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異世界鳥獣人物戯画  作者: エンペツ
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アイキャッチa

 とあるマンションの部屋の一室、ダダダダダと規則正しい音が響く。

 玄関には靴箱に入りきらない様々種類の靴やサンダルが並び、脱ぎ散らかしたズボンやバックが道標の様に点々としている。

 シンクには使い終わった溢れんばかりの食器が綺麗になるのを今か今かと待っている。蛇口から茶碗に溜まった水面へ落ちる水滴の音がまるでそれまでの時間を刻んでいるかのようだ。

 大量の酒の空き缶や瓶が無造作に転がり、本棚には色んな漫画や小説や雑誌、薄い本が並んでいる。クローゼットには複数の何かの衣装が大事そうに掛けられ、床に乱雑に脱ぎ捨てられた下着や服が脱皮した抜け殻の様にみえる。

 椅子の上に胡座をかいた下着姿の女が慣れた手つきで一心不乱にミシンを操作している。


「出来たわ〜」


 縫いたての衣装を持ち、床の下着や服を慣れた様子で避けながら姿見の前へ行き、自分の体に合わせてみる。ベットに置かれた衣装に合わせた他のアクセサリー等も手に取る。


「良かった〜これで暑コミに間に合うわ〜」


 ホッと息を吐いた瞬間足元が光りだす。


「え?え?何?何?」


 足元に目を向けると何故か魔法陣が現れ光を強くする。と同時に女の足元が薄くなり消えていく、それが上へ上へと向かってくる。


「え?まじで?嘘、嘘、う」


 そんな言葉を残し女性の姿は掻き消えた。ぽちゃんと水滴が落ちる音が主人の居なくなった部屋に響いた。




◇◇◇



 眩しさにギュッと閉じていた目を開けると、少しひんやりとした薄暗い部屋。壁に掛かったランタンの様な物に炎とは違う光が灯り、ぼんやりと部屋を照らしている。


「え?え?何?何?」


 辺りを見回す下着姿の女。部屋の広さは十畳ほどで部屋には扉以外何も無い。足元には魔法陣の様な物とその中心に暑コミ用に作った衣装が落ちており、そこに女が立っている、魔法陣の外へ目をやると人が倒れている。


「え?え?」


 倒れている人はうつ伏せで、着ているものは物語の魔法使いが来ていそうな顔まで隠れる真っ黒のローブを腰紐で絞って着ている。


「だ、大丈夫ですか?」


 恐る恐る声を掛けて倒れている人に近づく女。ちょんちょんと肩を叩くも全く反応がない、強く肩を揺すってみても全く反応が無い。意を決して仰向けに起こしてみると、目を見開き口を大きく開け苦しみの表情を浮かべた老人の顔が目に飛び込んできた。


「きゃああ」


 手を離し飛び退く女。床に落とされた老人の顔が女の方を恨めしそうに見ている。


「し、し、し、しんでる?」


 魔法陣に落ちている暑コミ用の衣装をひったくる様に持ち、部屋に一つしかない扉から飛び出す様に出て行く。扉を閉め扉を背に、荒い呼吸を何度もする女。


「キュキュ救急車、け、け、警察。す、スマホ、はない、落ち着いて、落ち着くのよ」


 落ち着く為に右手を胸元に持って来ると手に持った衣装が目に入る。自分がまだ下着姿だった事に気がつき、流石に下着のままじゃとその衣装を着る女。その衣装はアニメ「私の主人は3歳半」の暗殺メイドのメイド長の衣装。すると体から光が、余り眩しい光では無かったが女は驚き目を閉じる。


「な、何?次から次へと何なのよ」


 自分に何が起こったか、部屋を見回し鏡の様なものが無いか探す。部屋はかなり広く部屋の中央にある机の上には何の実験に使うのかわからない道具が散乱している。女のいる扉から見て右の角に豪華な机と椅子、その上には本や文字の様な物が書かれた紙。その横の壁一面の棚には本がびっしりと隙間なく並び、部屋の角角には木箱やでかい骸骨や骨、何に使うか分からない物が置かれている。壁には何本かの魔法使いが使うような杖が飾られている。残念ながら部屋には鏡はないが女の正面の壁に窓がある。女は近づき夜の帳が落ちた窓に映る自分の姿に驚愕する。その顔が姿がまさにそのキャラクターがそのもの、いや現実になったらこうなるだろうという姿形だった。


「え?え?どういう事?いえ落ち着くのよカナ、これはもしかしたら夢かもしれないから、衣装作りに疲れてそのまま寝ちゃったのかもしれないわ、そうよ頬でもつねってみれば良いのよ、きっと痛くないわ」


 自分をカナと呼ぶ女はそう言うと思い切りよく頬をつねる


「いったーい・・・って事は夢じゃない」


 窓に目をやると窓に映ったキャラクターの顔にあまり現実感が無かった。


「脱いだら元に戻るかしら」


 そう言うとおもむろに脱ぎ出すカナ、するとまた身体が光り、窓に映るのは見慣れた自分の顔だった。


「衣装を着たらそのキャラになるって事かしら?これはもしかしてラノベでよくある異世界転移的なあれって事?・・・」


 カナはまさかと思いつつもステータスオープンと念じてみる。すると頭に何か浮かんできた。



名前ー南田カナ

種族ー人

職業ーコスプレイヤー


≪スキル≫

<コスプレ><なりきり><衣装作成><魅了><ポージング><脱着>


<称号>

<アレンジャー><オリジナル><完コス><囲み><着ただけ>



「な、何よ、職業コスプレイヤーって何よ、私はしがないOLよ、そもそも職業って言えるほどそこまでやって無いわよ。まだ片手で数えられる位よ・・・・・多分スキルの<コスプレ>ってのがさっきのやつね」


 検証をしようとしていると、カナが出てきた扉とは違う、その扉から見て左側のおそらく違う部屋か廊下に続くのであろう扉からドンドンと叩く音がする。


「先生!先生大丈夫ですか?何か光の様な物が見えましたが。先生開けてください」


『え?やばい、どうしよう、そうださっきの衣装をきてメイドか何かの振りをすれば・・・・・ってあれ?何も起きない。何で?』


 何度も着ては脱ぐを繰り返すがさっきの姿にはなれない。その間にも扉を叩く音は続く


『そ、そうだ、あのお爺ちゃんのローブを着れば』


 そう思うが早いかさっきの部屋へと戻り床に転がった老人からローブをひっぺがし、老人の方を見ないように1度大きく深呼吸をし気合を入れてローブを羽織る。薬品臭さが鼻をつくが、着た瞬間体が光る。





「何だ騒がしい、おちおち実験もできんでは無いか馬鹿者」


 しかめっ面をしてそう言いつつ扉を開ける老人。あの苦悶の表情を浮かべ死んでいた老人だ。扉を開けると全身に鎧を着た男が2人立っていた。


「申し訳ございません。窓が2度ほど光ったので先生の身に何かあったのかと思いまして」


「そうかそれは心配をかけたな、少し魔法の実験をしておってな、大丈夫だからもう下がって良いぞ」


「はい、申し訳ありませんでした」


 ガチャリと扉が閉まる。足音で去っていく事がわかる。扉にもたれふーっと息を大きく吐く老人


「今の私何かえらい先生見たいね。これが多分<なりきり>スキルってやつね。あれ?別にお爺ちゃんのローブ着なくても衣装着てメイドのフリすればよかったんじゃ、駄目だこのお爺ちゃんあんまり人を寄せ付けないから、不自然だわ」


 なりきった事で対象の趣味、思考が手に取るようにわかる。カナは老人になりきった。


「あのお爺ちゃんの死体も処理しないといけないんだけど、おかげでそのやり方だけじゃなくて色々分かるわね、って処理って私何言ってんの?こんな怖い考え方も老人になりきってるからでしょうけど。はあ〜何だか一気に疲れたわ・・・・・これからどうしよう」


その日から、日本でOLをしていたコスプレイヤー南田カナは、魔術師として生きることになった。












コスプレされてる方で不快に思ったら本当申し訳ありません。スキル等に関しては適当です。今までもこれからも全て思い付きなので交差するかは分かりませんが、あと数種何かの職業を出せたらなとは思っています。しかし暗殺メイド長って何だ適当すぎだろ、しれっと変えちゃうかも知れませんね。

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