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異世界鳥獣人物戯画  作者: エンペツ
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「へ?」


 俺が発した声はそんな間抜けな言葉だった。

 いや俺とは言ったものの、男なのかどうかもわからない、男なのか女なのか両方なのかはたまた中間なのか全く別なのか。子供なのか大人なのか老人なのか、様々な声が混じり合っていた。だが一人称は俺がしっくりくる。

 突然のブラックアウトから視界が回復すると、激しく混乱した。視線が低い気がする。何故確定ではなく気がするかというのは、自分が何者かも何者だったかも分からず、何故こんな事になっているのか全く分からない為だ。何者かだった感覚は朧げにあるのだがそれも確かなのか分からない。

もしかしたらこの視線の低さが普通だったのかもしれないのだが、それは恐らく無いだろう。

 何故なら何故か自分がどんな容姿か分かってしまうからだ。

 100人いたら100人がおかしいと言うだろう。が、長年その姿だったかの様に馴染んでいる。自分にとってその姿でも全く違和感がない不思議な感覚。



 今の俺はどうやら、クマのぬいぐるみのようだ。




「え?クマ?クマのぬいぐるみ?何だ何だどう言う事だ」


 混乱する頭で状況把握に努めようと腕を持ち上げると、視界に映る手は可愛らしいぬいぐるみの手だった。

 いや良いんだよ、可愛らしくても、丸っこくて可愛らしいけど、何だこのちょっと納得いかないというか認めたくない感じは、もっとワイルドが良いって・・・いや、そこじゃないだろもっと抗わないといけない事があるだろ。ぬいぐるみだぞぬいぐるみ。

 しかし、ぬいぐるみのはずなのに何故か関節もスムーズに動く、作った奴の腕が良いとかそんなレベルじゃないぞ。

 布なのか皮なのか不思議な素材でできた手を開いたり握ったりすると聞こえる擦れる様な潰れる様な音を聞きながらその可愛い手を見つめ、何故こんな事になっているのか答えの出ない不毛な問答に陥りそうになるが、ふと視線を感じる。

 振り返り見上げると驚愕に目と口をまん丸に大きく開いた幼女と目が合った。


「よ、よう」


 俺の腋を通す様に白く細い腕が回され、宝物の様に幼女に大事そうに抱っこされている状態を漸く確認できた俺はそんな声を絞り出した。


「動けないと思ったらそういう事か、驚くのは分かるが少し力を緩めちゃくれね〜か?」


「あ、ごめんなさい」


 良かった言葉は通じるみたいだ。

 幼女の腕が胸にめりこんで潰れている。これは何者かだった頃の感覚だろうか、痛みはないが何故か少し苦しい気がする。


「ふー楽になったぜありがとさん」


 幼女の肌は新雪の様に白く光り輝き目は左右で色が違う、右がまるで太陽の様な黄金で、水の中に揺蕩う様にユラユラと煌めいている。左が血の様に真っ赤まるで血液が流れているかの様に揺らめいている。唇は桜を拭いたかの様に淡く。髪の色はキラキラと輝く銀色でそれを2つに分けた三つ編みにして、赤い紐と金色の紐で結んでいた。服装はこの角度では良く分からんな。見窄らしく無いが豪華というわけでも無いそこそこの服がそれなりに見えるのはこの子の為か、モデルが良いと良く見えるよな。

 幼女から花の匂いがする。これは何の花だったか。てか匂いも分かるのか

 向き合う様に目の前の高さに俺を持ち上げると、その白い頬を桃色に染め目をキラキラさせながら口角を大きく持ち上げ、可愛らしい唇が踊り出す。


「レオナルドあなた動いて喋れるようになったのね」


「レオナルド?」


「そうよあなたはレオナルドじゃない忘れちゃったの?」


「レオナルド?クマのぬいぐるみにレオナルドって、レオナルド熊かよ」


「あなたはレオナルドクマじゃなくてレオナルドよ」


「あ、悪い悪い、そういう事じゃね〜んだ」


 俺のくだらない戯言に不思議そうに首を傾げる幼女。何故か絵になるこれは将来男を惑わすとびっきりの美人になるだろうな。

 っとそんな事はどうでもいい。レオナルド熊とか何故俺がそんな事を知っているんだ?う〜ん分からない。


「あ、ああ〜うん声も何だか自分でもしっくりくる声に落ち着いたな」


 と、渋い声を出すクマのぬいぐるみ事レオナルド俺。

 誤魔化す様に一つ咳をして周りを見渡し、ようやく周りの様子を確認する。案外動揺していた様だ。いやそうだろ、これで落ち着いてる方がおかしい。クマのぬいぐるみだぞ。取り乱して叫び出さないだけマシだろ。俺は案外大物かもしれない。

 幼女は大木を背にしその根元にペタリと座りこんでいる、左右にはその木の根が壁の様に張り出し地中へと向かって行っている。袋小路だ。


「それで、一体どうなってんだ?自分のことは分からないが色んな知識だけはあるという、何だかイチモツの位置が定まらない様な気持ち悪さがある、って何だ?何か戦ってるじゃね〜か」


 そんな独り言も周りの音で中断する。少し離れた位置で金属音と地面を蹴る音、何かが衝突する様な音、くぐもった声が聞こえる。

 音の聞こえてきた方へ首だけ動かし視線を向けると、

 薄暗い森の中、我こそが森の主だと主張するかの様に、大きさを競い合う様に乱雑に痛いくらいに怒張する大木達。おっとイチモツなんて言っちまったからそんな風に見えちまったぜ。

 その木の大きく茂った枝葉の影の中で金属と金属がぶつかり合う音に火花が散る。

 目を凝らしてみるとどうやら何者かが戦闘中のようだ。顔を布で覆い隠しナイフを煌めかせる黒ずくめの者達が見えるだけで3人。やられたのか倒れているのを入れると5人と、執事服の様なものを来て剣を持った白髪をオールバックにした老人が戦っている。

 黒ずくめが老人を囲み、多勢に無勢ながら老人は幼女の方へと黒ずくめを行かせない様に庇い余裕を持って対処している。両陣営ともおおよそ人の動きとは思えないほどの速さだ。

 いやいやなんだあの動き人間じゃね〜。いや人間じゃないのは俺だけど。っと幼女がまた俺の胴体を締め付け始めやがった。

 ん?なんだ?これは恐怖と不安?悲しみ?あの老人への信頼と言った幼女の色んな感情が伝わってくる。何だ?伝わって来るなんてもんじゃないぞ、流れ込んでくる。

 おいおいこの幼女の感情が自分のことの様に分かっちまうぞ。まあ、つっても自分の事じゃないからすごく冷静に受け止められるんだけど、だからと言ってあまり気持ちの良いものではないな。


「おいおい、ガキ一体全体これはどういう状況だ」


「ガキじゃないもん、アリスだもん」


 幼女の名前を知った瞬間に、戦闘は終了した。老人の圧勝だった。老人は剣を血振りし鞘に納め周囲を警戒しながらこちらの方へと向かって来る

 ガサリと音がして俺達の上から黒ずくめの男が降って来た。手足を大の字に広げ、目だけ出ている覆面から見える充血したその目から十分な殺意が感じられる。

 黒ずくめの体から顔から四肢から全てが、筋肉や骨や健等が折れたりちぎれたりする音をさせながら大きく膨らみ大きな音を立て爆発した。血や肉片の中から針や鉄片が指向性を持って雨霰の様に俺とアリスへと向かって来る。左右は太く高い根に挟まれ逃げ場がない。

 少し離れた位置にいた老人は慌ててアリスへと駆け寄るが間に合いそうにない。

 アリスは目を伏せ俺を抱きしめる。俺はアリスの肩越しから乱暴に腕を振りまわし勇ましく叫ぶ。


「ちょ、ちょちょちょ待て!待って!ストップ!スト〜ップ!」


 数秒後にくるであろう現実から目を逸らす様に目を伏せながら。




 何が何だか訳もわからず死ぬのか、ぬいぐるみだから壊れるって方が正しいのか?が想像していたタイミングに衝撃が来ない事に恐る恐る左目を開け、右目を開け、お、ぬいぐるみなのに瞬き出来るぞ。って今は良いか。

 首を上に向けると、血や骨、血管、肉片、脳漿、内臓、針や鉄片、何かわからない物etcが広範囲へと降り注ぐ様に空中で静止している吐き気を催す様な光景が。

 う、うげ〜こりゃやってる最中の浮気現場に遭遇した位ひで〜光景だな。ぬいぐるみの体のおかげかそこまで精神的にこね〜けど、俺に精神があるのかってやめとこうこういう思考は。これはあれだよな俺の能力って事で良いんだよな。って考えてもしょうがない、この光景はあまり見続けていたいものじゃないし、試してみるか。


「消えろ」


 俺が発した。言葉は空間を震わせ衝撃波の様に広がり、空中に静止した飛び散った黒ずくめのetcといった対象だけを綺麗にかき消す。

 お、おお〜。自分のやった事とはいえたまげたなぁ〜。まるで初めから何もなかったかの様に消えちまった。

 しっかしこいつ等どんだけ殺そうとしてんだよ。狙われてんのは老人よりガキの方だな、この子に何をされりゃ〜あんなえげつね〜自爆出来んだよ。

 ・・・こりゃやべーな。やべー臭いがプンプンだな関わらない方がいいな。俺の灰色の脳もそう判断してるぜって脳みそあるのか分からねーが、多分綿だろうな、やめよう何か悲しくなる。

って俺凄い冷静だな、案外大物かもしれないってこれはもう良いか。


「お嬢様ああああああ!」


そんな叫び声と足音に思考の底に沈んで、いや浅瀬から引き戻された。





遅ればせながらあけましておめでとうございます。

いつもの事ながら大分空いたなぁ〜、色々バタバタしてました。


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