アイキャッチb「転生したら幼女の持つクマのぬいぐるみだった的な」
メアリーからアリスへと名前を変更しました。
「ふ〜危なかったぜ。ガキ、おっと、アリスだったな、大丈夫だ」
アリスは俺の言葉に恐る恐る目を開け周りをキョロキョロと確認して不思議そうに首を傾げる。
「あれ?え?何で?」
「混乱してるところわり〜が、苦しいから少し緩めてくれないか」
「あ、ご、ごめんなさい」
まあ、しょうがないよな、恐怖やら何やらで身体が硬くなって力が入っちまうよな、しかし、何で苦しく感じるんだよ。
「お嬢様あああああ」
お、そういえばあの老人が急いでこっちへ戻って来てたなって、は、はっや!足はっや!踏み出すそばから土埃が舞ってるぞ。しかもあんな戦闘の後に息も切らせずになんて爺さんだ。
「お、お嬢様大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
俺は近くに来た老人をまじまじと観察する。白い髪をバッチリ決めたオールバックは、あれだけ動いてたのに全く乱れていない様に見える。
執事服みたいなのに革靴か?服の上からでも鍛えている感がバンバン伝わるぜ。
見た目は爺さんといえばそうなんだが矍鑠としたというレベルでは無い、何というか、どんな職業や業種でも有る、職人や名人達人といった人達が纏う様な、独特な空気感。怖さといか、覇気の様なものを纏っているな。
腰に剣を佩いてるけど、高いのか安いのか良いのか悪いのかは俺には全く判断がつかん、柄もシンプルで何かの金属だろうけど分からんな。鞘は何の装飾も無い黒い革っぽいシンプルな拵えだ。
しっかし良く執事服であんな動きができるな、しかも全く汚れていないぞ。クリーニング費が抑えられるな。やったな。
老人がアリスの前へ片膝立ちでしゃがむと体を確認する。
「あ、爺。私は大丈夫だよ」
アリスは安心させるようにクルクルと体を回す。勿論抱き抱えられている俺も回るぞ。はいアンデュートロアー
「ご無事で良かったです。申し訳ありません。私の失態です。お嬢様から距離をとる様に上手く誘導されていた様です。しかし何が起こったんでしょうか」
ほっと息を吐き頭を下げる白髪の老人
「レオナルドがね、助けてくれたのよ」
「レオナルドとは?お嬢様が大事になされている確かぬいぐるみの名前でしたか、浅学なる爺やめにお教えくださりませんか?」
そう言うとアリスは俺を自分の顔の前に掲げる。多分満面の笑顔だろうな分かっちまうからな。
そうかいそういう紹介の仕方か、だったらこりゃ一発かまして度肝抜いてやらねーとな。
「オッス!オラレオナルド!ヨロシクな!」
右手を上げ軽快かつフレンドリーに挨拶する俺に、あろう事かこの白髪老人は剣を抜いて構えやがった。いや抜いたところも構えたところも分かりませんでした。気がついたら構えてました早過ぎだろ。こっわ。すんごい迫力。
やっぱりあれかちょっと馴れ馴れしくし過ぎたか、目上のものに対する礼儀みたいなのに五月蝿いタイプか。それとも俺の髪型がツンツンしてないからか?
「おのれ呪術の類か!取り憑いたか!その様な事までしてお嬢様の命を狙うか!」
あ、どうやら違うみたいだな。俺を何かの呪いとか霊的な物と思ってやがる。しかも悪い方の、ああ、でも霊的なものってのはもしかしたら合ってんのかも。
森の木々の隙間からの木漏れ日が刀身に当たりキラリと光り、その光が俺の目へと反射する。眩しい〜。
おいおい、お前がその気なら俺にも考えがあるぜ。一言言ってやる。その遠くなっていやがるのか、なってないやがらないのか分からないけど耳をかっぽじって良く聞きな。この耳くそ野郎
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、待て、ちょっと待て、俺はこいつの命なんて狙ってない」
威勢の良い啖呵を期待したかも知れないが、無理だ。いや、ビビってね〜し。ビビってるとかじゃね〜し。スキルが使えるんだからそんなに焦るなよとか使えよって思うかも知れねーがそれも無理だ。あの戦闘を目にした後じゃな一瞬でやられる自信があるぜ。って誰に対する言い訳だよ。でもあれ?おれ首切られたらどうなるんだ?縫えば元に戻るんじゃないか?
「黙れ!信用できるか!お嬢様こちらへとお投げくだされ爺が一刀の下に斬り伏せて見せます」
「ダメ!」
そう叫ぶとアリスは俺を自分の体で隠す。それは良いがさっきより力が入りすぎて、うぎゃあああアリス潰れてる潰れてる。バシバシとタップするが全く無視。おいおい審判どこ見てるんだ、タップしまくってるんだぞ、このままじゃワタが出ちまうぞ、ワタはワタでもハラワタじゃなくてふかふかの綿だけどな。実際綿が詰まってるのかは分からないけど。
「お、お嬢様危のうございます」
「ダメ!さっきもレオナルドが助けてくれたんだから」
「え?」
アリスは俺の必死のタップに気が付いてくれたのか、ようやく力を緩めてくれた、今だ!その隙を狙い俺はアリスの腕から地面へと飛び出し見事な着地を決める。
ふー、何度も潰されてたまるかよ。痛みはないんだが、この苦しさは何なんだよ。
それよりこれはチャンスだな、命がいくつあっても足りないようなこんな奴らと一緒にいられるかよ。
「おいおい爺さん。そりゃ無いぜ、アリスの命の恩人、いや、ぬいぐるみに。でもあんたの気持ちも分かる。ぬいぐるみが急に動いて喋って会話してるんだからな。得体が知れないよな。そこでだ、お互いにここでお別れって事で手を打たね〜かい?どうだい?それが1番の解決方法だと思うぜ」
このどことも分からない森に1人で、って、ぬいぐるみだけど1人と数えても良いだろ?良いよな?頼むよ、って誰の許可が必要なんだよ。
森に1人彷徨うってリスクはあるが、命あっての物種だしな。このスキルがあれば何とかなるだろ。俺は結構楽天家みたいだ、ポイント貯まりそうだな。
こんな命を狙われてるガキとあんないかれた辛気臭いジジイと一緒に居られるかよ。
俺はジジイの答えを聞かずに手を上げスタスタと歩き出す。2人とも状況の変化に口をぽかんと開けたまま見送っている。レオナルドはクールに去るぜ〜
ん?え?あれ?進めないぞ、何だこれ、一歩踏み出しても地面を滑る。
何度も何度も試すが踏み出す足は地面を滑る。やけくそになって走ってみてもその場走りの様になってしまう。
グヌヌヌ何だこれ、まるで見えない壁でもあるかの様に、ゲームで侵入できないエリアへ進もうとする時こんな感じだよな。
おいおいまさかあのガキが何かしてやがるのか?
俺は驚愕と困惑を持ってアリスへと振り向くが、相変わらずポカンとした表情のままだ、何かをしているそんな感じはない。
ん?て事は、あれ?あれれ?おい、おいおいちょっと待てよ、まさか、まさか、俺はこいつから一定距離までしか離れられないのか?
レオナルドはクールにされないぜ〜。
こなくそおおおおおど根性じゃああああ、ゲームでもなんかバグとかあってすり抜けられたりする所があるだろ、俺がデバックしてやるよ!と再度挑戦しようとした瞬間。
「う、うう、うううう、う、う、うわああああああレオナルドがあああ、レオナルドがあああ」
急に端を切ったかのようにアリスが泣き出した。瞬間
「うぎゃあああああああああああああ」
激痛が俺の全身を駆け巡る。焼かれた後に塩を揉み込まれナイフで滅多刺しにされた様な激痛に、地面を転げ回る。な、何だこれ、ま、まさかこいつが泣くと激痛が走るのか?やばい!やばい!な、何とかしないと、何とか泣き止ませないと。
「う、嘘!嘘嘘!冗談!冗談だよ冗談」
「ううひっく、ひっぐ、じょ、冗談?」
い、痛みが治ってきた?やっぱりそうか。
「そ、そうなんだ、ちょ、ちょっとしたドッキリだよ、俺がお前を置いて行くわけないに決まってるだろ」
「本当?」
「本当本当。仲が良いと冗談を言い合ったりするもんさ、でも今回はちょっと度が過ぎたみたいだな。いや〜初めてだったから加減がわからなかったよ。空気が読めないってやつだな。はははは」
くそ〜何なんだよ、何て手枷足枷だ、しかもどでかい鉄球付き。
「わはっはっは、これなら大丈夫そうですな、お嬢様申し訳ございません。爺めが間違っておりました」
1連の出来事を見ていた老人が一度頷いて笑い出しやがった。アリスに跪き懐からハンカチを取り出しアリスの涙をそっと拭くとハンカチをしまい立ち上がる。
くっそ〜大丈夫じゃね〜よ。喰らえ俺の怨めしい視線。略して怨め視線。
寝転がったままのぬいぐるみのそんな視線など意に介さず、というか伝わらずに立ち上がり汚れを払う俺に礼儀正しく挨拶する爺さん
「初めましてで良いですかな、レオナルド殿。私の事はセバスとお呼び下され」
「オ、オッス。オ、オラ、レオナルド、ヨ、ヨロシク」
満足そうに頷くセバスはアリスへと振り向き近くにあった大きな荷物を拾う。アリスは俺を抱きしめ頬を膨らませて文句を言う
「もう。冗談でも何処かへ行っちゃダメなんだからね」
可愛らしい目が充血している事に申し訳なく思う。このクマのぬいぐるみはアリスにとってとても大切な物なのだろう、ちょっと申し訳ない事をしたと少しだけ反省をした。
「色々語り合いたい事も有りますが、お嬢様レオナルド殿。新たな敵や魔物が来るかもしれません。この場を離れましょう」
その言葉にセバスが倒した黒尽くめの方を見るといつの間にか忽然と消えていた。
よし!離れよう!すぐに離れよう!てか、魔物もいんのかよ。何してんだ爺さんさっさとしやがれ。蹴っ飛ばすぞ。
セバスが大きな荷物を背負いアリスへと荷物を向けてしゃがむとアリスは俺をその荷物の頂上へとぶん投げる。
「ぎゃっ。お、おいおい随分乱暴だなやっぱりまだ怒ってんのか?」
「あ、ごめんなさい。いつもみたいにしちゃったの」
いつもぶん投げられてたのか、おいおいレオナルドお前あんまり好かれてないんじゃ無いか?
「次から気をつけてくれ。というか自分で登れるからな」
「は〜い」
その荷物をそそくさと登り荷物の上に後ろを向いて座り俺を抱き上げ、胸の前で抱きしめる。アリスが座れる様に改造されている様だ。それを察したセバスは立ち上がり飛ぶ様に森を疾走する。って、おいおい。は、早!早いぞ。
面白い様に木々が後ろへ流れていく景色に驚愕していると、揺れをあまり感じない事に気がつく。この爺さんアリスに気を使ってるんだな。
まあ良い今のうちに自分の能力の確認だ。大体こういう時はステータスの確認みたいな
名前ーレオナルド
種族ー?
職業ー声優
≪スキル≫
<言霊> <アフレコ> <アテレコ> <声色> <音>
≪称号≫
<ぬいぐるみ> <七色の声> <伝説のコント師?> <変幻自在> <転生者> <アリスの魂の友> <アリスの半身> <アリスの救済者> <アリスのヒーロー> <アリスのアイドル> <ゴッドオブボイス> <魔獣の王><声魂>
っていきなり出たな。名前はまあそうだよな知ってる。で種族が?って何だ決まってないのか?それとも分からないのか?職業が声優って何だかしっくり来るな。慣れ親しんだ感じだ。
スキルの<言霊>があれか、さっきの止めたやつと消したやつだろ。他のスキルは使ってみないと良く分からんな、使い方は何故かわかるけど。
称号も何か色々有るけど意味あるのか?称号<ぬいぐるみ>ってなんだよ、そりゃそうだろって、あ、やっぱり俺転生したんだな、まあそうだろうけど、アリス関係の称号が多くて、おいおい俺って魔獣の王様だったのか、どうりで威厳と気品が備わってると思ったぜ。
「ねえ。聞いてるの?ねえ」
自分のステータスと睨めっこしていた意識がアリスの声で戻る
「え?悪い悪い、何だった?」
「もう、アリスが何回も話しかけてるのに、何で無視するのよ」
アリスは可愛らしい頬を可愛らしく膨らませ抗議する。
「ああ、悪い悪い、ちょっと考え事をしててな、しかしなんだかお前も案外冷静だな、いきなりぬいぐるみが喋ったらびっくりするし、気味が悪いだろ」
「そんな事ないもんずっとお喋りしたかったんだもん。アリスが喋りかけても全然お喋りしてくれなかったんだもん。だから凄く嬉しいの」
「そ、そうかお前も案外悲しい、いや大物だな」
「だからいっぱいお喋りしようね」
「お手柔らかにな」
花が咲いた様な笑顔で嬉しそうに話しかけるアリスに嫌とも言えず、やれやれと森の木々が凄い勢いで遠ざかっていく景色を見ながらこれからどうなるのかとぼんやり考えるレオナルドだった。
声優さんすみません。




