c-29「闘争?」
白虎は元来臆病ゆえに慎重だった。野生に置いて臆病とは生存率を上げる為に必要な要素であり賢さの一つの証明であるが、そうならざるを得なかった。
気が付いたら森の中に居た。小さき身で頼れる者も寄る辺も無く、現状を確認する隙も無くする事もできず。組みやすしと思われたのか餌とみられ襲い掛かられ恐怖に震える日々。
一時も気を抜けない地獄へと放り出されたが、幸いにして生物としての強さと己が身を隠せるスキルを持っていた事、それらに準ずるスキルを習得したことで無用な争いを避け生き延びてきた。
やがて成長し種族としての強さが現れてもその気質は変わらなかった。
襲い掛かってくる数は格段に減ったが、強くなったことで襲い掛かってくる敵の強さが変わり大きな怪我を負ったことも有った。
それらを返り討ちにしているうちに気が付けば森でも屈指の強者へと至り西の主へと落ち着いた。
圧倒的で未知の力がこの森に突如現れて覆ってから、全ての生き物がその力の主の関心を惹かない様に身を潜めていた。
白虎もまたそうだった。その臆病さにより森でも上位に入る速さで隠れ息を潜めた。が、自分の縄張りに自分と同じ位の力を持つであろう何者かが突然現れた。しかもその存在を隠すこともせずに。
白虎は思った。これでは圧倒的な力の持ち主の気を惹いてしまうのではないかと、それだけに関心が行くならまだしも、自分に火の粉が降りかかるのは避けたかった。
また白虎は自分ではあまり気にしていないと思っていたが、西の主としてのプライドもあった。
白虎はイラついた。なぜこんな時にと、白虎は何時もなら慎重に事を運ぶが、圧倒的な力の持ち主の関心を惹きたくなかったため一瞬で形を付けようとする。恐怖と焦り油断と慢心。そして初撃を外す。
その後の攻撃も悉く失敗したことで、しばらく睨み合っていると何かに強烈に引き寄せられた。抗う事も踏ん張る事も考える暇もなく、気が付くと何か四角い台の上に争っていた黒い骨と向かい合っていた。しかも恐れていた圧倒的な力を放つ者の前で・・・
◇◇◇
「え、え~と、どちら様でしょうか?」
急に現れた大きな骸骨と白い虎に少しの困惑だけで誰かを訪ねる山田。その山田の顔の右横でふよふよと浮きながらアリーはしたり顔で腕を組む。
「は、は~ん。なるほどね」
「わかるの早いな~。で、何が分かったんだ?思春期の息子に彼女が出来た事を勘付いた母親みたいな顔して」
「彼女が家に遊びに来た時にお菓子とジュース持って部屋に入って行ってやろうか。あら~こんにちわ~何てとぼけながら、子供の頃の恥ずかしい話をしてやろうか」
「や、やめてくれ~」
「って、何やらせるのよ。くだらない例えしてんじゃないわよ。あんたの作った舞台が、この子達を引き寄せちゃったってわけよ。しかも強力に本人の意思を無視して。きっと争っていた一番力のあるやつを引っ張ってきたのね」
「成程な、そういう効果が付いちゃってるのか」
骸骨と白虎は大いに困惑し混乱し身動きが取れずにいた。目の前で行われている力の抜ける様な、のほほんとしたやり取りに現実感が全く無い、いや理解が出来ない。
白虎は思った。大きな力から身を隠す様に息を潜めていたのに、気が付けばその力の持ち主の前でさっきまで争っていた相手と向かい合っている。しかもその力の主は自身よりはるかに小さい身で、その大きな力に隠れてはいるが、自分よりはるかに強い個体も数体いる。何故?どうやって?と疑問が湧くがそれは思考停止に近かった。
奇抜な目立つ色は森では良い餌食だ。毒を持っている可能性もあるが、森では毒が効かなかったり克服したりする生き物もいる。そんな色で平然とし、やれるものならやってみろと言っているかの様な強者の圧倒的な自信と矜持を感じるが、かと言って何の力みも無く、相手を屈服してやろうと言う傲慢さも意思も感じない。まるで自然体。その色もそれが当たり前のように思えてくる。
だが言葉一つ一つに気を抜けばただただ跪き無心に祈り崇めてしまいたくなる様な畏怖畏敬を感じる。日向ぼっこをしている時の様な暖かさと気持ち良さを感じる。本能で理解する逃げることは出来ないと。骸骨と白虎は静観を選んでしまった。
「良し!分かった!君達がそんなに闘いたいなら存分にやんなさい。その為の舞台。俺達が見届けてやるから」
急な声にビクッとする骸骨と白虎。得心がいった様にうんうんと頷きながら観客席の方へ向かおうとする山田一行。
「あ、でも審判がいないとあれか・・・良し。今回は俺がやるか」
言うが早いか山田は舞台の中央へと向かい、アリー達は観客席の方へ向かう。白虎と骸骨が向かい合う真ん中を堂々と通って。
「って。琥珀と碧ってそんなにお腹ふくれてたか?」
「急に膨れました。でもまだまだ入ります」「余裕」
パンパンに膨れたお腹をさすりながらそう答える琥珀と碧。あの体であれだけケーキを食べたアリーのお腹は普通だった。
「そ、そうか食べ過ぎは良くないかもしれないけど、まあ良いか」
白虎と骸骨は自分たちを置いてきぼりにして交わされ進む事態に相変わらず困惑していたが、何が相手の気に障るか分からないので身動きが取れずに、視線を山田やアリー達へと忙しなく動かす位だった。その間を呑気に何々が美味しかった等と談笑しワイワイと腹をさすりながら向かう一行。
「ちょっと。こっち只の野っ原じゃないの、椅子ぐらい用意しなさいよ。あと舞台が高くて見えずらいわよ」
反対側へ着いたアリーからすかさず注文が入る。舞台は地面から高さがあるので背の低い一行はまるで壁を見ている様だった。
「わかったよ。これで良いだろ?」
山田は<レイアウト>スキルで雛壇状に3段程の観客席を少し離れた位置に作り出す。
1番下の段の高さがちょうど舞台と同じくらいの高さで少し広め、1番下に魔狼達が伏せをして陣取り、2段目の真ん中に2人掛けのシンプルな白いソファーと机、その机の上に多種多様なお菓子や飲み物が並び、ソファーに琥珀と碧がちょこんと座るが足が下まで届かずぷらぷらさせている。その両サイドに金太郎とヤマブキが舌を出しハッハと息をしながらお座りをしている。何故か金太郎は一点を凝視し口からは涎が垂れていた。
1番上にはみかん箱の様な箱の上にその人物の服に合わせたかの様な小豆色で革張りの小さなソファーと机。その机の上に数種類のケーキとジュースが並ぶ。チョコレートケーキの乗った皿を手ファンネルに持たせ、ソファーに座る妖精は不満そうに口を開く。
「ちょっとケーキが少ないんじゃないかしら?」
フォークで豪快にケーキをぶっ刺し口へ頬張るアリー。
「お前食べながらよく文句が言えるな。あんなに食っただろうに。別に無しでも良いんだぞ?」
舞台の縁から無防備に骸骨や白虎に背を向けアリーを嗜める山田。そんな無防備にしていても骸骨と白虎は動けないでいた。
「まあ繋ぎとしては良いわね、あっちに行けば沢山あるし」
はぁ~と1つ溜息をついてからやれやれと頭を振りつつ骸骨と白虎へと向く山田。背中からこれも美味しいわと能天気な声が聞こえて来る。
骸骨と白虎は付いていけなかった。戸惑っている間に何故か闘う事になってしまい、これは闘いたくないと言っても聞いてもらえないんではないか、怒らせてしまうんではないかと恐々としていた。
あれだけ争っていた骸骨と白虎はお互いに目配せをし何か不思議な一体感を感じていた。静観は悪手だった。
山田は骸骨と白虎の目線まで<作画>スキルで浮き上がると、1度手を叩き自分に意識を向かせ、それぞれの目を交互に見てからゆっくりと口を開く。
「それでは、ルールをというか、そういや君ら今更ながら俺の言葉っていうか言ってる事ってわかる?」
恐る恐るコクコクと首を縦に振る2体、2体には何故分かるのか分からなかったが、山田が以前食べた実で得た翻訳スキルのおかげだった。
「OK 〜OK〜それでは改めまして、ルールを説明します・・・・・」
山田の意味ありげな間と溜に、ごくりと白虎と骸骨の喉が鳴った気がしたが、骸骨の喉が鳴るかは甚だ疑問だった。
「有りません。何でも有りです」
何処からか現れた手ファンネルが骸骨と白虎の身体検査をするがそれっぽい事をしているだけで特に意味はない。凶器が見つかろうが何でもありだからだ。その間に山田はスキルでゴングと小さいハンマーを作り出し小脇に抱え、小さいハンマーを器用にクルクルと回す。
「それでは「お、お待ちください」
山田が開始の合図とゴングを鳴らそうと小さいハンマーを振り上げたところで大きな身体を縮める様に意を決した骸骨から待ったがかかる。白虎は喋れないのでガウと焦った様に1吠えしただけだった。
「え?骸骨君喋れるの?どうなってんだ?ってまあいいか。で、何何?何だ何だ?ルールが分かりずらかったか?」
骸骨跪き白虎が伏せ大きな身体を小さくして言った。
「わ、我々は特に闘いたいわけでは無くてですね」「ガウ」
山田は間抜け面で目をパチパチと瞬かせる。
「え?そうなの?何だよ〜言ってよ〜、こっちの早とちりか〜、何か緊迫感が出てたからてっきりそうなんだと思ったじゃん」
「申し訳ございません」「ガ、ガウ」
「もう〜気をつけてよね~、じゃあ引き分けね」
山田がカンカンカンとゴングを鳴らし「良しそれじゃあ気を取り直して」と言った瞬間、金色の帯が光り、骸骨が声にならない声いやカタカタという音を上げた。
山田がそっちを見るとその視線の先には金太郎が骸骨の腕の骨を一心不乱にガシガシ噛んでいる。
山田の良しに反応して金太郎が動いた。金太郎にとって骸骨は美味しそうな骨のオヤツに見えていた。
「こ、こらやめなさい金太郎。拾い食いは行けません」
そう言うが早いか山田は<作画>スキルを使って金太郎を骸骨から離しお座りさせると、ヤマブキが申し訳なさそうに鳴く。
「あらやだ、ごめんなさいねオホホホホ。ちゃんとご飯を食べさせてるのに、さっきもね一杯食べてたんだけど、なんだか私がお腹いっぱい食べさせてないみたいじゃない」
「何で急にそんなオカンみたいな喋り方と動きなのよ、あと飼い犬が他人を襲うとか人間社会だったら大問題よ。殺処分よ」
アリーの言葉にしっぽを股の間に入れ頭を抱えて震える金太郎。
「躾って骨が折れるわ〜」
「しょうもないんじゃ」
骸骨と白虎は金太郎の動きになにも反応出来なかった。しかも白虎の攻撃にも耐えた骨が簡単に傷をつけられた。
山田はしれっと齧られた所を修正スキルで治す、と同時にまた姿と種族も変えてしまう。
「よしこれで証拠は何もない」
「あんたまたやったわね、しかも関係ない虎っぽいやつまで一緒にあっさりと、あっさりしてればいいってもんじゃないからね。ま、いいけど」
と言って呆れつつケーキを一口食べるアリー。その視線の先にはメカになった骸骨と二足歩行の小さくなった白虎がお互いの姿をみて驚愕の顔をしていた。
投稿の仕方も分からくなってたな~思い出すのに苦労する位空くな~なんか色々破綻してそうな気もしますが。まあいいや。お疲れ様です




