Cー26「体力測定からの〜」
ドーン!ボゴーン!バゴーン!ズゴーン!メキャメキャメキャ!衝撃と何かが吹き飛ぶ様な轟音が響き、酷くひしゃげた何かの残骸が真っ直ぐに線を引いて飛び、広場の先の木々を破壊し土や草などを撒き上げる。
山田がスキルで作ったパンチ力とキック力をそれぞれ測る測定器、「パンチング佐藤君」と「キックのお兄さん沢村君」の残骸だ。
それを成した犯人の2人は申し訳なさそうにし、製作者は学習しないのか、ですよね〜といった表情を晒しながら、笑顔で吹き飛ばされて行く「パンチング佐藤君」と「キックのお兄さん沢村君」の残骸をスキルで消していく。
「天下一を競う武道会でサイヤの王子が吹き飛ばした場面みたいな感じだな」
残骸をスキルで消しながら独言る山田の我に帰る速度は上がっていた。
何故なら、50メートル走をさせてみれば土煙を巻き上げ瞬間移動かと見まごうばかりの速さでゴールし、「ボール牧」と命名したソフトボール位の大きさのボールで遠投をさせてみると、ドンっと言う衝撃音を響かせ雲を消し飛ばし一瞬で空の彼方へと消えて行った。
思い出したかの様に<トレース>スキルで線を引く様に「ボール牧」を追跡していた山田は、1周回ってきて自分の後頭部に衝突しないだろうなと思うくらいに衝撃的だった為か、弾丸の様な速度で空の彼方へ消えて行く「ボール牧」に申し訳ないと思いながらも<修正>スキルで消すと、遠くの空で指パッチンで弾けた様な微笑みをたたえて消えて行った。
「みんな、みんな笑顔で消えていきやがる。すまね〜」
「あんたが消してんでしょ」
そんな中でも何だか良く分からない賭けに勝ち、リクエストしたケーキを我関せずと食べ終わったアリーは、満足したのか小指を立てて紅茶を飲んでいる。
その下でアリーに僅かでも振動がいかない様に、動かずじっと待っている金太郎を見て山田はアリーに話しかける。
「お前そろそろ金太郎の頭の上にテーブルを置いて食うのやめてやれよ、金太郎が動けなくて可哀想だろ。見てみろよ地蔵みたいに固まってるぞ、年寄りがお供物して行くレベルだぞ」
「大丈夫よ。ケーキを食べたからって金太郎を甘く見ないで」
「何が大丈夫なんだよ、あと別に甘く見てねーし、たいして上手くもねーよ」
「何を言ってるの、ケーキは最高よ」
「いや、その美味いじゃなくって、って、思ったより面倒臭いやり取りだな」
「金太郎!さあ!このふし穴にあなたの力を見せてやるのよ」
アリーがビシリと山田に向かって指を指すと、お座り状態だった金太郎はすっくと立ち上がり辺りを軽く歩く。がアリーを乗せている頭を全く振動させずに動いている。
テーブルの上の物も全く振動せずアリーは優雅にお茶を飲む。
「え?すっご。そんなこと出来るのかよ、そういや金太郎に乗って移動してた時全然揺れなかったな」
「どう?舐めんじゃないわよ」
「振動を吸収するためか首から下がちょっと気持ち悪い動きになってるけど。ってそういう事じゃね〜よ。はいはい終わり終わり」
そう言うと<作画>スキルでアリーの使っているテーブルやその上にあるもの、椅子を道具袋へと仕舞っていく。
アリーはしょうがないわねとパタパタと山田の元へ飛ぶと頭に乗りねっ転がる。金太郎は緊張をほぐすかの様にブルブルと体を震わせる。
「今度は俺の頭かよ。どんだけ頭の上に乗るのが好きなんだよ」
山田はなるべく首を動かさずに自分の頭へと視線を向けるがアリーの姿は見えない。以前のやり取りで懲りた為頭に乗る事は許容していた。
「許容の範囲内さ、諦めと共に受容している訳じゃない。気がついたら許せる事が増えていく、それは1つの成長さ。そう、決して負けた訳じゃない。屈した訳じゃない。諦めた訳じゃない。成長なんだ」
自分に言い聞かせる様に目を閉じてグッと拳を握る山田。
「何ぶつぶつ言ってんだか、しっかし想像と違って何だかあんまりふかふかじゃないわね、ごわごわだしちょっと焦げ臭い気もするし。何だかガッカリだわ。そうね、もう髪型を戻して良いわよ」
想像していた様な寝心地じゃなかった様で、爆発アフロに寝っ転がっていたアリーは、上半身だけ起き上がり、足を伸ばしたまま後ろ手に体を支える様に座り、足首を内側に回したり外側に回したりしてプラプラさせている。
「何を勝手にガッカリしてんだよ。お前の寝心地の為に俺は爆発したままだったのかよ」
「じゃあ、このままでいれば?」
「いや戻すけども、全く。俺は金太郎みたいに気を使わないからな。後、落ちそうだからってまた勝手に取手を作るなよ」
「何よケチね〜」
「ケチとかじゃねーよ」
そう言うと山田は<修正>スキルで髪型をあっさりと元に戻し、手元のクリップボードへと視線を移す。アリーは山田の持っているクリップボードに挟まれた紙に何が書いているのか気になり覗きこむ。
「あんた何を書いてんのかと思ったら、全部測定不能って書いてるじゃない」
「み、見んなよー」
山田は慌てて体で隠すがアリーは髪の毛を引っ張り隠させない様にする。
「あいたたたたたたたたたた」
「何が俺にはわかるよ全然分かってないじゃない」
「測定不能って事が分かっている」
「それって何にも分からないって事じゃない」
「ぎゃあああああ」
ブチブチと髪のちぎれる音が痛みとともに山田の耳に届いた。
◇◇◇◇◇
「え〜と、それじゃあ皆さんには戦って貰います」
「唐突ね」
日がそろそろ傾いて空の色を変えてやろうかと肩をぶん回し準備している時間。光いっぱい浴びた森の緑が今日一日最後の頑張りとばかりに鮮やかに輝いている。
それぞれのマットの上に体育座りをする琥珀と碧、その横にお座りをする大型犬くらいのサイズの金太郎。その前に向かい合った状態で立ち、と言ってもスキルで浮いてはいるが、宣言する山田に当然と頭の上から突っ込むアリー。
「あの、もう体力測定は良いんでしょうか?」
おずおずと手を上げ琥珀が聞く。
「良い質問ですね」
どこかの解説者の様に悦に浸って答える山田。えへへと嬉しそうに照れる琥珀
「そう、俺位になると分かってしまうんだよ結果は」
「わー凄いです」「凄いです」
「俺は漫画やアニメ、ゲームで人生を学んだインテリだからな」
胸の前で両手に握り拳を作りキラキラとした眼差しで見つめる琥珀と碧。琥珀と碧が向ける賛辞と尊敬に、腕を組んだ山田はそうだろとでも言いたいかの様に何度も頷く。
「そりゃ測定不能だもんね。あんた何ドヤってんのよ。インテリの意味も分かってないくせに、せいぜいインテリアにでもなって部屋の隅っこにでも飾られときなさい」
すかさず呆れた表情のアリーが頭上からペシリと突っ込むが、その姿勢はうつ伏せに寝転がり両肘をつき手に顔を乗せ、足をプラプラと交互に曲げている。
「あーあー、そうですよ。結局俺のスキルで出した測定器をぶっ飛ばしてぶっ壊して終わりか、俺の培って来た常識じゃありえない、とんでもない結果を出すかだけだから」
山田の開き直る速度もどんどん上がっていた。
「すみません」「ません」
見るからに申し訳なさそうに落ち込む琥珀と碧に山田は慌ててフォローする。
「い、いやいや、何度も言ってるけど良いんだ。お前達はそのままで、ありのままで行ってくれ」
「「はい」」
バッと顔を上げキラキラとした眼差しで山田を見つめ元気よく返事をする琥珀と碧。
「まあ姿形や種族まで変えちゃったあんたの、どの口が言ってんだって感じだけどね」
頭上からチクリとツッコミが入るが、自分に都合の悪い事は聞こえていないふりをする山田。
「でもアリーのままで行けってあんた分かってんじゃないのよ」
頭上から機嫌の良い何か弾んだ声が聞こえて来たが、聞こえないふりはしなかった。
「え?え〜と?・・・・・・・・・・あ、あ〜そう言う事か、うわ〜、またかー、いや結果そうなっちゃったっていう恥ずかしいやつで」
「あんた偶には良い事言うじゃないの」
満面の笑みでバシバシと山田の頭を叩くアリー。山田はこれ以上訂正しようとすると良くないことが起こると、短い付き合いながら濃密なやり取りをした為に強く口を引き結び、その代わりに深く何かを飲み込む様に1つ頷いた。
気を取り直す様にヤマブキ達の方へ視線を向け声をかける。
「はい。皆さんも集合して下さい」
その声に少し離れて見ていたヤマブキや魔狼達が集まって来る。金太郎の横に並んでお座りをする金太郎と同じ大きさのヤマブキ。その少し後ろに魔狼達が座る。皆の視線が山田に集中すると口を開く。
「森には多分危険がいっぱいです。まあ、まだ滞在日数が短いからなのか、金太郎がボロ雑巾の様になっていたのと、恐ろしい毒毒しい虫の魔物に出くわしたくらいで、あれは恐ろしい虫だった。まあ、虫が恐れをなして逃げていきましたがね、それ以来一度もそんな場面に出くわした事は無いんですが、だからといってこれから先そんな場面に出くわさないとは限りません。なのでそんな時に、はわわわわ〜と口に手を当てて困ったり焦ったりしなくて良い様に自分がどれほど戦えるのかを知っておくのも必要だと思います」
「「はい」」「「ワフ」」
「そこで、私のスキルを使って色々な仮想敵と戦っていただきます」
そう言うと山田は<レイアウト>スキルで某ドラゴンボ○ルの闘技場の様な施設を一瞬で作り出す。
本家よりかなり大きめの四角い闘技場に、奥の建物の藁葺き屋根の上の看板には「山田一武闘会」と書いてある。
いつの間にか茅葺き屋根の建物の中に立っている琥珀達は驚いた様子で周りをキョロキョロ見回している。そうなるまでがいっさい認識できなかった。
テニスコート位の広さがある長方形の部屋の長辺には重厚な扉が2つ。1つは闘技場へ向かう為の扉が、反対側には外へと出入りするための扉が同じように付いている。部屋の四つ角には背の高い観葉植物が植木鉢に入れられ置かれている。
それぞれの短辺には丸い窓があり窓には十字に木枠がはめられているだけで気持ちの良い風が入ってくる。
部屋の真ん中には区切る様に長椅子と長机が幾つか置かれ、闘技場の扉に向かって右側にはまるでトレーニングジムにある様な機械が配置され、反対側の壁には様々な食べ物や飲み物や食器、何かの調理道具と言った物が壁際に並んだ机の上にずらりと並んでいる。
大きな梁が張った高い天井にはシーリングファンが2台並んでゆっくりと回っている。
「いやーごめんごめん、なんか勝手に移動させちゃって、ビックリさせちゃったな」
呆気に取られていた琥珀達は闘技場へ向かう扉とは反対の扉から入ってきた山田を見つけると近寄っていく。
「い、いえ少し愕きましたが、大丈夫です」「大丈夫です」
「建物や空間を作り出してそこへ範囲内の物や人を好きに配置できるみたいなんだ。因みに天候も昼夜も自由自在です。まあ、外装も内装も適当なんだけどね」
「凄いです。さすが山田様です」「です」
目をキラキラさせて尊敬の眼差しで見つめる琥珀と碧に、山田はそうだろうそうだろうと何の衒いも負い目もなく堂々と頷く。
「あらケーキがあるじゃない。それも色んな種類が。気がきくわね」
山田の頭の上に乗ったまま山田と一緒に登場したアリーは目敏く見つける。
「しまった。そんな気は無かったのに、って早っ!」
山田の後悔を聞く前にケーキを物色しているアリーは、食べたい物を手ファンネルに指示してトングの様な物で皿に取らせている。
なんだかんだでアリーの体のサイズに合わせてあるケーキも有る事から、と言っても平均的な消しゴム位の大きさはあるが、満更でもない山田だった。
「それはそれとして、こっちの飯の時間や習慣がどうなっているのかは分からないけど、俺的にはもう昼も結構過ぎたし、何やかんやのその前に飯を食べるかってなもんですよ。腹が減っては戦はできぬと言うしな」
「「はい」」「「ワフ」」
「自由に取って食べて飲んでくれ、金太郎達は手ファンネルに取ってもらってくれ」
そう言うとお腹の道具袋から数組の手ファンネル達を出すと手ファンネル達はそれぞれの場所へと向かう。
山田は率先して順番も種類もめちゃくちゃに置いてある雑多なビュッフェ形式の食べ物と飲み物を取りに向かう。そうしなければアリーの他は遠慮して動かないだろうと思ったからだ。その考え通りなのか、山田が動くと琥珀達も後についてくる。
「うわー凄い沢山有りますね」「良い匂い、美味しそう」「ワン」
キョロキョロと周りを見渡し目を輝かせる琥珀と碧。机は背の低い自分達用に料理が見やすい高さになっている。
どこかのアニメで見たことがある様な料理が種類も配置も乱雑に雑多に所狭しと並び、ファミレスのドリンクバーやタワー噴水型のチョコフォンデュまでも並んでいる。
そして魅惑のアイランドが二つ、一つはスイーツ。そちらはアリーが陣取り嬉しそうに満面の笑みで手ファンネルに指示を飛ばし、手ファンネルが持つ皿の上には何種類もの様々なケーキが綺麗に盛り付けられている。もう一つには採れたての様な瑞々しい野菜を使ったサラダが何種類も並び輝いている。
「山田様、あれは何をしているんですか?」
琥珀が机の端を指す方へ視線を向けると、壁から少し離した机で手ファンネルがステンレス製のボールに卵を割りかちゃかちゃとかき混ぜ調味料等を入れている。
火を付けた簡易的なコンロの上のフライパンにバターを挽くと溶けて良い匂いが広がり、そこへ溶いた卵を入れるとジュワッと良い音と共に卵とバターの匂いが更に広がる。
素早くフライパンを動かしながら卵を菜箸でかき混ぜつつ半熟状態にして行き、ひっくり返しながらラグビーボールの形に仕上げ皿に移しその上にケチャップを掛けると、綺麗なオムレツが出来ていた。
かと思えばその隣で分厚い肉を切り分け、鉄板で焼く手ファンネルが、さらにその隣では天ぷらを揚げる手ファンネルもいる。連なった机の先から良い音と匂いが漂って来る。
「出来立ては美味いからな、ってもここにある料理は全部出来立てな感じだけど、目でも耳でも楽しむって言う、まあアトラクション的な要素だな多分」
「凄いです」「です」「ワン」
「しかし手際がいいな〜手だけなんだけど」
まだ何を食べるかキョロキョロしている琥珀達を尻目に、山田は食器などが置いてある端っこの机へ向かいお盆を取りその上に皿を何枚か適当に乗せていく。
「はい皆さんお盆をとったら上に適当に皿や箸やスプーンやフォーク、ナイフ等を並べましょう、そうしたら食べたい料理を取っていきましょう」
「こういうのはセンスが出るからな」
そう言うと山田は何を取ろうか物色し始める。
大分と開きました。本当忙しいですね。
あんまり決めきれていないのはいつもの事です。後あんまり覚えてないや




