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異世界鳥獣人物戯画  作者: エンペツ
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C-21「準備運動は大事」

ドゴーン!という音が何度も森に響く。衝撃波で地面が、大気が震え、土埃が舞い、悲鳴の様な音を上げ木々が折れ吹き飛ぶ。

 山田によってゴブリンからラブリンへと変えられてしまった姉妹が、飛んだり跳ねたり、殴ったり蹴ったりと、能力確認の為に暴れている。

 彼女達が簡単に吹き飛ばしているのはただの木ではない。鉄よりも硬くマナを豊富に取り込んでいる人の世にとっては稀少な木だ。とはいえこの森には腐るほど生えているが。その折れた木を手ファンネルがいそいそと拾い一箇所にまとめている。





 山田はとっくに冷えてしまった食べかけの朝食をかき込むと姉妹の能力の確認を始めた。

 山田と姉妹が向かい合い話をしていると、何かが始まる気配を掴んだのか金太郎がガバリと身を起こす。


「あ、起きた」


「起きたわね」


 アリーは山田にテーブルの上に自分専用の小さなソファーを作らせ、そこに左側を下にして涅槃像の様に横になり煎餅をかじっている。

 金太郎は1度右後ろ足で顔を掻いてから、立ち上がり伸びをすると、山田達が見ていることに気が付き、尻尾を軽く振りながら山田の方へと向かい近くにお座りする。山田はそんな金太郎の頭を優しく撫でる。そんな様子を眺める姉妹達はもう金太郎達に怯える事はなかった。


「あ、そうだった、自己紹介とかまだだったな。こいつは金太郎だ。で、金太郎この子達は、向かって右が姉の琥珀、左が碧だ、皆んな仲良くする様に」


「ワフ」


 と尻尾を振り元気よく返事をする金太郎


「はい。金太郎様よろしくお願いします」


「します」


 そう言って頭を下げる姉妹。


「おいおい、こいつに様なんていらないいらない。敬称は不要だぞ。敬称略でいいぞ」


「え?ですが」


「と言っても、まあ好きに呼べば良いよ」


「では金太郎さんで」「さんで」


「良いんじゃないか」


「はい」「はい」


「ワフ」


「で、向こうにいるのが金太郎の母親のヤマブキとその配下の魔狼達だ」


「ヤマブキさん、魔狼さん達もよろしくお願いします」


 と頭を下げる姉妹。ヤマブキ達は立ち上がり山田の方へやって来て金太郎の隣に並び座る。


「で、あっちにいるのがアリーで、ご存知俺が山田だ」


 アリーの方を肩越しにサムズアップで指差してから自分を指差す山田。アリーは煎餅を持ち上げ挨拶の代わりにする。


「はい、よろしくお願いしますアリー様、御主人様」


 アリーを様ではなく、さん付けで呼ぶとブチギレるんじゃないかと内心不安だった山田だが、琥珀は何かを感じ取ったのか、しっかり様付だった事に少しだけ安堵した。


「その御主人様とか辞めてくれない?むず痒くってしょうがないや」


「でも御主人様は御主人様ですから」


「いやいや」


「でもでも」


 とすったもんだの挙句。山田様呼びに決まった。


「それで、何をすれば良いんでしょうか?」


 ひと通りの紹介が終わったところで姉の琥珀が山田に問いかける。


「その前に2人には動きやすい服に着替えて貰いま〜す」


 そう言うと山田は簡易的な着替える場所を<デザイン>スキルで生み出す。4面を木で囲まれ、1面には内側から鍵を掛けられる外開きの扉が付いている。扉を開けると式台があり、中は姉妹2人が入っても十分に着替えるスペースがある。明り取りの為に天窓があり、足触りの良い淡い緑色の絨毯がひかれ、扉の向かいに姉妹の背に合わせた壁掛けの棚があり、棚の間には姿見が置かれている。棚にはそれぞれ着替えの服が入った木で編んだ茶色い浅いカゴと、何も入っていない着ている服を入れる為のカゴが2つ並んで置いてある。

 姉妹は恐る恐る扉を開けると靴を脱ぎ中に入る。扉は閉めずにキョロキョロと中を見回し、棚に置いてあるカゴの中の服を取り出す。不思議そうに身体の前で服を広げると胸元に、こはく、あお、とそれぞれの名前が書かれた布の様な物が張り付いている。袖と襟の縁が紺色のいわゆる体操着だ。籠には他に紺色のハーフパンツと白い靴下。棚の下に真っ白い運動靴が置いてある。体操着の左袖とハーフパンツの裾辺り、靴下の外側に小さい世界樹のデザインがあしらわれている。姉妹は嬉しそうにお互いで見せ合った後に山田へと見せる。


「それに着替えたらグラウンドに集合で〜す。あ、着替えとか大丈夫だよな?」


「あ、はい大丈夫です」「です」


 それを確認すると山田はゆっくり扉を閉める。姉の琥珀は妹の碧を手伝い着替えを済ませ、着替えた姉妹がゆっくりと扉から出てくる。


「お、似合ってるって言っても良いのかわからないけど、運動しやすそうな良い感じだね〜赤白帽も付ければよかったか」


「あ、ありがとうございます」「ます」


 何に納得しているのか腕を組みうんうんと頭を上下に振る山田。


「じゃあ取り敢えず軽く動いてみようか、でも、いきなり動くと怪我をするから準備体操をしてからランニングな。若いからってそういうのを疎かにするとひどい怪我をしちゃうからな」


 そう言うと手足をブラブラさせる山田。


「はい、おんなじ様にやってくださ〜い。いーち、にー、さーん、しー、ごー、ろーく、しーち、はーち、きゅー、じゅ〜」


 と力の抜ける様な掛け声で、屈伸をしアキレス腱を伸ばし腕を伸ばしと、これであってるのかなと思いながらも雰囲気で続ける山田。山田に向かい合いそれを真似する姉妹。それを見つめる金太郎達。


「はい、オッケ〜で〜す。それじゃあランニング始めま〜す」


 広場の外周へゆっくりと走り出す山田。足元からピッピッピッっと音が響く。それについて行く琥珀と碧と金太郎。ヤマブキ達は元の位置でそれを見守っている。

 金太郎は何が始まるのかと尻尾をふり、山田に並走したかと思えば先に走って行き、止まっては振り返り山田が追いついたらまた走って行くと言うのを繰り返している。


「いや、おっそ」


 アリーは山田の走るスピードにツッコミを入れた。山田の走る速度は体が小さい子供になっているので遅く、さらにゆっくり走っているので凄く遅かった。


「膝とかアキレス腱とかすじ的なものが怖いからな」


 身体は子供だが、おじさん特有の怪我をしやすくなっている、怪我をするのが怖い。という心理でそんな速度になっていた。


「はいオッケーでーす。後は自由にしてくださ~い」


 一周した事で飽きたのか、突然終わりを告げる山田。


「意味あんの?」


 アリーのツッコミにも腰に手を当てウォーミングアップを終えた試合前のアスリートの様な顔をしている山田。


「何集中力上げてますみたいな顔してんのよ」


「あー上がってきてる。力が中に集まってきてる」


 そんな山田はほっとけとばかりに、姉妹と金太郎は広場で元気に走り回っている





 と、そんなアホなやり取りもあったが、山田はじゃあ好きにやってみてと姉妹に指示を出し、椅子に座りアイスコーヒーを飲みながら姉妹が暴れている様子を見ている。そして冒頭の状況に移る。


「え?えええ〜何あれ、可愛い顔して2人ともめちゃくちゃ強いんだけど」


「そうね」


「あんまり驚いてないな」


 素っ気ない返事に山田はアリーの方を見ると、アリーは煎餅からポテチに変えて食べながらコーラを飲んでいた。


「驚いてるわよ。でもまあ、そうでしょうねって感じかしら」


「あんなので顔面ぶん殴られたら、俺の頭爆ぜちゃうぜ」


「ためしてみれば?」


「断る」


「あんたの眷属になったおかげで、無意識に最適な動きに修正し続けているわね、使えば使うほど効率と威力が上がっていくみたいね」


「眷属化にそんな効果があるのか」


「あなたの眷能の一つね」


「眷能?」


「そうよ眷属に及ぼす力みたいなものよ」


「ふ〜ん。少ない枚数でも効率的に最大の効果を得る原画をって、ベテランさんに言われたっけな〜」


 そんな話をしていると、琥珀と碧が遠くから体いっぱいに大きく手を振って山田の方へかけて来る。


「山田様〜どうですか?すごいです」


「すごいです」


「私達にこんな事が出来るなんて驚きです!凄いです!」


「です!」


 ぴょんぴょん飛び跳ねながら姉妹は興奮して体全体で表現する。最弱の種族から一気に強さを増した姉妹の嬉しさと驚きもひとしおだ。


「すげ〜な。めちゃくちゃ強いじゃないか」


 山田に褒められて嬉しそうな姉妹


「じゃあ好きな様にやってもらってたけど、一つ一つ確認していこうか。金太郎相手をしてやってくれ」


「あんた、自分が食らったら爆ぜるって言っておいて、金太郎に頼むのね」


「そうです」


「いや、いっそ、清々しいわね」


 が、当の金太郎は山田の指名に尻尾を振り大きく胸を張りやる気を見せる。








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