C-24「体力測定3」
山田はクリップボードとペンを道具袋へ仕舞う。眼鏡は道具袋にしまったままだ。ショッキングな事が起きすぎてキャラ作りが馬鹿らしくなった様だが髪型が爆発アフロなので今更だ。
バチンっとテレビのスイッチを入れると画面の端から先程のデフォルメされたキャラクターの琥珀、碧、金太郎、そして新たにアリーが元気よく出てきて並びお辞儀をする「まあまあね」とアリーが独言るが、顔は嬉しそうにニマニマと笑っていた。
お辞儀から体を起こすとそのままテレビ画面からバン!と外に飛び出し、空中で高速回転すると3点着地を鮮やかに決める。
それぞれのキャラクターの背の高さはキャラ琥珀と金太郎が山田の腰辺りくらいの大きさ、碧がそれより少し低く、キャラアリーはアリーより少し小さい位だ。
「「わあー」」
と2人とアリーから歓声と拍手が上がり、金太郎の尻尾が大きく揺れる。
(そういえば、映画から登場人物が出て来る映画があったな)
キャラクター達は再びお辞儀をすると、キャラ琥珀が白いテープを床に貼り、等間隔の平行な3本線を作る。
キャラ碧が目の前の白い三本戦のところへ向かい、真ん中の線を跨いで構え、他は周りに陣取りキャラアリーがタイマーを持ち、キャラ琥珀が野鳥の会や交通量調査が持っていそうなカチカチと計る手持ち式のカウンターを持つ。
「それでは、次は反復横跳びをやって貰います」
ワン!
山田の声を合図にキャラ金太郎が吠えキャラアリーがタイマーを押し、キャラクター碧が右に跳び線を跨ぐ、真ん中に戻り線を跨ぎ左に跳び線を跨ぎ、戻り右に跳びと往復し繰り返す。
その回数を数えるキャラクター琥珀。キャラクターアリーが指を3本立てた腕を上げ、1本ずつ減らしていき振り下ろす
ワン!
その振り下ろしにキャラ金太郎が吠えると動きを止めるキャラクター碧。額を拭い、それぞれのキャラクターが横1列に並び1度お辞儀をすると、琥珀と碧から大きな拍手が起こる。回れ右をしテレビへと飛んで戻っていく。テレビの中でもう一度整列しお辞儀をすると手を振りながら画面端へと消えていき山田がテレビのスイッチを切る。
琥珀達は少し残念そうな顔をする。
「それでは、今見てもらった様に、あんな感じでやります」
「「はい」」
そう言うと山田は琥珀達の後ろに回り少し長めの3本の線を<作画>スキルで床にひく。琥珀達も立ち上がり山田を追う。
「線の幅はそれぞれ1メートル位で良いよな」
線を引き終わった山田は何に納得したのか1度頷き、琥珀達の方を向く
「とりあえず、いきなりもあれだから1回どんな感じか試してみるか、じゃあ碧が前で、琥珀が後ろに並んでくれ」
「「はい」」
真ん中の線を跨ぎ前に碧、後ろに琥珀が並ぶ。山田は2人から少し斜めの位置に陣取り、その右隣に頭の上にアリーを乗せた金太郎がお座りをする。
「軽くどんな感じか試してみてくれ、じゃあ、始め」
パン!と手を合わせて音を出す山田。その合図と同時に動き出す碧と琥珀。
「え?え?え?え?速い速い速い」
碧と琥珀の身体が一瞬ぶれたかと思うと、3本の線の上を2条の帯が行き来し、タキュタキュタキュタキュタキュタキュという音が聞こえる。
床を蹴ったり着地したり、体育館シューズが床と擦れているのであろう音が、あまりにも早すぎてマシンガンをぶっ放した音の様に聞こえている。
その動きに風が起こり山田とアリーの髪や服、金太郎の毛をなびかせ、体育館シューズと床が擦れた臭いも風に乗り鼻腔を刺激する。
「ス、ストップ」
その声にピタリと2人が止まると風が吹き抜けて行く。
「ピタリと!」
2人が何のブレも無くピタリと止まった事に驚く山田。
「えっと、軽くだよね?」
「「はい」」
「だよな〜、そう言ったもんな俺が」
「「はい」」
「す、凄いな・・・・・ちょっとこれだとあれだな、線の幅を広げてみるか、ちょっと待っててな」
そう言うと山田は床にした場所から移動し、離れた位置に<デザイン>スキルで学校の運動場の様な場所を作り、線を引き始める。
「これだけ線と線の幅が有れば大丈夫だろ」
線と線の間をそれぞれ約10メートル程に広げた山田は琥珀達のもとへ戻ると、琥珀と碧を運動靴に履き替えさせ、線の真ん中にスタンバイさせる。
山田は金太郎とアリーと共に全体が見渡せる少し離れたところに陣取る
「じゃあ、またどんな感じか試してくれ、結構広げたからな」
「「はい」」
「始め」
の合図と共にドンと音がする。碧と琥珀が動いた方とは逆に爆風が起こり砂塵と砂煙が舞う、白い線の上をまた帯が2条行き来する。
2人の動きで砂煙が広がり舞い、それを二条の帯が切り裂きまた砂煙が舞うというのを繰り返している。
「や、やめ」
山田の合図に2人はピタリとまたなんのブレもなく止まると、風が起こり砂煙を綺麗に吹き飛ばす。
「凄いな距離とか全然関係ないし、運動場にしたのはミスだったな」
山田は琥珀と碧を近くで待機する様に言い、運動場だったところを<デザイン>スキルと<修正>スキルで体育館の床に変え、同じように線を引き、料理で使うステンレス製のボールを2つ<デザイン>スキルで作る。
「じゃあ、このままだとあれだから、このボールに水を入れて頭の上に乗せて、ボールから出来るだけ水がこぼれない様にさっきのをやってもらいます」
「「はい」」
「じゃあ、何度も履き替えさせて悪いけど体育館シューズに履き替えて、線の上に集まって下さい」
「「はい」」
山田はボールを<作画>スキルで自分の胸元あたりに並べて浮かべ、さらに水をボールのそこから湧水のようにコポコポと生み出し、ギリギリまでとはいかない位の量で止め<作画>スキルでその位置に印をつける。
現在の自分がスキルで浮いている状態からさらに浮かぶと、真ん中の白線を跨ぐ様に並ぶ2人それぞれの頭に水の入ったボールを乗せる。
「それ何か意味あるの?」
金太郎の頭の上のアリーが呆れ顔で山田に問いかける。
「分からん」
「でしょうね。2人がビシャビシャになっちゃうんじゃない?」
「それもそうか」
「「大丈夫です」」
琥珀と碧の2人は頭の上のボールを自分の良いと思う位置に調整していたが、山田とアリーの会話に反応する。
「え?大丈夫なの?」
「「はい」」
自信満々に答える琥珀と碧
「まあ、2人が良いなら良いんじゃない?」
「そうか?じゃあ、それで行ってみようか」
「「はい」」
山田と金太郎、金太郎の頭に座るアリーは少し離れた位置に戻る。山田は腕をスッと上げ準備を促す。
「じゃあ、始め」
バッと下ろした腕に合わせて、2人が動き出す。2人が動いた方とは逆に風が吹き抜けると、タキュタキュタキュタキュタキュタキュタキュタキュとマシンガンの様な音と共に、二条の帯が線の上を行き交う。
「ええ〜これ溢れるのお構い無しじゃん。ストップストップ」
その声に水をこぼさない為にかフィギュアスケートの選手の様に回転してから止まる琥珀と碧。が、2人のボールから2滴程水滴が飛ぶ。
「「ああああ」」
それを見た2人は凄く悔しそうに残念そうな表情になる。山田は2人に近づき2人の様子を伺うと髪も服も全く濡れていない。
「え?まじか?全く濡れてない。溢してない?何処の藤〇豆腐店だよ。まあ、こっちはボールだし車じゃないけど」
山田が浮き上がりボールの中をのぞくと同じ量の水が残っていた。
「ええええ?きっちり残ってる。どういう体幹してんの?てか体幹が強いとかいうレベルじゃないな、物理法則どうなってんだ」
「でも少し溢してしまいました。すみません」
「すみません」
「え?溢してたの?」
「はい、最後止まる時に2滴ほど溢れてしまいました」
「ました」
「いやいやいや、凄すぎでしょ。そんな2滴くらい気にしない気にしない」
頭の上からボールを取り、中の水を見つめながら凄く悔しそうな顔をしている2人に、山田はこんなふざけた思いつきに、こんなに真剣にやってくれている2人に申し訳なく思っていた。
「じゃ、じゃあ、反復横跳びと水載せバージョンは良いや、次に行きたいと思います」
「結局お試しで終わったけど何か分かったの?」
アリーは金太郎の頭の上からパタパタと飛び、碧の持つボールに入った水を見つめながら聞く。
「まあな、俺くらいになるとな」
そう言うと山田はクリップボードとペンを取り出し、挟まれた紙にサラサラとペンを走らせる。アリーの「どのくらいよ」と言う声はペンの音で掻き消し聞こえないフリをする山田だった。
確かアフロだったよな~。違っててもまあいいか




