーヒーカップとソーサーをお腹の道具袋へと仕舞うとベットから降り


「金太郎、ちょっと後ろへ下がって・・・もうちょい・・・・・そうそうそのくらい」


 金太郎はお座りの体勢のまま、ずりずりと後ろへ下がる。手をかざすと布団と枕、ベットが一気に道具袋へと吸い込まれる。ランプをしまい、金太郎の餌入れをしまい、まだ水の入った水入れを持って外に出て、水を撒き道具袋へ仕舞う。洞穴の状態とドアはどうしようかと一瞬迷ったが、放置する事にした。


「良し。じゃあ行くか」


 金太郎に乗り前日までの道に戻りまた真っ直ぐ進んで行く。





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