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異世界鳥獣人物戯画  作者: エンペツ
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Cー4「ステータスと」

山田は樹の元まで戻り、体育座りをする。心が追いつかないのか、しばらくボーッとしていた。

これからどうしようか?元の世界に戻れるのか?元の世界へ戻ったところで、たいした人生でもないし、大賢者は向こうにいたという痕跡も消えたって言ってたし、てか何でそんな事分かるんだよ。そういえば、残して来た仕事はどうなったんだろうか、すごい迷惑かけちゃってるなー、そんな事をぼんやりと考えていると。枝葉がサワサワと風に揺れ、それがまるで大丈夫かと心配しているようだった。


ぐうううううう


また腹が鳴った。大賢者は食べなくても大丈夫と言っていたが、腹が減るんだからしょうがない。お腹から発する要求に素直になろう。考えてもどうしようもない事に頭を使ってもしょうがないと切り替える。

見上げると真っ赤なリンゴが生っている。どうやって取ればいいんだ?木に登るか?なんて考えていると、リンゴが落ちて来た。慌てて受け止めようと両手を出すとそこへポスっと収まる。小さい手いっぱいに収まったリンゴとそのリンゴが生っていた箇所を交互に見ながら、まるで樹が自分の為に落としたような気持ちになる。まさかな、なんて思いつつ服でリンゴを磨きシャクリと一口食べる。


「うっまー」


 目をカッと開く。記憶にあるリンゴよりも美味しい。溢れる果汁。


「甘み酸味とシャリシャリした舌触りの三重奏や~!!」

 

 目を閉じて味を全身で感じる。一気に食べきり、芯の辺りをその辺にぶん投げる。まだ足りないので、見上げるとそこには桃が、両手を出すとそこへ狙ったかのように落ちて来た。これはもうそういう事なのかと思いつつ、桃を剥くと瑞々しい実が現れる。一口食べる。


「うんまー」


 口元から溢れるほど甘い果汁が溢れる。


「果汁のナイアガラの滝や~!!」


 これも一気に食べ終え種をそこら辺へぶん投げる。子供の体のためかそこそこお腹も膨れ、人心地ついた所で、確認すべき事がある。大賢者はこの世にはマナが有り、魔法なるものが使えると、そしてステータスも。山田はステータスを確認しようと思った瞬間目の前に文字が浮かんだ。



名前ー山田貴之

種族ー人?

職業ーアニメーター


《オリジナルスキル》

<作画> <修正> <デザイン>


《スキル》

<観察眼> <審美眼> <真贋> <理解・分解・再構成> <分析> <空間・立体把握> <時間感覚> <トレス・クリンナップ> <合成> <模写> <レイアウト> <圧縮> <拡大・縮小> <雑学>


《耐性》

<状態異常> <精神異常> <属性>


《称号》

<異世界人> <縁の下の力持ち> <生まれ変わりし者> <絵描き> <職人> <世界樹と繋がりし者> <大賢者の加護 >




「おお、種族が人かどうか分かってないぞ、職業はアニメーターなんだな。なんだかスキルってのが沢山あるけど、基本アニメーターとしてのスキル?だよな?耐性ってのは異世界物で良くあるあれか。称号ってのも何だ?世界樹ってこの樹だよな、大賢者の加護ってあの人だよな、大丈夫なのか?」


 山田はステータスを見ながら、大賢者とのやりとりを思い出し不安に襲われる。そういえばこの体も大賢者が作ったって言ってたよな、大丈夫なのかと両手を交互に見る。


「・・・・・まあ、色々やってみますかね」


とは言ったもののどうすれば良いか全く分からない。そもそもどうやって使うのか。魔法があるそうだが、ステータス欄には創作物で見るような名前のものは無い。

とりあえずこの周辺位は確認しておくかと、ステータスを欄を消し立ち上がる。もう足元から聞こえるピっという音も気にならなくなった。辺りを見回し、視線の先にある鬱蒼とした森へと歩き出す。

 

世界樹を中心に周りを円で囲むように芝生、草原、そして円周を森が広がっている。まるでドーナツみたいに。


「体は成長しないって話だったけど、能力はどうなるんだ?増えたりするのか?どこかで試せないかな〜。てか、この世界のこととか全然聞けなかったし、ぶん殴られて吹っ飛ぶし。魔法と剣の世界って言ってたけど、人っているよな?国とかあるよな?てかここはどこなんだよ、世界樹だっけ?繋がってるそうだけど、離れても大丈夫なのか?」


 左の頬をさすりながら色々考えがよぎり、ぼやく。まだ少し腫れている。


「でもわざわざ動かなくても、ここで生きていけるよな~」


 世界樹の方を振り返る。見えるところだけでも色々な果実がなっており、奥には米や麦まである。でもそれじゃあこの世界へ来た意味がない。いかんいかんと首を振るが、まあ、最悪ここに引きこもろうと、また歩き出す。

 森へと進む途中に、蝶々のような虫が花から花へとひらひら飛んでいく。その様子を、へ~あっちと変わらない動きなんだな~と観察する。足元を見るとバッタのような虫がピョンピョン跳ねている。噛んだり血を吸ったりされないかな~なんて思いながら、えい!っと捕まえて手のひらに乗せ観察しようとすると、羽根を広げピョーンと顔に向かって飛んできた。ひゃあ~!なんて声を出して避ける。慌ててバッタの行方を追うと、優雅に羽根をはばたかせ飛んでいた。その姿はざまあみろと言っている様だった。


 気を取り直して歩き出す。世界樹から離れるほど草が伸びていく。芝生から始まり。足首ほどの長さ、膝辺り、腰辺り、胸元辺りほどの長さと段階的に伸びている。さらにもっと先の草は大人をすっぽり隠す位伸びている。山田は歩くのが大変そうだな~と、草が割れて道にならないかな~とそういう想像をする。すると<作画>スキルが発動した感覚があった。と同時に想像したとおりに草が割れ一本の道になった


「へ?」


 まぬけな声を出して、唖然とその光景を見つめる。恐る恐る一歩を踏み出し、キョロキョロしながら歩いていく。少し歩いてから、バっ!っと駆け出すピピピピと足元から音がする。暫く進むが何ともない。

 これは試してみるかと目の前の草を見つめ、勢いよく地面から抜ける想像をして、<作画>スキルを発動させる。一度発動を経験した事ですんなりと感覚を掴んだ。すると想像したとおりに、目の前の草がポーンっと勢いよく土から抜け出し空中へ飛んだ。


「うおおおおお、すげええええ、おもれえええええ」


 興奮した山田はどんどん周辺の草をポンポン飛ばしていく。いくつかまとめて飛ばしたり、スピードを変えてみたり、空中で動かしてみたり、停止させられるかと試した草が、いくつか空中で止まっている。気が付くと結構な広場になっていた。

 山田は知らなかったが、ポンポンと飛ばしていた草は、ただの草ではなく薬草や貴重な物が混ざったりしていた。そんな事を知る由もない山田は草を飛ばすことに夢中になっていた。


「あちゃ~楽しくてついつい夢中になっちゃったよ。これ、また元にもどせるかな~」


 山田は<修正>というスキルを目の前に横たわる一草に使ってみる。すると草が光の粒子になり、生えていたであろう場所へと戻っていく。草の形になり光が収まると、もともとそこにあったように草が生えていた


「おお~すげ~!元通りだ~。これって自分にも使えるのか?」


そう言うと自分の左頬に使う。すると左頬の痛みが引いていき、触って見ると腫れが収まっている。


「おおーやったぜ!これで、怪我しても自分で治せるな」


 スキルに満足したのか元気に歩き出す。足元から聞こえるピッピッという音もいくらか楽しそうだ。


「あ、せっかくだし<デザイン>ってスキルも試してみるか・・・デザインって言う位だから何か生み出せるのか?」


 そういえば、自分の姿を確認してなかったなと、試しに鏡を作ってみようと思い浮かべる。すると目の前に光の粒子が現れかたちをつくっていく。光が消えるとそこにはシンプルな姿見が現れた。それを<作画>スキルで空中に固定して、自分の姿を確認する。男の子とも女の子とも取れる様な、中性的な顔立ちに黒髪黒目。少し目つきが悪い気がする。左頬の腫れは無くなっていた。ピンク色の服とズボンに靴。丸っこいクマの耳の様なケモ耳付きのフード。鏡の前でクルっと1回転すると、お尻に白くて丸い尻尾。改めて自分の姿を確認すると、なんとも言えない複雑な気持ちになり、ため息が出る。<修正>スキルで鏡を消し歩き出す。鏡は光の粒子になり消えていく。


「まあ、スキルをうまく使えば、身体の成長性0な子供というハンデをどうにか出来るどころか、なんとかなりそうだな・・・・・まあ、なる様になるさ」


スキルを使いながら道を作り、テクテクと歩く。子供の足とはいえかなりの時間歩き、大人をすっぽり覆うほどの高さの草が途切れ、視界が開ける。森との境界線に着いた様だ。どれくらい来たのか確認したくなり後ろを振り向くが、道の先の世界樹は相変わらずでかかった。


「いや〜結構遊んでたし歩いたけど、全然疲れないなー」


そう言って森へ入ろうと一歩踏み出すと、何か透明な膜のようなものを通り過ぎた感覚がした。不思議に思い、草原側へ戻ると同じように膜のようなものを通ったような感覚がした。何だ?と思い良く見てみると、うっすらと何かが世界樹を中心に、世界樹のかなり上の方までドーム状に覆っているのが分かる。が、通り過ぎるときの感覚が何だか面白いので、行ったり来たり、膜の途中でとまったりしていると、我に返る。ゴホンッと一つ咳払いをして、これは一体何だろうかと思いつつ、森へと向かう。自分がやってた事を思い出し子供の姿で良かったと少し思った。





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