C-23「体力測定2」
山田はクリップボードとペンと眼鏡をお腹の道具袋に入れると、<デザイン>スキルで懲りずにまた円盤部分に、太い眉と眼光鋭い目、への字口の頑固そうな顔を付け、持ち手につながる鎖部分を髪に変えた背筋測定器を出すとやり方を教え、まず琥珀にやらせる。
余裕の表情をしている背筋測定器の持ち手を琥珀が両手で掴みゆっくりと力を入れていくと、はじめは余裕に数字を伝えていた背筋測定器の顔の眉にしわが寄り、鼻頭にも皴が寄り、への字口から何をそんなに食いしばっているんだというような歯が見える。顔が引っ張られるように伸び、鎖から髪の毛に変わった部分からブチブチと音がする。
バキッと音がして根元の部分がもげ顔が上空へと高く上がる。その顔は何かに満足したようないい笑顔だった。
「まあ、思った通りですな」
「す、すみません。また壊してしまいました」
申し訳なさそうに謝る琥珀。
「いや良いよ良いよ、そうなるだろうと思ってたし、むしろそうじゃないとな。う〜ん、道具を使った測定はやめておくか」
琥珀から残骸を受け取り、飛び散った破片等も拾い<修正>スキルで消していく。
「じゃ、じゃあ気を取り直して上体逸らしを始めます」
「「はい」」
「ワン」
と元気よく返事をする2人と1匹
「元気があって大変よろしい」
そう言うと山田は少し離れた地面に、<デザイン>スキルで十畳程の体育館の床に似た物を作りその床の上に緑の色のヨガマットの様な物を二つ並べ、体育館用のシューズに履き替えさせた2人をそのマットの上に座らせる。
2人はちょこんと体育座りをしている。
その少し後ろ、2人の間に芝犬位の大きさになった金太郎が座り、その頭の上にはいつの間にかアリーが陣取っている。
アリーは足を投げ出す様に伸ばし、後ろに両手をついた座り方で、かかとを軸に足をふらふらさせている。
山田は更に、木の温もりを感じ昭和の匂いがする昔懐かしい茶色いブラウン管風のテレビとテレビ台を作り出し2人と1匹から少し離れた正面の位置に置く。
見やすい様に50インチ程に作ったそのテレビのスイッチをバチンと入れ、ガチャガチャとダイアルを回すと、琥珀と碧と金太郎の2人と1匹を2等身にデフォルメしたキャラクターが画面に映る。もちろんデフォルメされた2人も体操服だ
ワアーと驚き目が輝く琥珀と碧と大きく尻尾を振る金太郎。自然と拍手が起きる。
「それでは上体逸らしのやり方とか色々説明します」
山田がそう言うとそのキャラクターが手を上げ、分かりやすい様にか、キャラクター琥珀が横から見える様にうつ伏せになり腰の辺りに手を置き、キャラクター碧がキャラクター琥珀の足首に手を置く。
琥珀の上半身が反り上がって数秒止まると、キャラクター金太郎が前足で器用に地面と顎の距離を上体反らし計で測る。
「おお〜」
と何故かまた拍手が起きる。
「この様にどれだけ反れるのかを調べます・・・・・多分」
画面の中のキャラが並んでお辞儀をすると、手を振りながら画面の端へと消えて行く。それを見送ると山田はテレビを消す。すると琥珀達は慌ててテレビの横から裏へと回りこみぐるりと一周する。
「あ、あの山田様、あの子達消えちゃいました」
悲しそうな顔で山田へ向く姉妹。
「え?あーなんというかお約束なリアクションだな、別に消えちゃったわけじゃないぞ、ちょっと休憩してるかな、また出て来るかもな」
「そうなんですか、テレビの中に住んでるんですね」
(共有されてるわけじゃないのか?それとも形と名前は分かるけど、どんな物かは分かってないと、まあ、それは俺も同じ様な事があるしな)
「ちょっと何であたしは出てこないのよ」
すかさずアリーから不満が飛んでくる。山田は声の方へ振り向く。
「何だ出たいのか?」
「出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい出たい」
と金太郎の頭の毛を毟っては投げ毟っては投げながら転げ回り暴れるアリー、キャインと1鳴きしたが我慢してじっとしている金太郎。
金太郎の毛がキラキラと光を反射しゆっくり舞い、どんどんでかい円形のハゲになって行く。
「分かった、分かったから。金太郎の毛を毟るのはやめなさい」
アリーは納得したのかパチンと金太郎の禿頭を一度叩くと、パタパタとテレビの上に飛んでいく。
「びっくりするわ、そんなに出たかったのかよ」
山田は情けない顔で見つめてくる金太郎のハゲを<修正>スキルで直し優しく撫でてあげると元気になった。山田は一度深呼吸をする。
「では気を取り直して。やり方は分かりましたね?」
「「はい」」
「じゃあまずは、琥珀から。俺が測るから、碧は琥珀の足を押さえて動かない様にしてくれ」
マットの上にうつ伏せになり腰のあたりに手を置く琥珀とその足を抑える碧。山田は測りを用意する
「それではお願いします」
山田の声にゆっくり上体が上がって行く。
「おお、結構上がるね〜」
順調に反り上がっていく琥珀
「え?そんなに反る?え?いや結構いってるぞ、90度位はいってるぞ、え?まだ行くの?」
それ以上曲がると危ないんじゃないかという位にどんどん反っていく琥珀。山田は止めようか迷ってしまう。
自分が修正したとはいえもしかしたら結構な反りポテンシャルを持っているんじゃないかと、そんな考えに意識を奪われていた間に琥珀の背中と腰の辺りからバギボギゴキと音がする。
見ると白目に口から泡を吹き、言葉にならない何かを呻き、痙攣しながら限界以上に曲がって2つに折り畳まれようとしている。
「ダメダメダメダメ!ストップ!ストップ!」
明らかに何かが折れてる音に慌てて止める山田。すかさず<修正>スキルで治す
「そういうのじゃないから!無理するとかじゃないから!折り畳むとかじゃないから!」
「も、申し訳ありません。頑張ろうと思いまして」
琥珀はうつ伏せに寝ていた状態から体を起こし謝る。
「目を離した俺が悪いけど、碧も止めてくれよ〜」
「がんばれって思ってました」
琥珀の腰あたりをさすりながら答える碧。
「そ、そうなんだ。だよな」
「はい」
「いい笑顔」
満面の笑顔で返事をする碧。つられて山田も笑顔になり力が抜ける。
「その心意気は買うけど、やめて。心配になるから。めっちゃ痛いだろ?てかもう痛いとかいうレベルじゃないだろ。変な汗出たわ〜。もう良いや、じゃあ次は碧」
「はい」
「ダメダメダメダメ!見てたよね!今さっきやりとりしたよね!何でやろうとしちゃうかな〜」
碧にやらせるが、琥珀と同じ事になりかけたのでその前に止める。
「ごめんなさい、頑張ろうと思って」
「いや、こんな思いつきに頑張ってくれるのは嬉しいけど、無理はしちゃダメだから、てか無理とかってレベルじゃないけど、なんなのその意思の強さ。もう上体反らしは終了です。マットの上に座ってください」
山田はそう言うとテレビの所へ戻る。2人はまたそれぞれのマットの上に座り、金太郎もさっきの位置に陣取り、アリーもまた金太郎の頭の上に座る。
「それじゃあ、気を取り直して次は前屈と行きたい所だったけど、何か嫌な予感がするのでやめておきます」
山田はお腹の道具袋からクリップボードとペンを取り出しサラサラとメモをする。
金太郎のイメージを載せました。が、ちょっとリアルになってしまい、もっと漫画、アニメチックにしたいな~と思ったんですが、まあいいかな~と。でもおもくそゴールデンと狼だもんな~




